第3話 登校先はやっぱりパンク?
「リク。お前、明日から“爆音音楽騎士学園”に通うことになったから」
朝メシ中に爆弾が投下された。
「えっ!? なんで!? てか名前ヤバすぎない!?」
「異世界の常識だ。18歳未満のローディーは学校通わないと国家反逆罪らしいぜ」
「法律もぶっ飛んでる!!」
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というわけで翌日、リクは革ジャンの上に学生服という奇跡的にダサい服装で、“爆音音楽騎士学園(以下、バクガク)”に登校することに。
校門はでかいスピーカーでできており、「登校チャイム」はドラムソロだった。
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クラスメイトは美少女だらけ。
しかも全員パンク。
髪が炎のように逆立ったツンツン娘「ブレイズ」
常にギターを抱いてる陰キャ系「チョーキング先輩」
“ダウンチューニング”の呪文を唱える謎のローブ少女「トレモロ」
そして担任は、、
\ズゥゥゥン……/(爆音SE)
「我が名はデス鬼怒・爆音・教師長」
「どこからどこまでが名前ですか先生ぇぇぇ!!!??」
「静粛にィ!! 校則第十三条、“教師の音に逆らった者は即ヘドバン百回”!!」
\ヘドバン百連発開始/
「ちょっ!! 首が!!! 首の稼働限界が!!」
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一限目:パンク歴史学
「よいか諸君……伝説によれば、この世界は“ノートン・ノイズ神”が創造した音圧の塊だ」
「ノイズ神!?」
「そのノイズ神がギターを投げつけて生まれたのがこの世界だ」
「いやビッグバン雑すぎるでしょ!!」
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二限目:魔法音響学
「この“爆音の譜面”を見ろ。ド♯のところに“叫べ”って書いてあるな?」
「え、あ、はい……」
「リク、叫んでみろ。“ド♯・フォルテッシモ・絶叫バースト”だ」
「え!? ……ド、ドおおおおおおおおお!!」
\ドッカァァァァァン!!!/(隣の壁が吹っ飛ぶ)
「よし、出席とった」
「出席の方法、物理的すぎます!!」
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昼休み。
学食では「地獄カレー(音圧マシ)」と「スクリーム丼」が人気らしい。
「これほんとに食べ物? なんか……鳴ってるんですけど……」
「それはスクリームミート。鳴く肉さ。美味いぞ」
「狂ってるよこの世界!!」
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午後は体育(=ライブバトル実習)。
「よし、ペア組んでライブバトルだ。負けたら地獄送りな」
「軽っ!!?」
リクの相手は、例の謎ローブ少女・トレモロ。ギター型の杖を構えている。
「我が名は“トレモロ・チューナー”……この音の揺らぎ、受けてみよ……」
\ビビビビビィィィィン!!!!/(超不協和音)
「うわあああ!? 頭ん中ぐるんぐるんするぅぅ!!」
「彼女は“音痴魔法”の使い手……音感が正しいほどくらうダメージが大きい!」
「なんでそんな厄介な設定を俺がくらうんだ!!」
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絶体絶命の中、リクは再びエフェクターを取り出す。
「お願い……またなんか出て!! 必殺技とか!! クールなヤツ!!」
\ポチッ/
《発動:ローディー・スキルLv1【とりあえず爆音】》
「名前雑ゥ!!」
\ブォォォォォォン!!!!/
謎の重低音がトレモロのスピーカーを吹き飛ばす。
「ま……負けました……音程が……迷子に……」
勝っちゃった。
え、これってスゴいことなのでは……?
「おお……! “ローディーで音魔法を制する者”が現れたか……!」
「な、なんだあいつ……ただの音響奴隷じゃなかったのか!?」
「フッ……こいつはまだまだ化けるぜ」
リク「いや! 登校初日でなんでボス感出されてるの俺ぇぇぇえ!!??」
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こうしてリクは、“爆音音楽騎士学園”の伝説の転校生として記憶されることになった。
異世界の学校は、今日も騒がしい。鼓膜が、持てばいいけど。