高校生Ⅱ編 続
「おはよー!千代!」
「おはよ、真結。」
「ほんと落ち着いたねぇ、出会った頃みたい。」
「それ何回目よ。」
校門付近で真結が話しかけてきたのを苦笑いしながら答える。
「そりゃ、驚いたしね。ちょっと前までは思いつめてた目をしてたし。」
「心配かけたね、でもありがと。真結がいなかったらもっと塞ぎ込んでたかも。」
そう言うと真結は頭をかいて照れた素振りをした。
何でもない会話をするのはいつ振りだろう。
私達はこの春、二年生になった。
「二人共、何話してるの?」
近くに来た真澄が話に入ってきた。
「あ、仁瀬君、千代がね前より落ち着いたって話してたとこだよ!」
「俺は変わってないと思うよ。ね、千代。」
「そうですね。」
笑いながら話す真澄にイラっと来て素っ気なく返す。
多分泣き虫だなんだ言いたいんだろう。
「仁瀬君は千代を怒らせるのが得意だねぇ。」
そう言って真結と真澄は笑っていた。
私の周囲はあの日から変わった。
直正君と私は別れた。どちらが言うまでもなくお互いが辛くなるだけの関係はやめたのだ。
真結には詳しく話せなくて、少し悲しそうに別れた話を聞いてたけど分かってくれた。
そして暫くは私達二人で会話無くただ一緒にいる関係を続けていた時、真澄が入ってきた。
真結は当然興奮して手がつけられなかった。私も辛い思いをするからできれば関わりたくなかったけど、真結のテンションから押し切られてしまい三人で過ごすことが増えた。
私の口数が増えて落ち着いた頃、真澄から私の知らない事を話された。
「落ち着いた?」
高校の近くにある喫茶店で向かい合って席につく。
「こんなオシャレなとこで話そうって、慣れてるの?」
私の知らない間に成長した真澄を実感した気がした。
「そりゃもう長生きしたからね・・・。」
「まだ16年でしょ?」
「・・・そうだったね。」
どうやら私を笑わせる為のボケだったみたいだ。少し緊張がほぐれた。
「まずは謝らせて、ごめんなさい。」
真澄が謝ってきた。全く心当たりが無いのに。
「・・・何かしたの?」
「まぁ偉そうに説教垂れて、悪かったなって。」
なんだそんなことか。
「そのお陰で今生きてるんだし、私は何とも思ってないよ。」
「それならいいんだけど・・・。」
真澄はそれでも申し訳無さそうだ。
「ならここの代金払ってね?それでチャラ。」
「うん、分かったよ。」
笑顔でそう言った。
私の記憶で真澄の事は小学生から飛んで今しか知らない。昔から大人っぽかったけど、今年相応になった感じがしてなんという、追い付いた気がした。
「最初、全部信じられなかったけど、逸仙さんから全部聞いたんだ。」
真澄は言った。
「逸仙って、はんこちゃん?」
「うん、彼女がごめんなさい、貴方の事を縛るような真似してって。何のことか分からなくてさ振られただけだと思ったんだ。それで暫くしたら正気に戻ったっていうか、高校に上がる頃にはあぁ、あの神社は本物なんだって思い出したんだ。」
はんこちゃんが真澄を振ったからなのか、私が記憶が戻るようにお願いしたからなのか・・・分からないがそういう事なんだろう。
「それで逸仙さんから全部聞いてたし、おばさんが亡くなってて千代は別人みたい。びっくりしたよ。」
「私もびっくりというかショックだったけどね。」
「神社の力はほんと凄いよね、記憶の改竄までしてさ。でも完璧ってわけじゃないから改竄されてない人もいるけどね。俺も覚えてたし。多分願いを叶えた人とかそれに関係する人は記憶が改竄されないんだろうね。」
なるほど、だから直正君は私が突然変わったように見えたのか。私が真澄の事を覚えてない事にも違和感を感じてたのは、それに準ずる事だからって事ね。
「まぁちゃんと定義を確認してないし曖昧なんだろうけどね。」
最後に真澄は付け加えた。
「それで、本題なんだけどさ。」
真澄が真剣な顔をして言った。
「千代のお婆ちゃんって、神社の事知ってるよな?」
「うん、お母さんもお婆ちゃんから聞いたって、多分そういう伝わり方してるんだと思う。」
「あの人、神社でおばさんが生き返るようにお願いしてたんだ。高校入学してちょっと経ってぐらいに。」
え・・・?
「何か周りでそれ関係の事起きてない?時間差で来るから今回たまたままだ来てないかもしれないけど。」
真澄は焦りそうになる早口を抑えながら言った。
「・・・まだ何も、だと思う。」
心配になってきた。まさかお婆ちゃんがそんな事を願ってたとは思わなかった。
「私、お婆ちゃんに訊いてくる・・・!」
そう言って私は真澄を置いて店を出た。
自分が当初 予定してたより凄い長くなりました。まだ続きます。
伏線回収できてるかな・・・。