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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第十章 大乱闘デルタフォース
108/226

大乱闘デルタフォース8

改稿済

 寝起きの長い金髪ボサボサ頭で全裸のグランディア王は、


「専守防衛には、絶対的ルールが必要だ」


と、あくびをしながら呟いた。


「ファナ様起こした?」


 ティータがファナにすり寄り、ファナがが当たり前のように頭をコツンと当てる。


「うん、起こした。反対側の脇が涼しくなったから。夜遅い朝早いなんて…体に悪い…ん?んん?なんつー格好してんだ、シャルル」


「厨房にはエプロンと…」


「真っ裸にエプロンしなくていいだろうよ…リムじゃないんだし…」


 ファナが再び大あくびをしながら、ボサボサの頭髪に手を入れた。


「え、あ、そうなのか?……知らなかった…」


「おいおい、裸エプロンなんて、お前の趣味かあ?」


「そ、そんなわけないだろう!無礼だぞっ、ファナ!」


 むきになるシャルルにやにやしてファナが


「襲われちまうぞ、こんな時にテオが来た…ら…ら?」


と外に目を向けるのを、シャルルも窓側を見て驚く。


 黒い疾風のごとく馬がら飛び降りたテオが、扉を派手に開けて入ってくるなり、シャルルの姿に厨房に乗り込んできた。


「なんだが眠りが浅くて掛馬をしていたら、ここまで来て…シャルル…すごく素敵だ…。ハイムから裸エプロンの話は聞いていたが…なに、シャルル、俺に見せたくてなの?」


「や…あの…テオ…?」


 脇目も降らずにじりよるテオからじりじりと逃げ出す算段で厨房を抜け出て、居間に入るがテオの腕に捕まりあっさりと根負けする。


「こ、ここは嫌だ…客室に…」


 考えてみれば裸体にエプロンなんて、油は跳ねるし実用的ではないし、実際兎肉を炒めた時には脂が跳ねて腕に当たり痛い思いをした。


 基本、リムは厨房には立たないから見かねたラビットの策であり、服を厭わないシャルルが裸でエプロンをつけることは、まるでリムの物真似か羞恥行為であることを今更ながら思い知る。


「うん、シャルル!」


 嬉しそうなテオには悪いが、ここはグランディア王国だ。  


 腰がたたなくなるような醜態をさらすわけにはいから、シャルルは心を鬼にして、乗り切ることを決意した。


 寝台に座りリムローブを脱ぎ捨てシャルルに手を伸ばしたテオに、ゆっくりと歩み寄ったシャルルはそのままテオの頭を撫でると寝台に倒して掛布を剥ぐ。


「シャルル…好きだ…」


 シャルルのエプロンの肩紐が弛く胸元がちら…と見えそうになるほど身体を寄せて、掛布を手にすると一気にテオに巻き付けた。


「え、え?うわっ…!」


「俺も愛している。が、他国では断固断る!」


「あ、なんだよ!離せよ、シャルル」


 ふんっ…と鼻息荒くファナに習った寝屋での拘束術『布団巻き』を完成させたシャルルは、愛の無頼者を転がしたまま、マナーに反するエプロンの着方に反省しつつきっちりと服を着ると、


「あ…あああ~」


というテオの低い悲鳴を聞きながら、片手で布団巻きを担ぎ上げて、シチューのいい匂いのする厨房に入る。


「なーにやっとるんだな、お前たちは…」


 ラビットが黒いエプロン姿で入ってきて、それがちゃんと服の上からであるのを確認したシャルルは、赤面しながらラビットに挨拶をした。


「おはようございます、師匠」


 ファナが礼節正しいシャルルの肩に乗っかる簑虫のようなテオににやにやして、


「お、辺境秘技をマスターしたか!」


と笑う。


「ただ、俺はシャルルの声が聞きたくて、尻に呼び掛けても、何も反応しなくて…」


 担がれたテオが必死でもがきながら言った時、ノーパソが別の音を拾った。

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