閑話 初めての服
改稿済
「大体ですね、リムが服を着ないというのは、着る必要がない訳ではなく、着せていないだけなのですわ」
ひらひらとしたフリルドレスを今日も着ているクリムトは、きりっとした顔でティータに話した。
「でも…疲れてしまうわ」
ハイムの部屋にはクリムトとティータ、そしてラビットがいた。
ハイムとファナはクリムトの椅子と寝台を作るために、木を切り出し削っている。
ハイムは器用な方らしく、クニミツを変化させては製作に励んでいて、一緒の寝台で眠れなくなるクリムトとしては、ちょっと残念だ。
「それは着ることに慣れていないからですわ。わたくしはリムでありながら人として生きて参りました。クサカ先生の実験の一部なのです」
「え?ファナ様以外にも…まだ」
クリムトは
「うふ」
と小さく口をすぼめ、
「わたくしだけではありません。わたくしとテオとシャルルもですわ。クサカ先生はリムの可能性を探られていたのです。テオはリムとして人の知識を、シャルルは人としてリムと同じ生活を、わたくしには人同様の暮らしを求められました。わたくしはリムとしての解放を制限され、ちょっと変則的な感じになりましたけど」
とふりふりドレスをひらりとさせる。
「ですから服に力を吸われるのではなく、慣れなのです。ファナ様にはモルトとしてドレスを召し、リムとしてマスターの横に立つ時は自然にリムポンチョで構いませんわ。でも人前では王様としてドレスを、そして全ったき姿は私室のみになさいませ」
ラビットがティータにそっと服を差し出した。
「クリムトがな、小さい頃に着ていた服を学びラビットおじさんが作ったんだな」
そして着るように促す。
「お側付きだから、着てみます」
「慣れたらレースをつけよう。ファナちゃんもおどろ…」
肢体を露にしてティータがふわりと着て、ん…と鼻を鳴らす。
「ティータちゃん、ラビットおじさんの服はどうだい?」
「柔らかい…わ」
ふわりとした生地はリムのコートより柔らかく、ワンピースは意外としっくりとした。
「お、ティータ、似合うじゃないか」
「ファナ様っ」
どう見てもボロボロなファナが、ティータの頭をぽんぽんと撫でる。
ファナの方が少し背が高いし、精神年齢も高いからティータは年下扱いだ。
「いいじゃん、これは。すごく可愛い」
エーラインワンピースというシンプルな服なのに、ファナは可愛いと言ってくれた。
「大丈夫。慣れるんですよ、服は。そして!最低限、パンツは人のたしなみです」
「パンツ…パンツか!ファナちゃんも履いてくれな」
ラビットがとてつもなく可愛いパンツを作り出すのに、時間はかからなかった。