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5話 ミッション 木の実を植える 植えた木の実に水をやる

雨が上がった。

ローズは仕方なく、びしょ濡れになったドレスを脱いだ。

干しておく場所もない…と再び涙目になるが、わずか半日のうちに彼女は逞しくなった。

はだかのまま草の上に寝転ぶ。

「どうせ、誰に見られるわけでもないのです!」


夕焼けが辺りを包む。

疲れ切ったローズはそのまま眠った。


――――――――――


「下着だけは乾きましたわ…!」


令嬢にあるまじき、ブラジャーとアンダーパンツだけの完全肌着スタイルで仁王立ちをキメた。

ドレスはまだ濡れており、そもそもドロで汚れている。

それでも、文字通り裸一貫からやり直す!という気概が彼女の体に満ちていた。

「ステータスオープン!」


あさイチの元気いっぱいのステータスオープン。

腰に手を当て、もう片方の手をパーに広げ指示した。

ジェスチャーひとつひとつににじみ出る悪役令嬢感がすごい。


Lv.4 箱庭世界

スキル Lv.3 木材加工

    Lv.1 土木工事

    Lv.1 高笑い

ミッション 木の実を植える 植えた木の実に水をやる


「木の実を植える、ですって!?

 どういうつもりなの?

 あのナッツだけが貴重な食べ物ですわ!」


慌てて木の実の個数を確認した。

「…残りは31個しかありません」


昨日はおなかが減っていて、いきなり3個も食べてしまったことを後悔した。

「バターのような濃密な味わいですし、もしかしたら1日1個で足りるぐらいの栄養があるのかもしれません…」


この箱庭世界にある食料がこれだけという事実が、判断を迷わせる。

「土に埋めてしまうなんてもったいないですわ!」


自分の口からもったいない、という言葉が出たことに驚き、思わず口に手を当てた。

箱庭世界に来る前の暮らしは贅沢三昧で、無駄にした食料がどれだけあったか思い出す。

焼かせるだけ焼かせて、崖から捨てるように命令したシカの丸焼き。

もったいないと口走った使用人を、ムチで打って懲らしめたりもした。

「…あ、あれはキャンプで、お父さまがシカを仕留めて下さったから、私の好きなようにする権利がありましたの!」


とっさにいいわけが口を突いて出る。

ローズはこの悪役令嬢時代のクセも直さなければ、と思った。


コリコリコリコリ…

1つのアイディアのもとに彼女はナッツをかじっている。

「もし全部食べてしまえば、埋めるナッツは無くなるわけですから、別のミッションに変わるのではございませんこと?」


2個目の木の実に手を付けようとするが、不安が湧いてきた。

木の実を植えるというミッションは一見すると意図不明だが、今までの流れを考えれば何か理由があるのかもしれない。

「もう少し冷静に考えてみましょう…。

『水を飲む』 『眠る』 『木を切る』 『木の実を食べる』 『穴を掘る』

 …どれも、ここの生活に必要な事柄ばかりですわ」


場所を移動し、集めた木の実が目に入らない方向を向いた。

落ち着いてよくよく考える。

未来の事を予測しながら動かなければならない。

「…この世界に来る前のわたくしは、何をやるにも従者や侍女やお友達がアドバイスしてくださって、それを参考に動いていましたわ。

 でも、ここでは…自分の事はすべて自分でやらなければなりません」


手をグーににぎる。

「それってつまり…失敗の責任を誰かになすりつけつることができなくってよ~!」


ローズの絶叫が空に響く。


頭を抱えた彼女は、苦痛の決断を下した。

「…ひとつだけ、ひとつだけなら許しますわ!」


昨日作ったスコップ(もどき)で穴を掘る。

そこに木の実を入れ、土をかぶせた。


ピロン♪ ミッションクリア 木の実を植える


両手で池から水をすくい、そっと土にかける。


ピロン♪ ミッションクリア 植えた木の実に水をやる


「さよなら、ナッツさん。

 あなたもきっと甘くてジューシーで美味しかったのでしょうね。

 でも、この意味不明なミッションをクリアするために、お別れですわ。

 涙ではなく、笑顔でサヨナラいたしましょう!

 ホホホ…!

 オホホホホッ…!

 オオーーーーーッホッホッホッホッホォ!!!!」


笑顔というより高笑いである。

こうして経験値を得たローズは、高笑いのレベルを2に上げた。

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