第4話 文化祭なのにステージが爆発するのは普通なんですか?
「みんなーっ! 今週末は、バクガク名物“爆音文化祭”だよ〜〜〜〜!!」
朝のHRで、校内放送担当のDJメガネ(声がやたら通る)が叫んだ。
頭にスピーカー生やしてるのはもはや突っ込む気力もない。
「文化祭……って、まさか普通の文化祭じゃないんだよね?」
リクの疑問に、クラス全員が即メロイックサインで返した。
「甘ぇよリク!!」
「バクガクの文化祭は“ステージ生死バトル”がメインなんだよ、クソッタレー!!」
「字面の暴力がすごいな!?」
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【爆音文化祭とは】
・全クラスが「ライブ屋台」を出す
・観客(=審査員)から最も投げ銭(ギター型コイン)を稼いだバンドが優勝
・最下位のクラスは学園の地下牢で合宿
「ちなみに我らB組は去年、爆音すぎて校舎の壁吹き飛ばして失格だった」
「いやもうそれ不戦敗でしょ!!?」
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とはいえ始まったらやるしかない。リクも、ギター持たずに汗かく係=裏方総監督として参加決定。
「リク! 衣装どうする!? やっぱ背中に火つける!?」
「つけません!!」
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そんでもって数日後——文化祭当日。
学園の敷地は、もはや夏フェス会場と化していた。
・炎上系たこ焼きバンド「オクタヴ火炎団」
・全員ヴォーカルの無法バンド「百人叫」
・見た目はかわいいけど歌詞が社会風刺全開なアイドルバンド「ポストアナーキズム妹’ズ」
そしてB組は——
「ヘルアンです!! よろしくお願いしまーす!!」
・ラムダ(Gt. Vo. 魂)
・ミラ(Gt. 無口ツッコミ)
・ユリ(Dr. 鉄拳)
・ゾーイ(Ba. 空間ゆがみ系)
・リク(照明・火薬・進行・雑用)
「俺だけ担当パート多すぎない!!?」
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ヘルアン、ライブ開始。
\ドカーン!!!(照明から火柱)/
\ギュワァァァァン!!!(爆音)/
リクが頑張って仕込んだ特効がキレッキレに炸裂し、客席からギター型コインが飛び交う。
「うおおお! ステージが燃えてるううう!!」
うん。なんか曲はいいんだけど……本当に燃えちゃってるんだよね。
「消火班ーッ!!」
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安息の猶予もないまま、事件発生。
審査会場のメインステージに黒ずくめの不審バンドが乱入してきた。
「紹介しよう……我ら、“退学メタル党”!!」
「また厄介なヤツ来たああああ!!」
【退学メタル党とは】
→バクガクに在籍しながら、すべての校則を破壊し退学を目指す異端集団。
→卒業より退学にロマンを感じるクレイジー集団。
→校長のギターを5回燃やして出禁になった過去あり。
「この文化祭を! 爆破して! 学園を! 解散に追い込む!!!」
あー、本当にどうかしてるわこの世界。
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退学メタル党、サウンド魔法強化装置「メタリック・ディストピア」を起動。
\ギュウウウウィィィィン!!!/
客席が吹き飛び、校舎のガラスが音圧でバリバリに。
「こ、これはマズい!!」
「くっ……私たちの音が通じない……!」
——そのとき。
「リク、出番だ」
「えっ、無理無理無理!! 俺楽器触ったことないもん!!」
「お前にはエフェクターがあるだろ。魂の裏方にしかできない“調整音”をぶちかませ!」
\ポチッ/
《発動:ローディースキルLv2【全部入りリバーブ・メンタルチューン】》
「なんか名前オシャレだけど中身バグ技っぽい!!」
\ギュワァァァァァン!!!!!!/
リクの音波が、全ステージのPA(音響)に共鳴。
乱れた音を一瞬で整え、全バンドの音がシンクロする。
「うおおおおお!? 音が……一つになってる!?」
「これぞ異世界の“学園合同ジャム”……!」
退学メタル党の爆音も、数十の生徒バンドの音圧に押し返されていく!
「やってくれ……リク!!」
「おらああああああああああ!!!!!」
\バッッッッッン!!!!!!(文化祭ステージ全壊)/
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その後、学園は3日間停電。
文化祭は校長の「おもろかったからセーフ!」という謎裁定で無事終了。
最終的に、B組ヘルアンは投げ銭第1位+最爆賞(ステージぶっ壊し枠)をダブル受賞した。
もう、めちゃくちゃだ。
めちゃくちゃな学園だし、めちゃくちゃな文化祭だ。
ラムダが言う。
「楽しかっただろ?」
……正直、ちょっとだけ楽しかった。