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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第十三章 西のオアシス
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西のオアシス7

「どうしたのだ、ミク」


 思わず声を上げてしまったミクは、シャアの呼び掛けに、


「僕を探してくれた赤いドラゴンに…お礼を言いたくて。騎竜舎みたいなところにいるのかな…」  


と、サラダと鶏…みたいな肉のクレープを、食べながら言う。


 シャアが目を丸くしイーズがワインをふき出して、ラーンスが


「きったねえな、イーズ」


とイーズの横から飛び避けた。


「わ…悪い」


 イーズが平謝りしながら、ちらりとミクを見てくる。


「僕、なにか変なこと言った?」


 シャアの紫水晶の瞳が微笑むように緩み、


「本当に…辺境人なのだな、ミクは」


とふわり…とミクのグレーの髪を撫でてきた。。


 大きな手のひら…いつもこの手に抱かれて寝ているミクは、真っ赤になってしまう。


 淫靡な意味ではなく抱き枕扱いで、シャアに横抱きに抱っこされて毎日眠っているとは、口が裂けてもラーンスには話せない。


 それ以上は何もないのだが、厚い胸板や太い腕に抱かれていつのまにか熟睡しているの自分の図々しさに恥ずかしく、一度は断ったのだが、


「それは安心の証だ」


とシャアは寝台を降りたミクを片手で引き上げ、


「わあ…っ!陛下」


「私もミクの体温に安心するのだから」


と抱き込まれた。


「陛下…が、ですか?」


「なぜかな?ミクの側は心休まるのだ」


 それが毎晩で馴れてしまった自分が…怖い。


「そうか…そうだな。では、昼からの政務はブルーラグーン視察としよう」 


 イーズがふき出した理由も分からないまま、簡単な昼食を取った後、片付けをお願いした世話役の女に


「ごちそうさまでした」


と頭を下げると、


「それが辺境の謝辞なのか」


とシャアに聞かれてミクは頷いた。


「相手の顔を見ずに頭を深々と下げる。首を落とされる恐れもあるのに…。信頼をしているのだな、ミクは」


「お礼ですから…気持ちを態度で示します」


「そうか…では、私も気持ちを示そう」


 シャアが急に立ち上がりミクに背を向けると、テラスで長衣を脱ぎ捨てた。


「わっ…陛下!」


 臀部を覆い尽くす長い緩やかなウェイブで隠されてはいたが、隆々とした手足の筋肉のが見え、それから腰巻きを外したのだ。


「え…」


 丸めた背中が大きく膨らみ、肩甲骨から肉が裂けた。


 羽根だ。


 コウモリの羽根のような赤い羽根が背中に突き出て、そこから赤の色に染まっていく。


 急速に手足が鈎爪となり尾が生え、赤い髪はたてがみとなり、ぶるり…と身体を揺らした。

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