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第41話:後日談—声の続き、記録の先へ

初夏を思わせる鮮やかな日差しが、リヒテンタール邸の窓から差し込んでいた。

少し開けた窓から、外の風がふわりとカーテンを揺らす。


私は、袖をまくって、書斎の棚に積もった埃をそっと払った。


【アメリア】

「少し、掃除をしておこうと思って」

「……お父さんが、戻ってこられたときのために」


【リュシアン】

「……ありがとう」

「きっと、喜びますよ。……父は、ああ見えて、几帳面なところがあるので」


彼はそう言って、少し笑った。その表情には、かつての影はもう見えなかった。


【リュシアン】

「ここを、“残すべき声”の記録の場にしたいんです」

「君が来てから、この場所は──ただの報道官の書斎じゃなくなった」


(……この家で、また始まるんだ)


ふと、一枚の古びた新聞の切れ端が棚から落ちた。あの儀式の直前に配られた号だった。


(……あの場で、名を名乗ったこと。あれが、“ジェンシア家”として再び記された最初の瞬間だったのかもしれない)


【アメリア】

「ねえ、密約って──結局、何だったんでしょう」


彼の手が止まり、静かに私の問いを受け止める。


【リュシアン】

「きっと、“王”のための記録。今はまだ……それだけです」

「でも──君と一緒なら、もっと遠くまで見届けられる気がします」


私は、彼の横顔を見つめたまま、静かに頷く。

その胸の奥に、まだ言葉にならない想いが残っていた。


【アメリア】

「……まだ、怖さが残っていて」

「儀式のときのことを思い出すと、胸がざわつくんです」


彼はふっと息を吐いて、少し目を伏せた。

そして、言葉ではなく、静かに腕を伸ばしてくる。


──その腕の中に、私はおさまっていた。

守るように、そっと包むように。


(……私の”輪郭”が、ここにある)

(名前を奪われても、記録から消されても。それでも、私は──ここにいる)


やがて彼が身体を離すと、少し迷うように、私の頬に手を添えた。

その指が、震えるように一瞬だけ揺れる。


【リュシアン】

「……君の声が響いた瞬間、世界が、ほんの少しだけ動いた気がしたんです」

「きっと、誰もが”目をそらせなかった”のは、あの声が真実だったから」


彼の目が、まっすぐにこちらを見ていた。

その声には、優しさと、静かな決意が滲んでいた。


【リュシアン】

「僕は……あそこに立っていられたのは、君の声があったからです」

「だから──もう、怖さすら、ともに記していこうと思います」


そっと、額に唇が触れた。

まるで、傷跡をやさしく上書きするような仕草だった。


静かな時間が流れる。光が、緩やかに差し込んでいた。


そして彼は、ゆっくりと私を見つめた。


【リュシアン】

「君の声に救われた僕が、今度は──僕自身の声で、“君を”記していく番だと思うんです」

「それが、僕の選ぶ”記録”です」


壁に掛けられた彼の母の肖像画が、やわらかな午後の光に照らされている。

まるで二人を見守るように微笑んでいるように見えた。


これからも、記されていく”声”の先へ──私たちの物語は、続いていく。

報道官リュシアン編、読了いただきありがとうございました!

いかがでしたでしょうか?

感想やコメント、もしグラヴィオ編も読んだよという方がいらしたら、どっちのキャラが好きだった!など教えていただけると今後の参考になります!


さて、次はリュシアンに”旅芸人”と称されたあの人とのお話です。

個人的には一番好きなキャラクターなので、少し公開までにお時間頂くかもしれません。


その前にグラヴィオ編のようにリュシアンも童話パロディ外伝を公開予定です。

おたのしみに…!

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