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9話 ミッション 石鍋を作る

ローズは箱庭世界に転生する前の夢を見ていた。

「別にムチで打つ必要はありませんわ、お父さま」

「いいかローズ。

 お前は子供で、子供とは気まぐれなものだ。

 丸焼きにしたシカを崖から捨てるぐらいの気まぐれを起こすのは普通の事だ。

 むしろ感心している。

 さすがは私の娘といったところか」

「気まぐれは普通、ですの?」

「ああそうだ!

 むしろ、気まぐれであればあるだけ可愛らしい、それが子供というもの。

 それをあろうことか、もったいないなどと無礼にも口走った使用人風情。

 そいつに罰を与えるのは、当然のことだ」


父親がムチを出す。

いつも携帯しているのだ。

「でも、本当に気まぐれは良い事なのでしょうか?

 お母さまは、皆を困らせぬように、と…」

「ははは。

 おまえのお母さまは気が弱いからな。

 いいかローズ。

 素晴らしい令嬢、素晴らしい貴族であり続けるためにも、常に周りの人を振り回すんだ。

 わかるか?」

「いいえ、どういうことですの?」

「お前を愛してくれる人、信頼してくれる人を徹底的に困らせる。

 あれがほしい、これがしたい、やっぱりやめた、すぐにやってほしい、とな」

「でもそんな、人を試すようなことを…」

「それでお前の周りに残るのが真の人材なのだ。

 お前を愛すると口で言う男性は、山のように現れるだろう。

 そんな時は、試して、試して、試しまくる!

 これが真の愛を見つける方法なのだ。

 最後まで行動で示して残ってくれた恋人となら、お前も幸せになれるだろう?」

「そ、そうなのですね、さすがはお父さまですわ!」

「友人や使用人についても同様だ。

 時に厳しく試し、本当に自分についてくるだけの覚悟、真実の愛があるかどうか試す。

 これが賢い人付き合いのやり方なのだ、娘よ」

「すごい!

 お父さまって賢いですわ~!」


ローズはジャンプして、父の腕に飛び込む。

優しく抱きかかえられる。

「ガッハッハッハ!

 お前を甘やかして、甘やかして、甘やかしきってくれる人間だけをそばに置け。

 わかったな?」


「…」


「…間違って…」


「…間違っておりましたわ、お父さま…」

「キャウ」


「…その考えは、間違っておりましたの…」

「キャウ!」

「ハッ!」


悪夢から目覚めたローズは全身に汗をかいている。


「ああ、ありがとうございますブリリアントさん。

 わたくしを起こしてくださったのですわね?」

「キャウ」


ブリリアントはその辺の草をモグモグ食べ始めた。

「フゥ…さっ、気を取り直して、今日も一日の始まりですわー!」


明るい空に向かい、元気に手を伸ばす。

胸いっぱいに深呼吸して空気を吸い込み、ゆっくりと吐き出した。


――――――――――


「気合いも入れ直しましたし、ミッションスタートですわ~!」


Lv.8 箱庭世界

スキル Lv.4 木材加工    Lv.2 高笑い

    Lv.1 土木工事    Lv.1 ガーデニング

    Lv.1 暗闇耐性    Lv.1 石材加工 

    Lv.1 観察眼


ミッション 石で鍋を作る


「お鍋といったら銅や鉄でできているもの…ですが、石鍋とは?」

ローズはとりあえず、石が落ちている場所まで移動する。

箱庭世界の膨張により石や砂のゾーンは広くなっていた。


「わかりましたわ!

 石を鍋の形にすればクリアということでしょう!」


石材加工のスキルを使い、自分の頭ほどの大きさの石を切りつけてみる。

カツン、カツン、カツン、パキッ!

「あらっ?

 石が割れてしまいましたわ~!

 貴重な資源が…」


石は真っ二つだ。

よく見ると、中は黒く、キラキラと輝いている。


「まさかこの石、宝石でしたの!?

 表面がおしとやかな灰色でしたから、気付きませんでしたことよ」


そういいながら、細かく割れた欠片かけらを拾ってみる。

「なんてキレイ…まるでガラスのようですわ…キャッ!」


指先から赤い血が見えた。

石のふちが鋭利になっており、指を切ってしまったようだ。

といっても、ぽろっと出血して、それでおしまいの小さな傷である。

「な…な…なんて無礼な!!

 わたくしを誰だと存じ上げておりますの!?!?

 歯向かうことなど許されない、公爵家の長女、ローズ・マクダナルですのよ!

 平民の石さんは、どういう罰を受けることになるか、おわかり????」


彼女は怒りのままに、その石を石材加工のスキルで切りつけまくった。

パリッ、パリッ、パキッ、パキッ、パリン!

細かい破片に割れていく。

パリッ、パリッ、パキッ、パキッ、パリン!

パリッ、パリッ、パキッ、パキッ、パリン!

パリッ、パリッ、パキッ、パキッ、パリン!


ピロン♪ Lv.1 石材加工 → Lv.2 石材加工


「ハッ!!」


レベルアップの音で、ようやく我に返った。

大きかった石は細かく砕け散り、破片がキラキラと、の光を受けて輝いている。

「あ、危ないですわ、さっきのような鋭い破片を素足でめば、とっっっても痛い思いを…することになります…わ」


後ずさりして気づく。

「わたくし、もしかして、貴重な石という資源を無駄にしてしまいましたの…?」


大きかった石は、バラバラの残骸ざんがいとなって砂の上に散らばっている。

一時いっときの怒りは、判断を狂わせる。

青ざめた顔でローズは切り株まで戻り、気持ちを落ち着かせた。

「カッとなるのは、先ほどを最後といたしましょう。

 令嬢らしく、どんなことがあっても優雅に、余裕をもって、美しい所作で振舞わせていただきます!

 わたくし、努力いたしますわ!

 ホホホ…!

 オホホホホッ…!

 オオーーーーーッホッホッホッホッホォ!!!!」


ピロン♪ Lv.2 高笑い → Lv.3 高笑い

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