第一幕 『えぴろーぐ』
この物語はフィクションです。
実際にいる人物、団体、組織、国家とは一切関係ありません。
およそ五メートル四方程の部屋をたった一本の蝋燭が照らす。
蝋燭を乗せる金の燭台は朧気な橙の明りをより色濃く反射している。
風も吹かない締め切られた部屋で蝋燭の炎を揺らすのは、その部屋の持ち主と部屋に招かれた一人の人間の吐き出す重苦しい空気だけだ。
一人は燭台の置かれた豪奢なデスクに肩肘を突いて薄く微笑みを浮かべ、その正面に案山子の用に棒立ちさせられた一人の男は緊張の余り顔に通常の物とは違う、やけに粘り付くような汗を浮かべている。
「―――それで。」
坐した男が束の間の沈黙を破りそう切り出すと、一瞬ビクリと体を震わせて対面の男が顔を強張らせる。
「まんまとうちのエース級を敵に奪われて、眼の前に目的の御子が居ると言うのに指を咥えたお預け状態……というわけですか。」
言葉口からにじみ出る優しさに反した、凍てつくような圧力に押され、対面の男は何か言いたげに口をモゴモゴと動かし、結局それは言葉に成らずに胃の腑へ飲み込まれる。
「何か言いたい事があるのならお聴きしますよ?」
圧倒的に純粋な悪意で持ってそう問われ、息を吐いた対面の男は、見た目だけならもう五十は疾うに過ぎている。
対して坐した男は凛々しく若さの残る青年だ。
だがそんな見た目はこの場の圧倒的力関係を表すに何の影響も及ぼしはしない。
常に放たれる雰囲気が、オーラが、既に別格だった。
「はぁ、まぁ私もそこまで貴方達に期待なんてしていませんから、別に首で持って償えなんて事は言いません。」
そう言われふっと対面の男の表情が緩んだ瞬間、その表情は即座に凍りつく事になる。
「―――ただ、確か上役が下の責任を取るというのが人間界では常識でしたよね?」
爽やかな、全てを凍りつかせる様な微笑を浮かべて、坐した男は言う。
「心配しないでください、命までは取りません。あぁでも、もし、ショックであなたの心の臓が止まったりした時は、私の責任ではありませんから……。」
其の日、同じ建物に居た全ての人間が、男の断末魔を聞いた。
幸い命を失うまではいかず、だが彼が部屋から出て来た時、その頭髪は灰や黒が微妙に混じり合った、見る影も無い白髪と化していた。
そして先程の部屋で一人正面を見据える青年は呟いた。
―――我慢我慢、と。
あっはっはは。
笑ってもごまかされませんね、文章量を見てお気付きの方もいらっしゃるかもしれませんが、3日でこんだけ!?
はい、若干忙しくてさぼってました。
あと人物相関図とかこの後の話の展開とか一切考えずに第一幕をノリと勢いだけで書ききってしまったために起きた弊害であるとも言えます!
未熟でさーせん!