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2、カオスの住人

 呼吸を少し落ち着かせ、私は辺りを一望してみた。

 家々は木でできていて、どこか竪穴式住居のようにも見える。

 この星はあまり科学が発達していないのだろうか、それともここは地球のジャングルの部落のような場所なのだろうか。

 私は周囲に注意深く目を配らせながら、家へと近づいた。

 その時、家の入り口からのっそりと何かが出てきた。私は身構えた。

 どうやらこの星の住人のようだ。

 身長は高く、2mはゆうに超えている。髪は黒で、肌は青みがかっている。手足は長く、手はまるで手長猿のようだ。顔のつくりは目、鼻、口、耳、眉があり地球人とほぼ同じと言っても良い。古代ローマ人のような服装を着ているが、両肩がはだけていて両肩にはそれぞれ目が付いていた。性別は男のようだ。

 男は、私を一瞥し言った。「ようこそ、カオスへ」

 私の頭はパニックに陥った。なぜ日本語を喋っている? ここは地球とは別の惑星のはず……。

 男は親指を立て、その手を顔の後ろに動かしこっちへ来いと合図した。

 男に誘導されるがまま、付いていくとテニスコートぐらいの小さな広場があり、私の乗って来た宇宙船があった。

「ジャングルでこの宇宙船を見つけたので、すぐに解析させてもらったよ。地球という星からきたのかね。なかなかの宇宙船をお持ちだ」

 宇宙船がここにあるという事は宇宙船を操作してこの広場に持ってきたのだろう。

 少しの時間でこの宇宙船の操作方法を知るとは。私は恐怖の念を覚えた。

「この宇宙船に使われている人口知能を解析し、地球の言葉をマスターさせて貰った」男が言い、続けて「カオスへ来た目的は何だね」と言った。

「地球という星に異変が起きてピンチなんです。なので、他の星の住人の手を借りようと思って……。でもその前に、ワン太がジャングルで髪の毛のような生き物に血を吸われ元気がないんです。助けて下さい」

「地球の星の異変か……。それは、私ではどうすることも出来ない。犬はわしが何とかしよう。地球の異変については、後で知り合いの大統領に相談してみよう。私はこの星を代表する有名俳優じゃ。ここへはロケで来ている」

「じゃあ、この村はロケセットなんですか?」

「いかにも」男が言った。

「でも、なんで宇宙船とか操作できるんですか」

「わしは元は科学者なんじゃ。そして、転職して俳優になった」

「そんな過去が……」

「どれどれ、その犬を見せてみい」男は犬を真剣な表情で観察した。

「むむむっ」男が険しい顔をして言った。

「どうしたんですか?」私は心配になって聞いた。

「これはまずい。感染症じゃ。しかもかなり症状が悪化している」

「どうすればいいんですか? 薬とかはないんですか」

 男は首を振った。

「もう手遅れじゃ。この犬はどうすることもできん」

「そんな、先生。お願いしますよ。私の可愛いペットなんですよ」私は男の洋服を掴み、号泣して言った。

「犬の体力じゃ、これ以上どうしようもない。しかし、方法は一つだけある」

「先生、お願いします。私はどうなっても構いませんから」

「うむ、ではお主の髪の毛を全て貰おう」

「髪の毛をどうするつもりなんですか?」

「この髪の毛を材料にして、呪文を唱え、犬を人間にするのじゃ」

「そんなことが、可能なんですか」

「うむ、わしは科学者の前は魔法使いだったのじゃ」

 私は転職しすぎだよ、とつっこみたくなったが、つっこまなかった。

「イーヌ・カラ・ニーンゲン・ニ、カワレ」彼が呪文を唱えると彼の周囲に青色の炎が現れた。

 そして彼の手から、野球ボールぐらいの光の玉が現れた。

 彼はその玉をワン太の頭に静かに落とした。

 光の玉はワン太の頭に風邪の時のお粥のようにすーっと優しく吸収されて行った。

 すると、わん太の体からシュワシュワと煙が立ち込めてきた。

 煙は瞬く間に、ワン太を覆い隠した。

「しばし、待たれよ」男は俳優らしい渋い表情で言った。

 5分ぐらいして、煙が収まって来てうっすらと影が見えてきた。

 そこには、地球の人間となんら変わらない男が裸で横になっていた。

「あ、あれがワン太ですか。成功したんですか?」私は言った。

「うむ、成功じゃ。もう死ぬ心配はない。安心して良いぞ」

「でも、形だけ人間なんですよね。言葉とかは喋れないんですよね」

「いや、お主の髪の毛を使ったから地球の言葉を喋ることが可能じゃ。初めはぎこちないだろうが、時機になれる」

「おおー」私が関心していると、ワン太が立ち上がるのが目に入った。

「ワン太、大丈夫か?」私はワン太に声を掛けた。

「ご主人様、助けて頂いてありがとうございます。もう元気ピンピンです」

「良かった。本当に良かった」私は泣いた。

「ところで、人間の体はどうだ。何か不自由な所はないか?」私は続けて聞いた。

「ワンダフル」ワン太は言った。


 

 

 

 

 


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