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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第十章 大乱闘デルタフォース
104/226

大乱闘デルタフォース4

改稿済

(くう)ちゃん、ショタ確保~!」


 燃える幌馬車の中で震えていた赤い癖毛のリムを抱き上げると、海が青銀の髪を横髪だけ長く伸ばしたまだ少女然とした未熟な容姿肢体の空にリムを投げた。


 そのまま首の後ろに手刀をあてがい、一瞬で気を失わせ空は抱き抱えた。


「ショタ、ゲットだぜ…。隊長、お久しぶりです…」


 抑揚のない話し方は相変わらずで、エバグリーンは脱力感すら覚えたが、興が乗ると見境ない狂戦士である陸を止めようと岩場から立ち上がった瞬間、エバグリーンはその刃を目の当たりにする。


「はあっ…!」


 二本の短めの剣を鉄はうで傷ついた小太りに突き立てると、そのまま血をぬぐいもせず二人目の痩せた男が逃げる背後から首へ突き抜けるほど刃を打ち込んだ。


「がはっ…ひっ…!」


 気道が切れひゅう…と雑音混じりの悲鳴が聞こえたがそのまま事切れ、最後の獲物ユーグに向けられる刃は鮮血の赤だ。


「ばっ…馬鹿な…女一人で…おい、リムの餓鬼なんとかしろー!」


「は?自分のリムの名前も知らないってわけ?」


 陸が低い声でせせら笑うと、矢で傷ついた右手を振り回すユーグを片手でいなす。


「ぎゃ…てめえ、俺のリムだろーが!」


 そのリムの餓鬼とやらは空に捕まり、気を失っているから叫んでも無意味だ。


「隊長、始末しますか?」


 陸の言葉に頷くエバグリーンに、陸がぺろりと舌なめずりをする。


「てめえ、リムのくせにっ…マスターをっ…ひっ…!はひぎぃぃぃっ!」


「黙れ、悪党」


 両剣の切っ先を叫んだユーグの口に押し込み、左右に引き裂いて鮮血の翼をはためかせて、ユーグの始末は終わった。


 横たわるユーグがまだひくりひくりと横臥しままま痙攣し、その動きを止めるため陸が足で胸を蹴りつける。


「デルタフォース陸、戦闘は終了した」


 エバグリーンの深い息を吐くような声に、目がつり上がり殺気が満ちていた陸の動きが止まり、エバグリーンにまるでなにもなかったように笑いかけた。


「隊長、大丈夫でしたか?剣術は苦手とお伺いしていましたが…」


 白い自衛隊服が泥だらけになったエバグリーンは、岩から離れて地塗られた幌馬車に近寄る。


 ひどい有り様だった。


「ひどいな…」


 思わず口にでた。


「ええ、背後からとは騎士の風上にも置けませんね」


 ラクシュペール隊の三人は斬り口から背後からの刻み痕があり、不意打ちを受けて惨殺されたのだ。


 その惨殺された死体と一緒に押し込まれていたリムは、あんな卑劣な男に惹かれていたと言うのか。


 死体入り幌馬車はそのままにエバグリーンは、グランツのいる幌馬車に向かった。


 幌馬車の横には海が馬を二頭連れてきており、空が赤毛のリムを山本に渡している。


「ところで、お前たちなぜここに?」


「はいは~い、この子が教えてくれました~」


 海の胸の谷間から桃のような黒い物体が取り出され、ばさりと蝙蝠のような羽を広げたのだ。


「なっ…なんなんだ、これは!」


(しり)、です~。あ、あー、もしもし、ファナ君、間に合ったよ~」


 蝙蝠の羽の突き出た爪のようなものをツンツンと触れると、桃に大きな目が出て羽の振動で声がする。


『海さん…こっちは…戦闘中で…っおまっ!ハイムあっぶねえ…。で、クリムトに…来てもらえると助かりますっ』


 尻からファナの声が響いた。

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