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4話 ミッション 穴を掘る

悪役令嬢ローズは慌ててウィンドウを見た。


Lv.3 箱庭世界 

スキル Lv.2 木材加工

    Lv.1 高笑い

ミッション 穴を掘る


「あっ、穴を掘る?!

 なぜわたくしがそんなことをしなければなりませんの!?」


激怒しつつ、たまに肌に当たる雨に不安を感じた。

「おうちのようなものがほしいですわ。

 最悪、傘でも構いませんの」


ローズは葉がたくさんついた木の枝に注目した。

木材加工で切り取り、重さに驚きながらも、なんとか地面に立たせてみる。

「この下にいれば、雨はしのげますわ」


彼女をあざ笑うかのように強い風が吹きつける。

「キャッ!」


枝は飛ばされ、ローズの視点からは下に落ちていったように見えた。

「貴重な資材さんが!」


慌てて追いかけると、少し飛ばされただけで、そのまま地面に落ちていた。

あまりに小さい球状の世界のため、すぐに視界からモノが消えてしまうのだ。

「ホッ…としている場合ではありませんわね」


ローズは木材加工を使い、大きなスコップを作ることを思いついた。

さいわい切り倒したばかりの木がすぐそばにある。

ズバッ、ズバッ、ズバッ、ズバッ…

木材加工のスキルを使い小雨の中、樹皮を剥ぐ。

ズバッ、ズバッ、ズバッ、ズバッ…

樹皮をそぎ落とし、なんとか白いみきにまでたどり着いた。

ズバッ、ズバッ、ズバッ、ズバッ…

三角をイメージしながら集中する。

ズバッ、ズバッ、ズバッ、ズバッ…


――――――――――


「完成しましたわ~!

 さすがわたくしッ!」


その手には、板状の三角形があった。

「あららら~?

 …スコップって、どんなものだったかしら?」


公爵家の令嬢ともなれば、スコップを握ったことが無いのは当然。

庭師は空気、それ以下と見なしていたので、彼ら彼女らの仕事道具など記憶になかった。

「どっ、どどど、どうしましょう…!

 いいえ落ち着きなさいローズ、合っていますわ!

 確かこのように三角形の道具をスコップと呼んでいたはずです…」


強まってきた風の中、地面にザクッと刺すと、確かに土がえぐれた。

「これ!

 これで合っているのですわ!」


しゃがんだまませっせと土を掘った。

雨粒が強風に乗って頬に当たり、痛みを感じる。

寒さこそないが、薄暗い中、地面に膝をつきながら、必死に穴を掘っている自分の姿に、悲しくなった。

「こ、これは…罰なのですわ…。

 前世のわたくしが…やってきたコトに対しての…罰なのですわ、きっと」


いつの間にか涙が流れていた。

悔しさと悲しさが、ぽろぽろと目から落ちる。

手を見ると土で真っ黒になっていた。

「ご、ごめんなさい…」


気弱になった口から謝罪の言葉が出た。

「川にカラフルなベーグルが流れていたら、さぞかし可愛らしいでしょうと思って…お金も余っていたので…みなさんを喜ばせたくて…お金を使うことは上流階級の者の務めですもの」


ローズは座っていた位置を変え、風に背を向けて再び土を掘りだした。

「でも…貧民街の人たちが…ベーグル欲しさに川へ飛び込んで…。

 一緒に見ていたお友達が、さすがローズ様だ、なんと愉快なことを思いつかれる、傑作だ、と…そうおっしゃってくださって…。

 わたくしは…高笑いするしかなくて…」


かなりの深さまで掘れた。

爪の中に砂利が入ってきて痛みを感じたが、あと一歩だと踏ん張る。

ドレスは土でドロドロ、体は雨でびしょぬれだった。

「ごめんなさい…今ならわかります、わたくしは悪役令嬢だったのだと……」


ピロン♪ ミッションクリア 穴を掘る


ローズはハッとして立ち上がり、木の枝を再び切って運んだ。

しゃがんで穴に入り、豊かに葉を付けた枝を雨と風を遮るように置き、飛ばされないようにしっかりと押さえた。

雨が葉を叩く。

「グスッ、グスッ、ウッ…」


彼女が泣き止むころには、雨も上がっていた。

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