1、カオスへ降り立つ
ここは多種多様な生物が混在する世界。
その名も「カオス」
私の名前は[火竜 昇]だ。
20××年私は地球という星を飛び立ち宇宙をさまよっていた。
なぜ地球を飛び立ったかというと、地球が破滅の危機にあったからだ。
人類による自然破壊、戦争による核爆発などにより地球は瀕死の状態だった。
私は、地球では科学者で日本で国家機密の宇宙船を開発していた。その宇宙船には古代遺跡から発掘された、未知の材料や機械を搭載している。その機械は人口知能付きだった。私は科学者としての英知を全てつぎ込み宇宙船に上手く融合させ、究極の宇宙船は完成した。
その同時期、地球に異変が起きた。
世界中の火山が大爆発、世界各国で大地震、地面は隆起し、食物は壊滅的なダメージを受けた。
もはや、打つ手はなかった。
このままでは、人類が全て滅亡してしまう。私は総理大臣に「宇宙船で宇宙へ飛び立ち、生命のいる星を探して解決方法を見つけて来いと」命令された。
宇宙船は超高性能で光の速さを軽く凌駕するが、人間一人しか乗れない。しかも、操作できるのは私だけだ。そして私はペットの犬[ワン太]を連れ、宇宙へと飛び立った。
宇宙船の中は常に栄養が放出され、腹が減ったりすることはなかった。
宇宙船に乗って、数週間が過ぎた。目の前に奇妙な惑星が見えてきた。人の顔に見える惑星だ。宇宙船の人口知能でこの星の情報を調べるとこの星の名前は[カオス]と表示されていた。さらに生物について調べると、多種多様とだけ表示された。危険度も調べたが地球とほぼ同じと出たので安心し、宇宙船は[カオス]へと降り立った。
外へ降り立つ時、私とワン太が適応できるかどうか宇宙船で調べ、[OK]が出たのでカオスの大地へと降り立った。
まず最初に感じたのは空気だ。降り立った場所が、ジャングルのような場所だけあって、草木や土の香りが鼻をつく。しかし、湿度があるせいか、どこか重苦しい雰囲気がジャングルに漂っている。
科学者と言えばインドア派のイメージがあるかもしれないが、私はアウトドア派だ。
休みなどがあるときは常に外に出かける。そして、様々なスポーツやキャンプなどを積極的に行っている。なので、こんな何も分からない星に自分とワン太だけ降り立っても不安よりも好奇心の方が勝った。
ワクワクしながら、カオスのジャングルを踏みしめていると、〈ぷに〉と何か踏んづけた。
私は咄嗟に身をその場から離れた。「何だ、あれは」
20cmぐらいの人間の目玉みたいな物があり、瞬きをしている。そして、その目玉には数百と思える足があり、素早く移動し私から逃げようとしている。
私が、呆然としていると、ワン太が私の横から勢い良く飛び出し、その足つき目玉をガブリと、くわえこちらへ持ってきた。ワン太はハアハア言いながら尻尾を勢い良く振っている。
私が戸惑っていると、ワン太は仕留めた目玉を湿った地面に置き「ワン」と一吼えした。
これは、私が教えた食べてもいいか、の合図だ。それを見て私はこの目玉が食べられることを知った。
私は、ワン太に待ての合図をし、その食べ物をワン太と半分にして食べてみることにした。
生で食べるのは流石に少し抵抗があったので私は近くの石を使い火をおこした。そして、目玉を串に刺し焼いた。
火が十分に通ったことを確認してからナイフで半分に切り、ワン太に渡した。
「目玉焼き美味しいかい」
ワン太はワンと言い嬉しそうに尻尾を振った。
栄養を補給し英気を養い、ジャングルをひたすすんでいると、だんだんと辺りが暗くなって来た。この星にも夜はあるようだ。私はこのジャングルで一夜を過ごすことにした。
木々の間に、しなやかで堅い枝々を渡し樹皮で作った紐で地面から、高さ一メートルの位置に結びつけ寝床の土台を作った。
これでは寝心地が悪いのでその上に敷くクッションの役割を果たす物を探した。
ワン太と一緒に何かないか探していると、かさが1メートルはあろうかという巨大なキノコを発見した。
そのキノコの、かさを見てみると、かさの上にすき間なく、びっしりと黒い髪の毛の様なものが芝生の様に生えていた。
私はその髪の毛の様な物体を恐る恐る触ってみた。
すると、その物体は水分の無くなった植物の様に力なく〈ふにゃ〉としおれた。
しかし、触り心地はまるでシルクのような滑らかさだった。
私とワン太はその髪の様な物体を持って帰り、寝床にびっしりと配置しベッド作りは終わった。
そして私とワン太は、添い寝をして次の朝を迎えた。
朝起きると、ワン太に異変が起きていた。
ワン太の顔色がとても悪い。しかも、体中から血が出ていて血が体毛にべっとりとくっ付き固まっている。
「大丈夫か、ワン太」私はワン太に呼びかけ、ワン太を撫でようとした時、異変に気づいた。
私の手からも、大量の血が流れ出ている。
私は、手だけじゃなく、腕や足や顔も触ったり、鏡を使い確かめた。
私の全身は針で刺されたように無数の小さな穴があり、そこから血が流れ出ていた。
手に昨日寝た時に敷いた髪の毛の様な物体が付いていたので、それを払おうとした時その物体が微かに動いたように見えた。
「こいつ、生き物か?」
私はその物体を右手の人差し指と親指で掴み、左手を使い千切ってみた。
すると、その物体から血が流れ出た。
私はその物体の先端を至近距離でまじまじと見てみた。先端には小さな口の様な物があった。
私は全身に悪寒が走ると共に、ちゃんと確認しなかった自分自身を悔いた。
「くそっ、こいつは地球で言うヒルの様な生物か。そんな物を布団として敷いていたなんて」
キノコの上にあった時はピクリともしなかった。たぶん夜行性なのだろう。
私はすぐに寝床から降り、ワン太を抱えて降ろした。
私は幸いにもそんなに影響はなかったが、ワン太はやはり元気が無い。立ち上がるのもやっとという状態だ。
5年も一緒に暮らしているペットで家族同然だ。見捨てるわけにはいかない。
私はワン太を両腕に抱え、休ませられる場所を探した。
遠くに水の音が微かに聞こえてきた。私はその音を頼りに歩いて行った。
うっそうと生い茂る草木をなんとかかき分けて行くと、急に視界が開け、目に飛び込んで来たのは川だった。
川はとても綺麗で、濁りなどは一切なかった。
私は近くの平らな岩にワン太を降ろし、両手で川の水を掬った。思っていたよりも冷たかった。
その水をワン太の口元に持って行くと、ワン太はチロチロト舐め始めた。しかしまだ辛そうに見える。
これからどうするべきか途方に暮れていると、そんなに遠くない場所で煙が上がっているのが見えた。
もしかしたら、この星の住人かもしれない。
本来なら、じっくり様子を見てから動くところだが、ワン太がこんな状態なのでそんな余裕は無かった。
もし、住人が善人ならワン太を治療して貰いたかったのだ。
私は再びワン太を抱きかかえ煙の上がった方へと向かった。
綺麗に伐採されている樹木達がちらほら見え、私は住人がいることを確信した。
前方に人工的な建物が突如として、目に入り私は足を止めた。
「村だ」