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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第十一章 流血のクリムト
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流血のクリムト6

改稿済

 クリムト女領主含む木の球体をエバグリーンが保護したのを見て、ガゼルがチロルハートを抱き起こした瞬間を狙い俺は、トンファを打ち込む。


 それをあっさりとかわされ足蹴りを食らわせるが、それすら身をよじって避けられた。


「ん?何か違うな。あんま本気じゃない」


「そうか?」


 気絶したチロルハートを肩に抱えたままのガゼルが、女領主を逃したのすら違和感を感じる。


「王様?」


 おかしい…。


 ガゼルは基本戦闘には加わらない。


 何か目的があり、動いているとしか思えないのだ。


「逃げ足のガゼル…何を考えてる」


 俺の肩にいる尻に小さな声で、


「屋敷の全体を見てくれないか?何か変だ」


と告げる。


「我々の役目は、徹底的なリム狩りだ。その目的はある程度達成された」


「リム狩りして、集めてどうすんだ?」


 鉄はうで開いた穴とは違うところから、空気が漏れている気がする。


「さあ…。主の命令だ」


「主って、誰だ?」


 ガゼルが反対の壁ににじり下がり、ハイムが前にチャンスとばかりに前に飛び出た。


「ばっ…か、ハイム!」 


『ファナ様、上!リムがいるわ!』


 尻からティータが叫ぶ。

 

「ハイム!」


 ティータと俺が同時に叫んだ時には、もう既に遅かった。


「警官官殿!っわっ…」


 赤い髪の毛の自衛官が走り込む寸前、木と石で組んである天井がガガガっ…と激しい音を立てて崩落し、梁に掴まる黒のリムを見つける。


 瓦礫と化した屋敷の壁に張り付いていたガゼルが、もうもうとした土煙の中でジューゴたちとは反対の瓦礫の隙間から逃げ去る。


「ま、待て!」


「追うな!おい、ハイム!」


 俺は赤毛が追いそうになるのを短い言葉で制止し、まだ残る遊撃騎士の様子を静観していた。


 村を焼き付くした男たちがまるでそれを合図にしていたかのように集まり、走り行くガゼルに馬を渡すと走り出していく。


「行ったか…。おい、ハイム!返事しろ!」


 瓦礫の中央にいたはずのハイムの、


「おう…さま…」


と小さい声の咳き込みが聞こえた。


『馬鹿ハイム!』


「ハイム!」


 瓦礫をどけると、瞬時だったが複数の尻鉤爪で割れた床板を持ち上げハイムを覆い、ハイムを守るため空間を体で維持しているのを理解する。


「ったく…馬鹿ハイムだな。自衛官殿、瓦礫撤去手伝い願う」


 ハイムの上には尻だけでは防ぎが切れなかった大きな石の瓦礫があるからそれを退けなきゃなんだが…そこに現れたのは中肉中背の壮年の男だった。


「どちら様で…?」


 俺が風を起こして瓦礫をどかしていると、


「加藤だ。男手のがよかろう」


と、笑った。

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