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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第十三章 西のオアシス
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西のオアシス2

「それから、ドラクーン。今は砂漠のオアシスの大多数を治めていて、ウォールフはそれが気に入らない」


 隣にカードを一枚置いて、


「この二つを一触即発させれば、隙が生まれる。僕の狙い目はそこさ」


と二つのカードを重ねてナイフで突き刺してから笑う。


「砂漠地帯から奥に森があり、そこはモフルが住んでるけど…」


「ああ、海を渡る奴等な」


「そうそう。モフルは重要になる、間接的にね。さらに奥のバンピールは今回は関係させない」


 さらにカードは縦に二枚置かれ、どうやら西の種族配置が完成したようだ。


「ガゼル様が何を考えてるのかは分からないけど、役に立ってみるよ。そうしたら、チロルハートも僕に靡いてくれるだろ?」


「やめな。あんたに股を開くつもりはないね」


 かつて小さな村を混乱に陥れた『嘘つき少年と壊れた少女』は、ガゼルによって適職を与えられ、今に至る。


 ロングビスに言い寄られるのは悪い気がしない。


 遊撃隊のリーダーの一部を危うい二人が担い、幼少から見知ってはいたが関わりと関わりの無かった二人は、ガゼルならばと当たり前のように身を寄せる。


「ひどいなあ、チロルハート」


 チロルハートはロングビスを認めているから、絶対にその身体を刻むことはなく、だからこそこの風貌さえない貧相な男が、皆に認められていた。


 しかしロングビスのその能力は知られてはいない、チロルハートとガゼルを除いて。


「さて…と、僕たちはお先に行きますか。ではね、チロルハート」


 二階に上がっていくロングビスに呼応するかのように、別々のテーブルにいた三人もまた二階に上がっていく。


 ロングビス以外の三人に共通することがあった。


 チロルハートはそれを見てニヤリと笑う。


「行ってきな」






 光…


 光…


 圧倒的な光が身体を包んで眩しいくらいだ。


 ミクは手を伸ばしたそこが温かな水の中だと知り、恐怖のあまり慌てて跳ね起きて、


「げほっ…げほっ…」


と水を吐き出した。


 鼻からも喉からも水が溢れてくるのにツンと来る痛みはなく、ミクは自分がバスタブのような容器に水を湛えた中に顔まで浸けられていたのを知る。


「ここ…どこ…?」


 白い石造りの部屋はバスタブだけが置かれた小さな部屋は、四方に窓がありどこからでも光が入るようにしているのか、明るくてハレーションを起こしているみたいだ。


「よう、ミク。俺もさっきまで浸かってた」


 横にはバスタブがもうひとつあり、そのバスタブに座り込んで濡れ鼠のラーンスが、裸体の膝に頬杖をついてミクを眺めていた。


 薬湯…そういえば頭痛や気持ち悪さもないし、水を吐き出しての違和感もない。


「な…なに?」


 ラーンスがミクの下半身を覗き込んで、


「少し生えてんだな。くそ…」


と舌打ちをした。


「え?」


「下の毛!俺とお前は同じ年なのに生えてて、俺は生えてない!俺がリムだったからか?畜生」


「リムとか意味わかんないんだけど…」

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