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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第十一章 流血のクリムト
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流血のクリムト1

改稿済

 クリムト領地の端に着陸した俺の目に飛び込んできたのは、燃え盛る家の炎の中から飛び出してきた領民だった。


「おいっ…」


 俺は男の近くにランクルを停車すると、外に出て男に駆け寄る。


「ひっ……」


 そのまま倒れた男が気管を焼かれて声も出せずにいるのを見て、俺はランクルの中から手を天に出した。


「空から雨!」


 ランクルの窓から箱乗りの形で腰高に出た俺は、両手を合わせて呟くと夕立のような雷鳴と共に、ざあっと一帯に雨を降らせる。


 男に布を掛けて火の勢いを弱めると雨による強制鎮火をすると、男がガタガタと痙攣を起こし始めた。


「今…タオエルを…」


 ハイムに持ってこさせようとすると煤だらけの腕に掴まれ、俺は男を見下ろす。


 顔や全身が焼けただれティータが目を伏してしまうほどの姿が、必死で言葉を繰り出そうとしていた。


「話しを聞こう…何が言いたい?」


 俺は男の口許に耳を近付けると、男がひりつく喉から絞り出すように、


「クリム…ト…様の…屋敷…に…」


告げると事切れる。


 俺は男の切り落とされた片足から真っ黒になった血溜まりを見て両手を合わせて黙祷し、ティータも慌てて手を合わせる。


「悪いな、埋めてはやれないみたいだ」


 俺がティータと手を繋いで帰った時には雨はやみ、ランクルの所に戻るとハイムがタオエルを寄越してくれた。


 なだらかな緑の多いクリムト領地は既にあちこちで火の手が上がり、馬に乗るガーランド王国遊撃軍がまるでニケのように羽を生やした女神を模した旗をはためかせて闊歩している。


「王国、どうする?火を消すのか?」


 俺はティータをランクルの座席に座らせると、タオエルを首に掛けて運転席に入った。


「もう、何をやっても無意味だろうなあ。正直、大概の人間はもういないじゃんか」


 多分大規模なリム狩りは終わっていて、死んだ男が言うクリムト領地に領民が集まって攻防しているのだろう。


 火の手が上がるのはガーランド王国遊撃軍の遊びなのか略奪ついでなのか…俺はランクルで引き殺したい気分満載だったが、元警察官であり比較的優等生リーダーの『はみだせなさ感』から、建設的な領域に考えをシフトした。  


 ここから一番大きな屋敷の前までランクルを走らせて、クリムト屋敷の中にいる領民を一人でも多く守りつつ、エバグリーンとグランツと合流した方がいい。


「ティータ、尻を全部出してくれ。同期して通信を任せる」


「わかったわ」


「尻と完全にシンクロして情報を流してくれ。その間はランクルで待機。ランクルが守ってくれる」


「はい、ファナ様」


「え、王様、俺は?」


 ティータを守って前線にいるつもりだったハイムが、自分の居場所について手を上げる。


 やっぱりすこし、考えが足らないらしい。


「あー、お前は俺たちと行動な」


 俺はランクルを一気に走らせた。

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