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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第十三章 西のオアシス
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西のオアシス8

 長い髪はたてがみとなり翼の付け根で薄くなり、滑らかな皮膚を感じさせる双翼は赤い皮膜だ。


 全身が赤いドラゴンの相眸は、シャアのそれと同じく紫水晶だった。


「…陛下が…ドラゴン…」


 二階のテラスに伏せるドラコンが、ミクの方を振り向いて、


「そうだ。…怖いか?」


と、いつもより少しくぐもって聞こえるシャアの声を出す。


 この赤いドラゴンに助けられたのだ。


 ミクは右手を差し出すとドラコンの鼻に触れ、それからその鼻頭に額をこつんと付けた。


「陛下は…僕のバイオリンを拾って…僕を助けてくれた…ありがとうございます…ありがとうございます…」


 楽器に導かれたとはいえ、行動してくれたのはシャアである。


 感謝しても感謝しても足りない…。


「ヒュー、大胆~」


 ラーンスに冷やかされ、


「え?」


と不思議に思うがよくよく考えてみると、ミクはシャアが人の姿でいたら、鼻面に自ら接吻をしたことになるのだ。


「あっ…すみません…」


「謝ることはない。イーズ、ミクを背に乗せてやってくれないか」


 イーズが頷くとミクを背後から抱き上げ、背を低く羽を平らに下げたドラコンの背中に乗せてくれ、バイオリンケースとシャアの衣装を手渡してくれた。


「上空視察している時に、町に降りたくなったら困るだろ?」


「……そうですね…。お預かりします」


 ラーンスがくすくす笑いながら、


「まあ、陛下が素っ裸では威厳もないしな。こないだの、イーズみたいになるのは可哀想だ。ミク、空中を楽しんでこいよ」


と、どうやら経験済みだったらしい言葉を吐く。


「では、行く。ミク、私の髪にしがみつくといい」


 ふわりと身体が揺れ、


「わあ…」


と、ミク声を上げた。


 オアシスブルーラグーンの真ん中に湖があり、船が浮かんでいる。


 さらには森と果樹園があり、人々が働いているのが見てとれた。


 湖を中心に人々が暮らしているその中で、バサールがあちこちにあるらしく、昼過ぎの時間にも人が賑わっている。


「陛下、降りませんか?」 


「わかった」


 そのまま地上に降り立ち、人気のない森でミクがシャアに着替えを渡すと、シャアがミクに背を向けて着替え始めた。


 風がシャアの後ろ姿を洗い、引き締まった臀部や括れた腰回りを露にし、ミクは真っ赤になる。


 ダメだ…考えちゃ…ダメだ…。


 先程までドラゴンになっていたとは思えないシャアが、ぽつんと呟いた。


「腹が減ったな…」


「え?」


「バサールに行こう」

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