表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/17

高校生Ⅱ編 続々

走って家に帰った私は乱れた息を整えてからお婆ちゃんの部屋に入った。

「お婆ちゃん、今大丈夫?」

「どうしたの千代。」

ゆっくり落ち着いた様子で話すお婆ちゃんに少し物怖じした。

「お婆ちゃん、あのね・・・。」

私は何て言っていいか分からず、その先に言葉が見つからなかった。

「私が千冬を生き返るように願ったの知ってるんだね。」

お婆ちゃんは言った。

「何で・・・分かったの?」

驚いたと同時に怖くなった。本当に私の知っているお婆ちゃんなのだろうか?そう疑問を抱いた。

「無駄に歳を重ねてるわけじゃないからね、それぐらい分かるよ。私の願いであんたがあんなボロボロになったんだ・・・いつバレても仕方が無いって思ってた。」

どういう事だろう。

「何で私がお婆ちゃんのせいでって・・・。」

「私の願いを叶えたら、大事な人はもう千代しかいないからね、クリスマスの日から廃人みたいになった千代を見て私のせいだって思ったのさ。」

そういう事だったのか・・・。だからあんな事に・・・。

「それで、何が知りたいんだい?」

知りたいも何ももう本題は終わってしまった。それでも聞きたい事が一つだけあった。

「お婆ちゃんは、どうして神社の願いを叶える力が本物だって知ってたの?」

お婆ちゃんはゆっくり口を開いて話し始めた。

「私の母、あなたにとっての曾祖母ね。その人が原因よ。」

原因?理由じゃなくて?

「私の母はね、ある男に恋をしたの。まだ私が産まれてない頃に。そしてその男に気に入られる為に母はあの神社にお願いしたそうよ。当時の母は信心深かったみたいでね。」

「その人が私を好きになってって?」

「ううん、そうじゃない。母は普段は優しいけどたまにおかしくなる人でね。恋愛に関してもそうだった。男に私を気に入ってほしい。気に入られても産まれてくる子供が駄目なら私は捨てられるかもしれない。そう思った母は自分も、産まれてくる子供も男の好みにしてくれって願ったのよ。」

それってつまり・・・。

「私達の容姿は似ているんじゃなくて、同じなのよ。私も、千冬も千代も。全く同じ。正真正銘本物の呪いよ。」

私は何も言えなかった。そういう意味だったのか。そんな身勝手な理由で。何も知らない人に怒りは湧かないけれど、それでも呆れていた。

「そして、願いを叶え男に気に入られた母は結婚した。そしてすぐに男は亡くなった。母の願いが原因でね。」

「曾祖母はその後どうしたの?」

「勿論すぐに神社に願いに行ったよ。信仰心やお祈りじゃなく、願いを叶える為にね。その後生き返ったのは言うまでもない。母は信じられなかいような神社の力を信じていた。私も、この容姿のせいで信じるしか無かったしね。」

曾祖母の身勝手で家にこんな言い伝えが残っていたんだ。そう思うと少しだけ腹が立った。

「でも何で・・・お婆ちゃんはそれをお母さんに話したの?」

「どうしても困った時に使えばいいと思ったのよ。私も使ったわけだしね。自分の力だけじゃどうしようも無い時、大事な人を傷つけてでもいいなら、いろいろな事を考えて天秤にかけて、それでも叶えなきゃいけない願いなら叶えてもらうしかないって思ったのさ。」

「それは、間違ってるよ。」

私はお婆ちゃんに言った。

お婆ちゃんはそれに黙って聞いている。

「私はその願いで沢山間違えた。人を不幸にしてまで叶えていい願いなんて、無いよ。」

素直にしっかり私の考えを伝えた。

お婆ちゃんはその答えに笑って答えた。

「そういう考えができる強い子なら、大丈夫だね。立派になったね、千代。」

顔は笑っていたのに、発せられる声は震えていた。泣きそうなのを堪えているだろう。

お婆ちゃんを責めるつもりは無かった。

例え人の為であろうと大事な人を傷つけてでも願いを叶える姿はちょっと前の自分に重なった。それで考えを伝えてしまった。

お婆ちゃんの姿を見て、私はもう間違えないと二度目の誓を立てた。

賢者タイム

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ