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『夏のせい』

作者: 花浅葱

夏の夜は寝苦しくてかなわない。

こう暑くっちゃ収まるものも収まらない。

窓を開けたところでピクリともしないカーテン。

かと言ってクーラーをかけたまんまじゃ身体に悪い。

扇風機も古いせいか、首を振るたびカタカタと鳴り、一晩中責め立てられているような気分になる。

ずっと扇風機にあたっていると、人間は死ぬらしいという話も聞いたことがある。

朝になったら文字通り冷たくなっていた、なんてのはシャレにならん。


責め立てられていると言えば一番は蝉の声だ。

長い眠りから覚めて、僅かな生命の息吹をジリジリと必死に叫ぶ蝉。

そう思えば頑張っておくれという気持ちにもなりはするのだが、如何せんやかましい。

お前は長い生涯、何をダラダラと生きているのだと言われているような気にもなる。

俺は夏しか知らないのだぞ!と。


しかし……暑い。

なんなんだこのジトッとした空気。

ベタベタと肌に貼りつくような汗と熱気。

喧嘩を売っているような陽気だ。

蝉に一晩中説教されようが、暑いものは暑いのだ。

人間の忍耐なんて蝉以下かも知れない。


「一寸の虫にも五分の魂」


虫けらなんて言うが、生きてる事に変わりは無いよな。


はぁ……。

なんで…俺はこんなクソ暑い中朦朧としながら、虫の魂の事なんて考えてるんだ。

駄目だ。

相当イカれてきている。

夏の暑さは人をおかしくするんだ。

暑さで普段ならしないような事をしてしまう。

夏になると人が激情に身を焦がすのも、全てこの暑さのせいだ。


そうさ。

夏のせいさ。


ただの飲み友達だと思っていたのに、昨日に限って何故かとても可愛く見えて、酔いに任せていきなりキスしてしまったのもみんな夏のせいさ。

そのあと彼女に「私もずっと好きだったの…」なんて安っぽいドラマみたいな台詞を言わせたのも、きっと夏のせいなんだ。

このうだるような夏の熱さが人を狂わすに違いない。



夏も…悪くないな。




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