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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第十章 大乱闘デルタフォース
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大乱闘デルタフォース2

改稿済

 もうひとつのラクシューペル隊が、全く見当たらないのが気になった。


 ユーグ隊はつい最近楽園騎士団に入隊した、新参の者の集まりだと、楽園騎士団大隊長のカミュから聞いている。


「ラクシューペル隊がいない。ユーグ隊、彼らはどうした!」


 板を持って車輪を噛ませていたユーグは、差して大きくはない禿げた小男で、人のよい顔でにこりと笑った。


「馬車が乗り上げてしまい、どうにもならず…。リムたちを幌から出して一緒に、少し先のクリムト領地に行かせました。すみません、手を貸してもらえませんか?」


 クリムトは楽園への最大の協力者で、先に行かせたリムたちと合流して、ジュリアス王国に向かう予定だった場所である。


「わかった、今行く…エバグリーン?」


 エバグリーンは流れてきた風に香る臭いに眉をしかめ、再び加藤の動きを止めた。


「加藤さん、血の匂いがします。グランツを頼みます」


「ああ。まあ、僕より強者がいるけどねえ」


 エバグリーンは頼りない剣の柄に手をかけ、荷台から降りて、


「私が手伝おう。幌馬車は馬と一旦外して…」


と、幌に手を掛けると生臭い臭いに顔をしかめる。


「どうしましたか?」


 ユーグが笑い顔のまま不思議そうにエバグリーンを見やるが、エバグリーンは意を決して幌をめくりあげた。


 濃厚な体液の匂いが鼻孔をつくのだが、幌馬車の中には何もない。


「え…?あ…いや、なんでもない。私が後ろを押そう。左右を誰か」


「エバグリーン、どうした?僕も行こうか」


 少し離れたところで停車しているグランツの馬車から加藤が降りようとするのを、三たび視線で制して馬車を動かすために両手を伸ばして押し始めた。


 ぬかるみにめり込んだ車輪が板を渡り、ギギギ…と音を立てて進み始める。


 大きな岩に乗り上げた車輪が地に向かい、エバグリーンが肩で荷台の縁を押し白い制服を泥まみれにしていると、ぽたり…と液体が膝に着いた。


「やはりね…」


 幌馬車の端から溢れ出すぬるりとした血液が、エバグリーンの自衛隊制服を濡らしていく。


 衝撃と音が荷馬車を岩から解放し、エバグリーンは瞬間幌馬車に腕を突っ込んだ。


 生温かなぬめり気のある物体を鷲掴みにすると、身体を捻り遠心力を利用して、それを引き出して地面に転がす。


 力ない肢体はまだ硬直してはおらず、ずる…ずるりと草原に寝そべった。


「…ラクシューペル…隊長…か。ユーグ、どういうことだ…?」


 エバグリーンは血だらけの手で剣を抜いてクリムトと距離を取り、低い声で告げる。


 ユーグは人のよい笑顔のままで剣を抜いて、隊の仲間にも指示を出しエバグリーンは三人に囲まれた。


「エバグリーン!」


 加藤が幌馬車から降り立った瞬間、


「来ては駄目!加藤さんは私と距離を取って。最悪を頼みます!」


と制する。


「貴女を血祭りにしてから、グランツもいただきます」


「いつから…裏切った?まさか…最初から…か?」


 ユーグがクスクスと笑いながら、エバグリーンに向かって来た。


 第一撃はなんとか止めて、エバグリーンは後ろに下がる。


「騎士団に入隊する前からですよ。私たちはガーランド王国遊撃隊潜入部隊です」


 ユーグが軽く手を上げると、左右から配下の二人がエバグリーンに斬りかかった。

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