表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/63

24話 ミッション スライム討伐-4

筋肉痛で迎える箱庭世界11日目の朝。

いつものルーティンに、池の周りに植えた大量の木の実への水やりも追加された。

そして特訓、特訓、また特訓。

1つの事に初めてじっくりと取り組んだローズは、言葉では言い表せない充足感を得ていた。

この箱庭世界に来る前は1人で何かを練習するという事はなく、常に他人が周りにいて、一挙手一投足ごとに『さすがローズ様!お上手ですわね』『失敗してもめげないお姿、流石ですわ!』などと声をかけられていた。

一見素晴らしい友情に見えるが、何をするにも完全に集中できない状態で、悪く言えば気が散りやすい環境だ。

またローズ本人も、他人のやっている事と自分の進捗を見比べて相違がないかキョロキョロするのに忙しい性格だった。

この箱庭世界では、そういった貴族の子女特有の煩わしさから解放されている。


的からかなり離れたので、ジャベリンを当てる難易度も上がった。

「まだまだ、もう一投、ですわ!」


他人を気にせず、じっくり自分と向き合い、やりたいことに取り組む。

その楽しさを初めて感じていた。

キラキラキラキラ…と効果音が聞こえる。


――――――――――


たっぷりと昼寝をして、体を休めた。

目覚めたローズは、スライムの様子を確認するために魔物の森を見に行き、そこであることに気付いた。

「(的は…動きませんことよ。

 でもスライムはポヨンポヨン跳ねていますわ。

 今わたくしがやっている練習で、あのスライムを狙う事ができるのでしょうか…?)」


とはいえ、動く的を用意することはできない。

「(よくよく考えたらジャベリンが使えるのは最初の一投だけなのですわ。

 相手が気付いたら、近接での戦いになるでしょう。

 スピアの訓練に切り替えませんと)」


拠点に戻って、特訓、特訓、また特訓。


――――――――――


それなりに筋肉痛も回復した、箱庭世界12日目。

かなりの確率で遠くの的にジャベリンを当てられるようになった。

スピアもブンブン振り回せる…とまではいかないものの、移動しながら突いたり引いたりできる程に成長した。

「オホホホホホッ!

 いつの間にか Lv.2 スピア初心者 Lv.2 ジャベリン初心者 になっていますわ」


腕を組んでニヤリと笑うローズには、作戦があった。


昼寝して、起きた後ものんびりとベリーを詰んだり、ブリリアントを撫でたりして時間を過ごし、夕方。

いつもなら就寝に向けて準備をしている時間に、スピアとジャベリンを持ってずんずん歩く悪役令嬢の姿がそこにあった。

「スライムさんは、それほど視力がよくない可能性がありましてよ。

 もちろんわたくしの勘違いかも知れませんが…。

 この薄暗い時間帯に攻撃を仕掛けますわ!」


先制攻撃、相手は視力がそれほどない、という圧倒的に有利な条件で、討伐対象は最弱モンスターのスライム。

「勝てますわ…いえ、勝ちますのよ!!」


魔物の森近くまで来たローズは、敵との間合いをじっくり測る。

何も知らないスライムは、沼の近くでぼよんぼよんと跳ねていた。

深呼吸して、ジャベリンを構え、体をひねる。

「(みなぎる悪意!

 悪役令嬢ローズ・マクダナル、失礼させていただきます…)」


捻った体を一気に戻し、ジャベリンを手放す。

「(…わっ!!!!)」


ヒュウッ


弧をえがいて、ジャベリンがスライムへ向かう。


ザクッ!


見事、まくらぐらいしかない小さなモンスターに木の槍が刺さった。

「流石わたくし!!

 いけますわ~~!!!」


手早くスピアに持ち替え走って近づき、ブヨブヨと震えるスライムに、スピアの先端でプスッと攻撃する。


「ブヨブヨ…ブヨ………」


最後の悪あがきとでもいうように、スライムは溶解液をビュッと飛ばす。

「キャーッ!?!?!?」


運悪く、ローズの太ももからヒザにかかってしまった。

しかし勝負はローズの勝ちだ。

スライムはジャベリンとスピアの攻撃で空いた穴から体液が漏れ出し、みるみるうちにぺしゃんこになっていく。

「た、倒しました…の?」


ピロン♪ ミッションクリア スライム討伐

ピロン♪ アチーブメント 『勝利は我が手に』

ピロン♪ Lv.1 平常心 → Lv.2 平常心


「や、やりましたわ~!

 ホホホ…!

 オホホホホッ…!

 オオーーーーーッホッホッホッ…か、かゆい!!!!

 かゆいのですわっ!!!!」


スライムに溶解液をかけられた肌が赤くなっていた。

握っていたスピアを放り出し、川までダッシュする。

「なんということでしょう…わたくし、防御がダメダメでしてよ!」


川に飛び込み慌てて足を洗う。

幸いにもかゆみはすぐに引き、肌も表面が少し赤くなっただけで、ダメージは無いようだった。

汗をザっと流し、完全に暗くなってしまう前にローズはいつもの草原でブリリアントと合流することができた。

暗い中、喜びの舞いを踊る。


いつも敷いているドレスの上に横になると、勝利の余韻と共に、反省点も浮かんできた。

「わたくし、アンダーパンツとブラジャーしか身に着けておりませんことよ。

 令嬢としてあるまじき異常事態なのです…防具が欲しいと贅沢は言いませんが、何とか服ぐらいは手に入れなければなりませんわ。

 これからどんどん危険なことが増えていきそうですもの…。

 ステースタスオープンなさい!」


世界広しといえど、ステータス画面に命令できるのは悪役令嬢だけである。


Lv.12 箱庭世界

スキル Lv.2 木工職人    Lv.3 高笑い

    Lv.3 土木工事    Lv.3 ガーデニング

    Lv.2 暗闇耐性    Lv.4 石材加工

    Lv.3 観察眼     Lv.2 火起こし

    Lv.1 ダンス     Lv.1 平常心

    Lv.1 アックス初心者 Lv.1 ハンマー初心者

    Lv.2 スピア初心者  Lv.2 ジャベリン初心者


ミッション 貝を焼く

ボーナス ブループリント:貝の砂抜きの手順

特別イベント 隕石の落下


マテリアル一覧

ナッツの木 切り株 ナッツ 枝 葉

淡水 海水 

草 ロープ草 ジャガイモ ゲーミンググラス

粘土 土 砂 砂利 小石 大石 洞窟

ファーリザード

オオバの木 ヨシアシ 亜麻

ベリーの木 リンゴの木

スポット2枚貝 ストライプ巻貝

魔物の森の木 魔物の森の沼 魔物の森の草(パープル/イエロー)

スライム スライムの皮 スライムの体液


「貝?

 いつの間にか貝が箱庭世界に誕生したのですわね。

 焼くだけだなんて、簡単なミッションですこと!」


マテリアル一覧をよく見る。

「…ジャガイモ?

 じゃがいもって、あのポテトの、ジャガイモかしら…?

 オホホ!

 完全に見逃しておりましたわ~!」


実は8話目からある。

ナーロッパに異世界転生してきた主人公が初めに植えることで有名なジャガイモだが、ローズが暮らしていたナーロッパは普通にジャガイモが存在していた。

「ああ、それにしても…今日という日は、最高の一日でしたの!」


ステータス画面に表示されたアチーブメント『勝利は我が手に』をじっくり眺める。

そして自分の右手のひらをゆっくりと触った。

指の付け根の皮膚が固くなっている。

「ジャベリンやスピアをたくさん握りましたので、手が鍛えられたのでしょうか…勝利は我が『手』に…ムニャムニャ……」


何の心配もなく、ぐっすり眠れたことは言うまでもない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ