高校生編 続々
「真澄ー!ほら、パスだ!」
俺がアシストをして、真澄がゴールを決める。
そうやって俺達は勝ってきた。
「ナイス、真澄。」
「そっちこそ。」
ハイタッチをして、お互いがお互いを認めてる。その関係が俺には相棒がいるみたいで嬉しかった。
「千代、今日は部活だから。」
「うん!先に帰ってるね!」
そんなサッカーが好きで、真澄と親友とはいかないでも仲良くしてる。普通の小学生だ。普通の小学生だからこそ、好きな人もいるわけで・・・十和千代。
真澄と仲良くしていると胸が苦しくなった。
嫉妬をしていた。
この時から真澄は相棒じゃなくて嫉妬の対象だった。
次の試合、真澄が活躍するだろう。きっと十和も応援に来る。それなら真澄に活躍してほしくない。俺を応援してほしい。
だから、噂の神社に行ってお願いしたんだ。
「次の試合、真澄が怪我をして出れませんように・・・。」
最初は悪戯というか本当にそうなるとか思ってなくて・・・、まさか願いが叶うなんて、何倍も酷い形であんな事になるなんて思わなかったんだ。
最初、滑った時も捻挫って先生が言ってた時は少し嬉しかった。けれど、まさかそこから走れなくなるとは思わなかった。
疲労が溜まってて走れなくなる?そんなになるまで練習してたのかよ。何で隠れてそんな事してたんだよ。俺だってお前と練習したかった・・・。
そんな風に思った。嫉妬の対象になった真澄はやっぱり俺の相棒で、友達だった。
それでショックを受けた俺は次の試合には出なかった。反省のつもりだけどそんなの意味が無いのは知ってた。
暫く経って作り笑いができる程度までは落ち着いた。けれどすぐにまた怖くなった。
願いを叶える代わりに大事な人を不幸にする。
それはそういうルールだ。
俺にとって大事な人は十和だった。
日に日に感情が無くなっていくみたいな十和を見て、俺のせいだって思った。
二人を見るのが辛くて、何であんな事願ったんだろうって後悔ばっかりした。
小学校を卒業すると、二人と顔を合わせる事が減る。そう思うと気が楽になって、少しづつ忘れていった。
中学生になって初めての冬、全部思い出した。何で今まで忘れていた?何でこんな呑気に暮らしてる?
だから冬になると俺は毎朝、神社に行って謝っている。誰にも伝わらないし、その行為に意味があったのか分からないけど毎日続けた。気付いたら時間が経ってる事が多く学校は遅刻してたがそんな事より償う事を優先した。俺が向ける俺への罰、そんな風に思っていた。
中学二年生になると、十和が不幸なら俺がなんとかしなければ。そう思うようになって十和に近付いた。それが居心地が良くて、俺のした事を忘れられる時もあったけど、それは一時的なものだった。それでも、良かった。忘れらてる安心な期間があるだけまだ保てていた。
「それなのに、千代が真澄と会ったなんて知って俺の罪悪感とか後悔とかそういうのが一気に爆発したよ・・・。」
私には何の話をしているか分からなかった。
「何、それ?おとぎ話か何か?」
そうとしか思えなかった。
「事実だ。」
真剣に話してるのは分かる、けど分からない事もある。
「感情を無くしてるみたいって・・・今までの私を見ててそう思ったの?」
そうだ、一時期元気が無かったのは確かだけど、真結と出会ってから笑うようになれた。昔に戻れた気分だった。
「突然だよ。俺からしたらお前が真澄の話をした日、突然昔みたいになった様にしか見えなかったんだよ・・・。周囲の認識が違う事は分かってる、周りの反応みたらこれが普通になってて俺がおかしいのはもう思い知らされたよ!」
二人に沈黙が訪れた。
何も言えない。
そして諦めたように直正が口を開いた。
「大体さ・・・千代が真澄の事を知らないってのが一番おかしいよ。どうなってんだよ・・・。」
「私と仁瀬君・・・何かあるの?」
「あるよ・・・ムカつくけど。」
「何が・・・あるの?」
「千代は真澄の事が好きなんだよ。」
言ってる意味が分からなかった。
「何でそんな事言うの・・・。」
「本当の事だから。」
私と仁瀬君がどんな関係だろうと今には関係ない。そう言いたいのに直正の真剣な表情が言わせてくれない。
「だから、もう、元に戻ろうぜ?」
直正は悲しそうに言った。
「好きだったよ、千代。」
何をするつもりなんだろう、なんとなく、分かってしまった。
「駄目だよ!さっきまで話してたのに何でそんな事するの?!」
「償いだよ。」
「神様、いるんだろ?十和千代の失ってるであろう記憶を全部戻してくれ。」
幸せになれない話だとこれ書いてて思いました。