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6話 ミッション 洞窟探索

木の実を植え、水もやり、ミッションクリア。

大地が震え、さらに球体が大きくなる。

「あらっ?

 池さんが大きくなっていますわ!

 世界が大きくなると、あわせて池さんも成長されるのでしょうか?

 それは事前に教えておいてくださいまし!

 わたくし、水の量も節約しなければと思い、ちょっとずつ飲んでおりましたのよ!」


どうやって池が教えるのかは謎である。

「ウィンドウさん!

 ステータスオープンですわ!」


もう下着姿も板についてきたローズは、レベルアップした自分の状態をチェックする。


Lv.5 箱庭世界

スキル Lv.3 木材加工

    Lv.1 土木工事

    Lv.1 ガーデニング

    Lv.2 高笑い


ミッション 洞窟探索


「ど、どっ、どっ、どっ、どう、どうくつ、洞窟探索っ!?!?!?」


目をゴシゴシとこすってステータスウィンドウを見直すが、書いてあることは変わらない。

「どこに洞窟なんて…」


数十歩すうじゅっぽ進むと、灰色の小山が見えた。

「あらっ」


ピロン♪ アチーブメント 『間違い探し』


「いつの間に…いえ、さっきの地震と地面の拡張で現れたに違いありませんわ」


球体で説明すると、池の真裏まうらに洞窟が出現していたのだ。

ローズは息をのむ。

「た、探索、やって差し上げようじゃございませんこと!」


ダッシュで木の切り株まで戻った。

木材加工を使い、枝を2本確保する。

葉っぱや細かい枝を払い、棒のようにした。

それを両手に持ち、再びダッシュで戻ってくる。


洞窟の中に向かって叫ぶ。

「あああ~~~~~っ!!

 誰もいらっしゃいませんわよね?

 例えば、危険な動物やモンスターがいらしゃるなら出てきてくださいまし!

 わたくしは、とっても、強いんですわよぉ~っ!?」


返事はない。

中は暗く、しーんと静まり返っている。

ローズは覚悟を決め、ゆっくりと洞窟に侵入した。

手に握っている木の枝が汗でぬめる。

入り口からじりじりと進み、日光が届かない場所に来ると…ダッシュで逃げ出した。

「お、恐っそろしいですわ~~~!!!

 公爵家の令嬢、ローズ・マクダナルに、このような野蛮な…洞窟探索などをさせるとはっ…!

 バカバカ!

 ウィンドウさんのバカッ!」


ハァハァと乱れた息を整える。

「さっき、ちょっとは洞窟の中に入りましたわよね?

 これで探索したってことには…なっておりませんわ~っ!」


ミッションは洞窟探索のままだ。

ローズは恐怖に汗をかき、軽い頭痛やめまいを覚えた。

朝に摂取したカロリーがすべて失われてしまったように感じる。

「怖い…暗い…不気味で…恐怖を感じますわ…1人でこんな…知らない場所に…入れなくってよ!」


顔が青ざめる。

このままでは永遠に次のミッションに進めない。


――――――――――


夕日が世界を包む。

草むらに横たわり、乾いたドレスに一安心した。

「でも、こんなに汚れていては着る気にはなりませんわね。

 池さんは大切な飲み水ですから、あそこで洗うわけにもまいりませんし…しばらくはこのままでしょう。

 悲しいですわ~!」


ここは罰の世界、そう自分の中で繰り返す。

魔法のライトもなく、サーチもなく、バリアもなく、体一つで洞窟を探索しなければならない。

考えただけで苦痛だった。

ブルブルと震えながら、敗北感に包まれてねむる。


――――――――――


朝。

目覚めるのと同時に、水を飲み、ナッツをかじる。

一度に食べてしまうと眠る前に空腹と戦わなければならなくなると学んだので、数口でやめて取っておく。

木材加工で木の枝をたくさん作る。

なんとなくの形だが、剣も作る。

グリップとブレイドがひとつながりの、原始的な木剣だ。

それを持って再び洞窟へ向かった。

「暗闇!

 それは人間の根源的な恐怖なのですわ~!」


そう大声で言いながら、枝を投げる。

入口から近い場所に落ち、地面と枝がぶつかる音がパチッと鳴った。

まだ目視できる。

「視界が効かず、不安を増幅させる、それが暗闇ですの!」


先に投げた枝のところまで進み、そこからさらに奥に向かって枝を投げる。

薄暗いところにパチッ、パチッ、と落ちた。

「人間には五感がありますの!

 目が見えなくても、音が聞こえますわ!」


大声を出しながら進む。

もう真っ暗闇だ。

思わず振り向いて、明るいほうを確認する。

木の枝を投げ続けた。

壁にパチッ、地面にパチッと落ちる音がした。

「それに、モンスターがいたら、この剣で…木です。

 木なのですが、この剣でぶっ倒してさしあげますわ!!」


木の枝を投げ続ける。

パチッ、パチッ、と音がする。

振り向き、明るい出口を確認する。

剣で辺りを探る様に、地面や壁をこする。

「触感も五感のうちの一つですわ!」


がりがりがりがり…

木の枝を投げる。

パチッ、パチッ…

木剣で地面と壁をこすり、落とし穴がないか確認しながら進む。

がりがりがりがり…

木の枝を投げる。

パチッ、パチッ…

「クンクン…変なにおいはしませんのね!

 嗅覚も動員していますのよ!」


がりがりがりがり…

パチッ、パチッ!すぐ前で音がした。

恐怖でガクガク震えながら手を伸ばす。


ピロン♪ ミッションクリア 洞窟探索


突き当りに手が触れたようだ。

ローズはすぅぅぅぅううっ、と息を吸い込み、木剣を投げ捨てダッシュで出口へ向かって逃げた。

「恐ろしかったですわぁ~~~~~っっ!!!!」


叫び声には、どこか喜びが混ざっていた。

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