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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第十三章 西のオアシス
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西のオアシス3

「リム、本当に知らないのか?でも、お前、その髪…」


 いじめの対象でもあったグレイッシュの髪は、この世界では違和感がないらしい。


 ループスも青みがかった銀髪だったし、目の前のラーンスは綺麗な金髪だ。


「祖母が外国人で…」


「ガイコクジン?辺境人が?」


 バスタブが隣に並んでいるのが滑稽だったが、しかしミクには話すしかない。


「辺境と言われる世界にはたくさんの人種が…」


「人種?モフルとか…辺境にもいるのか」


「ジョバンニさんみたいじゃなくて…」


 諦めた。


 人種というミクのカテゴリーが、ラーンスにはしっくり当てはまらないらしい。


「辺境にも黒髪以外にも、別の髪色がいるんだなあ。ジューゴが探してたのは黒だしなあ…違うか…うん、違うな」


 一人心地のラーンスに声がかけられず、ミクは心地よい部屋の石の天井を仰ぎ見た。


 天井は大きなドラゴンのレリーフが施されており、美しい幾何学模様の中のドラゴンを見ていて、ふと砂漠でのことを思い出す。


「俺はさあ…リムだったんだよ」


 不意にラーンスがミクの肩をつついて、ミクの視線を寄越させるように呟いた。


「え?」


「リムってのは自然の力を操ることができるんだぜ。俺は壁をつくんのが得意でさ…」


 ラーンスが無邪気に両手を広げて前につきだし、そのままばしゃり…と手を水の中に落とす。


「毎日毎日俺らは、騎士に仕えて働いて働いて酷い仕打ちも受けて…最後はリムの刻印を剣で突かれて『人もどき』だぜ?」


 ラーンスの指差した鎖骨の間には小さな赤い点があり、まるでほくろかあざのように見てとれた。


「よくわからないんだけど…その超能力みたいな力は…もう使えないの?」


「使えねえって。今度は騎士として仕えろっつーんだから、ムカついてさあ。死んだクサカのじい様連れて川に飛び込んだのさ」


 生き返った…と言ってるのかなあ…。


 とにかくラーンスは悪い人ではないし、ミクにとっては半年ぶりに沢山おしゃべりをしてくれた人だ。


「ラーンスさん…」


「ラーンス」


 言い直している場合ではなかったが、ラーンスの目力に負けて、


「ラーンス…誰も来ないね…逃げた方が、いいんじゃないかな…」


と言い換えた。


「……そだな。歩けるか?」


「わかんないけど…」


 ミクはバスタブの縁に座り、ゆっくりと床に足を付ける。


 右足…感覚はあり、左足…大丈夫だ。


「え…?」


 そこに体重を乗せるとずし…と身体が重い。


 ミクは何とかバスタブに掴まるがラーンスが 


「ぎゃっ…」


と前のめりに倒れていた。


「ラーンス!」


「大丈夫…じゃない…」

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