大乱闘デルタフォース9
改稿済
『白の楽園に進軍って…どうします?海さん。隊長からは指示はありません。このまま諜報活動しますか?』
『うう~ん、どうしよ~』
『海さん…困り顔…かわゆす』
こんな声の繰り返しである。
元々シャルルとテオを襲った無頼漢に張り付けてガーランド王国に行かせた尻だったが、どうやら城の中に紛れ込んだらしく蝙蝠よろしく城の片隅にいるようであった。
「…どうして海様の声が聞こえるの…?」
ティータが言うと、
「ティータ、知っているのか?」
ファナの問いに頷いて、
「白の楽園にいた方々よ」
と告げた。
そうこうしているうちに、ティータよりも早く起きて外の若い騎士を連れ出していたらしいハイムが、兎と山鳥を仕留めて来て厨房の外出口から入って来て、厨房に集まる様子に驚いて獲物を落とす。
「な、な、なんでテオがいるんだ?しかもティは何て格好で…」
「あー、悪い。話は後だわ、混乱する。で、ティータ、海様は誰なんだ?辺境人か?」
ファナがティータに尋ねると、
「え…ええ、海様たちはエバグリーン様の下で、諜報のお仕事をしているわ…」
とティータが懸命に話すところに、
「だーかーらー、あっちの言葉が聞こえるだけじゃだめだろ!王が伴侶と離れているなんて、あり得ない。俺はシャルルの声が聞きたくてきたんだって!」
と緊張感ぶち壊しにも布団巻きのテオが叫ぶ。
「あー、わかった、わかった。確かに片手落ちだな」
布団巻きから顔だけ出ているテオが王様らしく暴君的自己意見を吐き、ファナがうむむ…と唸った。
尻…もはや、発音にこだわるのをやめた…のベースが携帯電話だとすると通話機能があるはずで、ちらりとティータを見下ろしてくる。
ノーパソを手にしてティータは頷き、
「ファナ様、私、やってみる」
と早朝の厨房の床に座った。
「ティータ、頑張れ」
ファナがティータの頭を撫でてくれる。
ファナの能力に憧れファナに思慕したが、そんな気持ち以上にマスターとしてのファナの中にいる重吾を従う甘美は、こうやって懇願されたような表情を得てそれを叶えようとするティータを甘く支配していた。
「そうね、早く終わって、朝御飯にしましょう」
ノーパソのリムの花弁刻印にティータが小さな唇をつけると、ノーパソを再起動させる。
キーボードを打ちそのままノーパソを見ると記号の羅列が起こり、ノーパソが発光した。
「もう少し…」
「すごい…」
四角い箱はノーパソという電脳武器だとは聞いていたが理解はできていないシャルルは、そこの薄い板に文字が浮かび上がり消えてはそれを繰り返し、それを高速で打ち込むティータのまるで神がかった姿に茫然とする。
「そうだろう、うちの子はすごいんだ」
ファナが自慢気にシャルルに話すところに、
「ファナ様、ノーパソを介して話せます。個々の自立通信はできる。だけど、尻同士は無理。どうぞ」
と、ティータが告げた。
「もしもし、聞こえますか?」
小さな声でファナが囁く。
『なに?上の木から…声?』
「もしもし、人が少ないとこですか…って視界がないのは辛いな」
「それはダイブしないと出来ない」
「すんまへん。ともかく…」
『あ、え?誰ですか?』
『う、わ~。太った蝙蝠~』
『海さんの乳より、小さい…』
なんなんだ、このテンションは…。
俺はこめかみを押さえて、ノーパソに喋りかけた。