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最後の話

日が沈みかけている。

辺りに人はもういない。

私達三人はその場で突っ立ったままだ。

「久しぶりね、二人共。」

はんこちゃんが言う。

「・・・。」

私達は何も言えない。言える空気じゃなかった。

「あなた達二人、友達とこないだ楽しそうにいるのを見たわ。」

見た?遊園地の時・・・?

「私が悪いから二人が幸せになろうと自業自得だけど、そんなの許せるわけないじゃない!何で私だけ?!二年も記憶喪失で!好きな人は幸せになれそう!でも!!あんただけは許せない!!」

そう言って彼女は鞄から包丁を取り出した。

「二人の姿見るまでは耐えてたのに!耐えて耐えて!私が悪いって思って反省して・・・それでももう耐えられないの!」

彼女はそう言って、包丁を構えて走って来た。

私の思考は一つの事しか考えられなかった、避けようとか思えずただ、ただ私の人生以外にも他人の人生は続いてるんだ。そう思っていた。

「ぼーっとするなって。」

包丁が刺さる前に横からの衝撃でよろけた。

意識が定まると、目の前には脇腹に深く包丁が刺さっている真澄とそれを見て我に帰っているはんこちゃんがいた。

「ごめんなさい・・・ごめんなさい!」

はんこちゃんはそう言って逃げて行った。

「真・・・澄・・・?」

「こんな時に言うのもな、だけどさ・・・俺・・・ゅう6年間、ずっと・・・千代の事・・・。」


集中治療室前、私はずっとそこにいた。

後から来た真澄の叔母にあたる一緒に暮らしてる親戚の人が来て、私に謝って来た。

真澄の両親は父親は失踪、母親は自殺しているのだ。

数時間後、深夜になる手前頃に手術は終わった。

手術結果は真澄の叔母さんに伝えられ、それを私に教えてもらった。

「脳死、ですって・・・。」

脳死・・・?

「刺されたところが悪く、いえ、良かったのかしら・・・。ちょっとズレてたら死んでたみたいなの。それでも血液が脳にまで回ってこない状態で・・・。」

叔母さんは泣きながら私に説明してくれた。

脳死って、それじゃあもう話せないの?一緒にいられないの?


「それでもいいけど後悔しないようにね?想いを伝えたくても伝えられないなんて事にならないでね。」


真結の言葉を思い出す。

あぁ・・・そうか、私・・・真澄の事好きなんだ。

そう思った瞬間に涙が止まらなかった。

「千代ちゃんはもう帰りなさい。遅いし送って行こうか?」

自分のことで精一杯だろう叔母さんは親切に言ってくれた。けど私にはやる事があった。

「・・・大丈夫です。」

私は迷わずに神社に向かった。


嫌な思い出もいい思いでも神社に関係していると思うと少しだけ可笑しかった。

夜の神社は相変わらず不気味だった。

「真澄を、私の大事な人を・・・助けて・・・。」

私は迷いながらもそう願った。

多分これで真澄に不幸な事が起きる。けれど、どうしてもちゃんと話して、ちゃんと一緒にいて、ちゃんと想いを伝えたかった。


次の日、学校をサボって御見舞に行くと真澄は起きていた。

「・・・ごめん、千代。」

全部分かって、自分のせいだと思って謝っているみたいだ。

「ううん、私が勝手にした事だから。」

「そっか・・・。」

少し気まずい空気が流れる。

「私、真澄が好き。」

その空気を読まず、私は身勝手に想いを伝えた。

「・・・俺も。ずっと前から、昔から好きだよ・・・千代・・・。」

真澄は泣いていた。私も泣きそうになった。

私の初恋は実ったのだ。


数日後、退院した真澄と私はデートをする事になった。

前から真澄が行きたかった場所とか、私が行きたかった場所を時間が許す限り回った。

楽しかった。昔に戻れたみたいだった。

「今日は楽しかったよ。」

「私も、楽しかった。」

辺りに人はチラホラいる。車も走っている。

その走っている、車一台が真澄に向かって走って来た。

私達は察した、あぁ、そういう事か。

真澄は車に轢かれた。

周囲から聞こえる悲鳴。

私はこうなる事を覚悟していた。ずっと。


「痛っ・・・。」

真澄の声がした。

え?

「殆ど無傷だったよ・・・。」

真澄は怯えながら言った。

私も怖かった。

突然、なにか分かったかのように真澄が走り出した。

私は呆然として考えを口に出した。

「死ねない・・・の?」


真澄の状態を考え、どうするのかを考え、そこから真澄の家に向かった。

「死ねなかった。」

真澄の部屋に入ると、包丁やらロープやらで真澄の身体はボロボロになっていた。流血具合を見ても子供でもわかるぐらい死んでるレベルだった。

「私のせい・・・?そんな事までするの・・・?」

「あの神社に出来ない事なんて無いよ・・・。」

真澄はどうでもいいと言わんばかりの態度で答えた。

「あ、ごめん、真澄・・・私、助けたくて・・・。」

死ねないって。今はいいとしてもこの先独りぼっちだ・・・。

私が真澄をそんな生き地獄みたいな状況に・・・。

「ずっと独りってどうなんだろうね?それを寂しく思っても死ねないんでしょ?どのくらい死ねないのかな?ずっと?人類が絶滅しても?そんな孤独に耐えてられるかな?・・・教えてよ千代!」

私より強いイメージを持って真澄は絶望していた。

私のせいなんだ。私が責任を取らないと・・・。

「神社に、お願いして・・・真澄の大事な人って、私・・・なら、問題無いよね?」

声を震わせながら言った。

「嫌だよ・・・それは。千代が不幸になる位なら受け入れる。」

悲しそうに言った。それだと私は、どうしたらいいの?取り返しのつかない・・・真澄を永遠の不幸に・・・。

「私が・・・ずっと、真澄の側にいる・・・。」

考えて、無意識に出た言葉はそれだった。

「何があっても側にいるから・・・!」

サブタイ最後の話だけど次が最後です

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