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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第十二章 見知らぬ世界
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見知らぬ世界2

「あっれー?落ち着いてんな、辺境人って、こうなの?」


 辺境…多分日本のことを言うようだと、赤い羊紙に書かれていた注釈を思い出す。


「ど…動揺しすぎて…」


 瞳はビー玉みたいな綺麗なブルーで、その目で見られるのが少し怖い。


 腰には剣もあり、振り回されてしまえば傷もつくが、それよりもこの侵入者が自分の牢にいて、それが見つかる方が恐ろしかった。


「でもさあ、お前、辺境人らしくないよな。あ、でも、ここ辺境牢だし。ジューゴったら、黒髪黒目でさあ。お前は髪色、灰色だもん…。瞳もブラウン…むぐ!」  


 こんな狭い牢で声を垂れ流す金髪の西洋人形の、自分と同じくらいの年齢だと思われる少年の口を両手で塞ぐ。


「しーっ!ほんと、君は誰?」


「…わーったよ…お前は?」


 牢の隅に小さくなり、能天気な侵入者にも無理矢理座らせ、


「ミク」


と呟き、もはやミクウと言うことすら諦めていた。


「ミクか…俺はラーンス。なあ、ガゼルを知らないか?」


「ガゼル?僕はループスさんしか…」


「ループスかあ…俺はガゼルを殺しに来たんだよ…ったく…」


 ラーンスと名乗る少年はふーっと深くため息をついて、


「レンの姉さんは、ひどい目に合うし…俺は…なんも報いることは出来ないからさあ…」


と頭を抱える。


 ラーンスは綺麗な顔に薄いそばかすが浮いて、半泣きの表情をしていた。


 勝手に入ってきたラーンスは勝手に泣いて、勝手に騒いで、こっちの命を脅かそうとしているのに…。


「俺さあ…リムから…あれ…」


 ふわっ…と、ミクも意識が揺らぐ。


「う…なに?」


 煙のような臭いがして気持ちの悪さを感じて、ミクは膝をついた。


 なにか…変だと低い位置に顔を寄せると、ラーンスも同じように伏して薄目を開ける。


 思わず赤の羊用紙の手書きの本を布越し抱き寄せて、なんとか伏した。


 荒々しい足音がして、複数の声がする。


「今回の奴隷は…二人か。運べ」


「内々にですからの…内々に…本当に…」


 老爺はどうやら砂金を握り、嬉しそうに何度もそれを繰り返していた。


「わかっている。上には病死したとでも言っておけ。こちらも人が足りないからな」


 上…。


 ミクはループスの横顔を思い起こしながら、意識を失う。


「死にたくない…」


 ミクは思わず呟いた。  




 規則的に揺れる振動の中で、ミクは目を覚まし広い青い空を見上げる。


「起きたか」


 揺れている中でラーンスが同じように転がり、そばかすの散る鼻を鳴らした。


「ラーンス…」


「煙毒茸の煙にやられた。まだ動けないだろ」


 裸馬車の荷台に転がされているようで、ミクは荷台の隙間から外国の目に見える範囲の全貌を見つめる。


「ヨーロッパ…?」


「は?ガーランド王国だってば」


 ガーランド王国なんて世界地図にはなかった。


 ヨーロッパの小さな国なのか?


 背後には日本の有名なテーマパークの白亜のような美しい城が見え、針のような杉木が映える深緑とのコントラストが眩しいほどだ。 

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