中学生編
雪が降っている。そんな光景を見るだけで私は憂鬱な気分になる。
私は冬が嫌いだ。
「千代ー!勉強教えて・・・。」
友達の真結が喋りかけてきた。
「また?慣れたけどね・・・、どこが分からないの?」
「ありがとー千代ー!あのね、この辺の単元で次テスト範囲なのにチンプンカンプンでさぁ、あの禿げ教え方ほんと下手だよねぇ。」
真結が言ってるのは数学の阪座伊志也先生の事だろう。確かに教え方は下手でつまらない授業だ。それに生徒の事を全く考えてないことは分かる。
「ありがとー!いつも通りわかりやすかったよ!」
真結がお礼を言って教科書とノートをしまいに行った。
私は、普通の中学生になった。中学3年生の冬、受験生だ。
中学生になった私は少し変わった。
まず友達が変わった。小学生の頃仲良かった女子達とは会話すらなくなった。
今では特に仲のいい真結と冬になると遅刻が多くなる茂野直正君だけが周囲にいることが多い。ちなみに茂野君は小学生の頃の同級生だ。
そして成績も変わった。小学生の頃の私は決して頭のいい子供ではなかった。そんな私でも成績は学年で2位だ。
最後に一番変わったのは泣かなくなったことだ。あの時を最後に、私は涙を流すことは無かった。
「十和って印象変わったよな。」
昼休みになって、真結と話しているところに茂野君がきた。
「昔から私はこうだけど?茂野君だって女子にモテるようになったんじゃない?」
私は少し馬鹿にされた気分をそのまま煽り返した。
「まーね。」
全然煽られてる自覚が無いみたいだ。こっちが馬鹿らしくてそれ以上は何も言わなかった。
「昔の千代ってどんなだったの?」
あまり昔話をしない私達に興味を持った真結が訊いたきた。
「ん?いっつも泣いてた印象しかねーな。」
「もう覚えてない。」
余計な事言うなという意味で茂野君の足を気付かれないように踏んだ。
「いって!!!」
「どうしたの?茂野?」
「いや・・・ちょっと天罰が。」
そんなくだらない会話をして昼休みは終わった。
放課後、茂野君は引退したサッカー部に出向きいつも通り後輩をしごいて、真結は私立の受験が近いから居残って勉強していた。
私はいつも通りの帰り、いつも通りある場所へ寄り道した。病院だ。
「今日も来たよ、はんこちゃん。」