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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第二章 リムを狩る者たち
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リムを狩る者たち1

改稿済

 さよならは別れの始まりではなく、再び会うまでの遠い約束な筈だが、若い者たちには耐えがたいものかもしれない…が、俺はは正直うんざりしていた。


 楽園騎士団門番の若者然りだ。


「ランクルさん、もう行ってしまわれるんですか!」


「また、必ず来てくださいね!」


「ランクルさん、行っちゃ嫌です!」


 門番の若者たちプラス集まっていた若者たちが、泣く泣く別れに苦しんむ叫びエールを繰り返すのを見て、


「おい、えらい人気だな。乗せちゃうサービスまでしたのかよ」


と俺がランクルを小突くと、ランクルはまんざらでもない様子で、体を揺らす。


 若い男は、車好き。


 小さい頃からトミカ最高…てな。


 おれも結構買ってもらっていたなあ。


 あ、プラレール組は置いといてだ。


「南へ二日、ちょい旅だ」


 ランクルは不機嫌そうにしていて、ドライビングスイッチを押してもうんともすんともだ。


 車の腹が減った…ならガソリンだが、生きた鉄という代物になったランクルは何を与えればいいのか俺は首をひねった。


「生きた鉄ってのは、吸血性らしいな。文献で読んだことがある」


 ラビットがエプロンをつけたまま捌く前の兎を持って兎の血の付いた手でランクルに軽く触れた。


「誰の血でもいいのか?」


「さあ…」


 ランクルはやっぱり不機嫌そうに擦るエンジン音しか鳴らさなくて、俺がこのファナの身体を傷つけるのをためらっていると、ラビットが死体の重吾の指を軽く包丁で切り傷をつける。


「ぎゃっ…なにを…」


 俺は真っ青になったが、つたっ…と落ちた血液の粒にランクルがゆっくりと満足そうにエンジンを鳴らしはじめたんだ。


「この死体の血がいいらしいな。この鉄の四つ輪は持ち主に反応しているようだな」


 つまり…ランクルと死体の重吾も切り離せないというわけだ。


「めんどくせえなあ」


「ランクルさんに踏まれたい…」


「ランクルさんに噛まれたい…」


「いいなあ……」


 口々に言い始める男たちの反応に、俺は絶叫した。


「お…お前ら、絶対に間違ってる!」


 なんとまあラビットお手製のうさぎの耳付きフードコートを見て、俺を何人かで囲んでにこにこと笑った。


「仮のポンチョを貰ったんだね。よい主をえられるといいね」


 なんて優しく声かけする奴から、完全に無視の奴まで。


 リムはヒトに使役される存在である…のは分かったが、人種差別過ぎやしないかい。


「まずは、白の楽園に連れていって、それからだな」


と、どうにもならない状態で夕方になってしまった空を仰ぎ見る。


「ところで…大隊長は…誰なんだ?」


 俺の言葉かけに集団が笑いラビットがにやにやしていたが、誰も教えてくれないから俺はそのままランクルに乗り込んだ。






 楽園騎士団本部のある場所はミッテを中心に、馬車で四日のところに白の楽園を含む南、対向には距離と場所が等しい黒の楽園を含む北がある。


 東、西と地域があり、楽園管理者の貴族が治める領地がある…らしい…が、地図を見たって文字が分からない俺にはさっぱりだ。


 馬車とすれ違える一本道は、活気ある町を抜けると、農地になる。


 ランクルに窓を開けてもらい、リムコートから金髪をなびかせて外を見ている俺を、畑を耕しながら見上げている者もいた。


 森になり暗闇が差し込んで来て、ランクルのヘッドライトが点灯しはじめた頃、俺はランクルを停めて、後部座席に置いた、ビスケットとミルクを出して食べ始め、子どもの身体が小さな音を立てて、ビスケットを噛み締めている。


 リムの教義は、自然と一体で、あれだ、日頃から服を着ていると、疲労し疲弊して、衰弱死してしまうのだと、やたらリムに詳しいラーンスが教えて…いや、別れるまでみっちりと教え込んできた。


 生きた死体をラーンスにかじらせなかったからか、スパルタな口授口頭の矢嵐、だから少しは知っているのであるが、外見がファナでも中身は日本男子だ。


 残念ながら真っ裸で世界中を旅できるほどの芸人でもないし、どちらかというと恥ずかしがり屋さんだ。


 普通…全裸闊歩は恥ずかしさがあるものだ、パンツは人の証しというし…と、ジューゴはひとり心地思う。


「寝るか…。ランクル、シートを倒してくれ」


 ほう…とため息を吐いて白のフードコートを脱ぎ、小さな肋骨が浮き出る胸に布団代わりにかけて王向けになる。


 なんだか切なくなるのは、誰の感情だろうか…。


 このリムは幸せだったのか。


 あんなところで首をねじらせる必要性があったのでだろうか。


 そもそもリムとはなんなのか…。


 小さい身体はすぐに熟睡にはいってしまった。

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