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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第二章 リムを狩る者たち
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リムを狩る者たち3

改稿済

 微かな揺れに俺は目を覚まし、一瞬で身構えた。


 地が揺れる…そんな感じではない。


 ランクルが左右に揺れていて、荒い息づかいも聞こえた。


 左右にゆっさゆっさと揺らされて、どうやらランクルを倒そうとしているようだ。


 俺は頭からフードを被せた…おっと靴だ。


 後部座席には外から見えないようガラスに黒い色をランクルが差し込んでくれていて、俺はランクルに言い放つ。


「ランクル、警告音」


 ランクルが悲鳴のように、ビィーッビィーッビィーッビィーッと叫び、その音に驚いてか、ランクルを揺らす動きが止まった。


 ガラスの色が薄くなり俺はぎょっとした。


 ランクルが人々に囲まれているのに気づいたからだ。


 五人以上はいるんじゃないのか?


「とりあえず出るしかなさそうだな。ハッチバックを開けてくれ、ランクル」


と言うと、ランクルが微かに唸る。


 このままハンドルを握れと言わんばかりだが、そういうわけにも行かないだろう。


「万が一は、頼むから、ランクル」


 もう一度軽く唸るが諦めたのか、ランクルがハッチバックをバガッ…と勢い開き、俺は外に


「よっ…こらしょ」


とゆるく声を上げてぴょん…とランクルから出た。


 意外にも上背のない子どもの俺に驚いたのが、ランクルを囲んでいた人々が二三歩後退るのを見て、ため息を付く。


「あ~…なんか、用ですかねー」


 老たけた腰の曲がった一人がランクルから降りてきた俺を見おろしてきた。


「このリムは誰の物か?」


「は?えーと何のことだ?」


 ジューゴはファナを自身を見て、それから腰の曲がった老人がランクルの中の死体の重吾に向かって声をかけたのを理解した。 


 俺ざっと見て十人くらいの人々に、


「違うと…言ったら?どーするんだよ」


と笑う。


「そのリムを渡してもらいたい。我々にはリムが必要だ」


と、杖を片手に老人が俺に手を伸ばした。


「断る…と言ったら?」


「力付くでも…!お館様のためにっ!」


 一声蜂起と言った感のある叫び声に俺は


「やれやれ…」


と右手の親指を真っ直ぐ天に向け、人差し指を老人を狙うように向けると、


「パン」


と声を出す。


 早朝の森の中に強烈な破裂音がして、驚いた鳥や獣の悲鳴が聞こえ、老人が怯えたようになにかがかすった左耳を押さえた。


「次は…ど真ん中狙っちまうから…」


 老人がファナを初めて怯えたような目で見る。


「濁りがある…凶状持ちのリム…人を殺したリムか」


 この瞳のことを言っているらしい。


「凶状持ちかどうかはさておき、こんなちっこい娘を誘拐しようとするのはどうかと思うぜ」


 目の前の俺のことだけど。


 周りの奴らは腰が抜けたようになっていて、俺は俺の手品が功を奏したのを認めた。

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