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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第十一章 流血のクリムト
116/226

流血のクリムト5

改稿済

「ファナ様!」


 ティータが短く俺を呼ぶ。


「よし!」


 ティータの準備が出来るのを待っていた俺は、トンファをガゼルの懐に突き立てた。


「伸びろ、トンファ!」


 ガゼルが避ける前にトンファが一気に伸びてガゼルを壁に突き飛ばし、女領主から手が離れた瞬間、俺は両手を開き血飛沫が飛び散る床に手をつく。


「包めっ!」 


 床板が剥がれて一気に女領主の倒れ込んだ先の人々を六人ばかり巻き込み、柔らかい布のようにくるりくるりと丸く繋がり一気に球体を作り始めた。


「き…貴様っ…!」


 そのまま床板がまるでボールのように包み込んで、ガゼルから完全に女領主を切り離す。


 ここから先はこの板ボールを外に排出しなくてはならないが…。


「てっつはう~!」


 唐突に間延びがした女の声がして、鉄ボールの転がっていった先の石壁がぶっ飛び、球体が外に転がっていく。


「うふふ、大成功!」


 ぷるんとした胸が飛び出して、見知らぬ女の子達が飛び出した。


「はあっ?なんなんだ…」


 髪の毛が緑だとか、なんでメイド服なのか、鉄はうって…歴史の元寇で習った武具のひとつだっけな…とか、俺の頭の中にざまざまな物が試行錯誤したが、彼女の動きには無駄がなく、一瞬で周囲を見る癖や、次の出方を探る仕草は、組織的に訓練された人間であることを示している。


 ここでそれをやりのけるのは、アーバー グランドで俺の他には、エバグリーンのチームしかない。


 つまり、あの巨乳メイド服女は、元自衛官だ。


 そして、何より外に転がり出た球体を外で保護する必要がある。


「おい、転がり過ぎだろっ!」


 俺は床から手を離し、爆風に転がる球体を追いかけようとした。


「あ、え…と、ファナち!あの『たまたま』は?」


 俺は


「自衛官殿!木の玉の中には人がいる!確保を!」


と叫ぶと、


「え!あ、人が~?」


と振り向き走り出す。


「大きい…」


 ハイムの呟きは男子として最もで、辺境人としては違和感のある緑ツインテールよりも、マッターホルンみたいな胸に目が行ってしまうらしい。


 俺もちらりと見るが、重くないのか?あれ、くらいの認識だから、もはや男としては残念な具合だ。


「保護対象だ!速やかに確保!」


「あ、はい~。空ちゃん、よろしく!」


 あとから馬ごと部屋に乗り込んできた青い髪の毛の左右の横髪だけひと房ずつ肩まで長い痩せ形の少女のような自衛官が、


「がってん…。はいよー、シルバー」


と、馬の後ろ足で球体を大きく蹴り出すのを目撃する。


「うっそお!」


 俺が叫んだのは当たり前だ。


 あの木製球体には人が入っているからだが、その球体は停車した幌馬車の前で止まる…と言うかぶつかって止まった。


「隊長、要人確保をお願いします。中では警官殿がまだ戦闘中です」


 馬上で敬礼をする空にエバグリーンと陸が頷いて、馬車から降りて球体を囲む。

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