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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第十二章 見知らぬ世界
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見知らぬ世界10

「チロルの姉さん」


 ガーランド王国の馬小屋の横の木造の二階家が、遊撃隊の宿舎になっている。


「ん~?」


 一階は飯と酒をかっくらい、二階で眠る。


 武具の手入れは自分で行うか、武器屋へ持っていき金を払い手入れをしてもらうのだ。


 チロルハートもレイピアを研ぎに出していて、手ぶらであり酒を飲んでいた。


「へっ…へへ、リムを貸してくだせえ」


 つい最近遊撃隊に入団した、野盗あがりの男が砂金の袋をチロルハートに寄越してくる。


「ああ、いいよ。シャール、行きな」


「…ひっ…」


 自分の腕に包帯を巻いていた金の巻き下のリムが、声を掛けられ恐る恐る顔を上げた。


「あたしの言うことが聞けないのかい?刻むよ!」


「ひっ…は、はい…」


 先日のジュリアス王国侵攻に失敗をした腹いせに、犯しながら肩をレイピアで小刻みに刺しながら腰を振りまくり、チロルハートは残忍な欲望を満足させたばっかりだ。


 他人に貸し出すのも悪くはない。


 チロルハートは使い捨てのおもちゃを、新団員に渡す。


「さすが、チロルハートの姉さん。おい、お前ら、行くぞ」


「おうよ。男とはいえリムを抱けるなんてよ」


「さすがチロルハートさんだ。気前がいい」


 涙を浮かべたシャールがリムコートを掴まれ、二階に三人の男たちに連れられて行くのを軽く見上げて、酒をあおった。


 どうせ、先は長くない穢れたリムだしね、あたしの役にたってもらうよ。


「ふ…ん…」


 リムごときに慈悲の心など持つきもないし、神など知らないが、ガーランド王国のモルニティ教なるものが出来つつあり、入信しないとリムが得られないと聞き、早々と砂金を寄進したばかりだ。


 金…金…全く…


「…面倒な世の中だよ」


と口に出してさらに苛つく。


 こんなことを考えたあの双子王子も、刻んでやりたいくらいだね。


「荒れているな、チロル」


 飲んでいるチロルハートの近くに来られる人間は、遊撃隊では限りがある。


 チロルハートを怒らせ、苛つかせ、ムカつかせるとレイピアで手痛く刺されるからだ。


「あら、ガゼル様、お久しぶりで…」


「あまり、リムを苛めるな」


 ふふっ…とチロルハートは、真っ赤なルージュを塗った唇を歪めた。


「使い捨ての家畜以下の物にお優しい。あたしはあたしのやりかたで」


 シャールはマグルの後に与えられたリムだが、マグルより意見をしてくるリムだ。


 腹が立つ。


 お綺麗な顔を滅茶苦茶に刺しまくり、あばたな顔にしてやるのもいい。


「まあ、いい。西に人を向かわせたい。誰かいるか?」


「何をするんです?」


「辺境伽が奴隷売人に売られた。取り返すのが目的だが、多少傷つけても構わん」


 酒場の隅で飲んでいたチロルハートは、ふん…と鼻を鳴らす。


「殺すんじゃなく、奪還ですね。あたしよりうまいやつがいます。ロングビス!」


 ロングビスは酒場の隅で、カードを無心に並べながら酒を飲んでいる背の高い痩せ型の若い男だが、能面のように表情が乏しく、チロルハートの呼び掛けにも、


「ちょっと、待って」


とカードを並べ終わるまで動かないようだ。


 

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