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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第二章 リムを狩る者たち
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リムを狩る者たち2

改稿済

 黒髪の少年が風に飛ばされてしまう…。


「重吾、早く!」


 届かない…手を…手を伸ばさないと…。


 俺は白濁とした空気の中で必死に手を伸ばすが、まるで何かに阻まれるように弾かれた。


 細い顎が見える。


 きっと整った顔立ちだろうその顔…さらに必死でもがいたが、黒髪の少年には届かず、


「駄目だっ…!」


と、俺は跳ね起きた。


 ダグラムの団服を脱いで、黒いシャツだけの死体の重吾はランクルのフラットシートでダルそうに寝ていて、俺はファナの身体のまま。


 息を詰めていたことに気づくと、いつもの夢に大きなため息を付く。


 月明かりがランクルの中に入っていて、まだ、夜であることを理解した。


「畜生…また、あの夢か…」



 あれは…俺の記憶だ。

 

 警察官の重吾の。


 黒髪の少年が飛ばされて…助けようとしたんだけど…手が届かなくて…あの子は助けられたんだろうか。


 実はそのあたりの記憶が曖昧だ。


 俺は起き上がり死体の重吾の頭に両手で触れ、そして、


「これのせい…か?」


と、の生え際の傷にそっと、小さな指で触れた。


 柔らかな唇の様子が判る盛り上がる膨らんだ傷はまだ新しい。


 生きた死体であるのが理解できる…傷は治りかけているのだ。


 はじめはどのようにしたらこの死体が生きていられるかと真剣に考え、口に食べ物を突っ込んでみたりしたものの、咀嚼する気配はなくそれでもなんとか生きているから不思議で仕方がない。


「あ…服か…」


 裸で考え事をしていた俺は、掛け布団にしていたポンチョが脱げてしまって仕方なくポンチョを着て眠ることにした。



 黒髪の少年の夢を毎日見ている。


 手を伸ばすその手を掴めなくて目が覚める。


 その繰り返しだ。


 頭から離れない少年を探している…だから…生きていれば探して助けたいし、もし…死んでいればその理由を突き止めたいと思う。


 多分…それまでは、何もかもが進まない。


 俺は俺自身がファナの身体にいることも解決したいが、あの高速道路で掴まえ損ねた少年のことも気がかりでたまらない。


 しかしとりあえずは白の楽園に行き辺境人から話を聞いてから…だ。


 俺は俺自身に言い含めると、月夜に照らされた死体の横に座り込むと、死体の重吾の腕にくっついたまま眠りについた。


 今はこんな生温かいぬくもりでもありがたいと思った。

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