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23話 ミッション スライム討伐-3

木材は、使える部分が残りわずかになっていた。

しかしローズの表情は明るい。

「植樹した木の成長度合からして、そろそろ切り倒せそうなのですわ。

 この木材は使い切ってしまっても大丈夫でしょう。

 スピアとジャベリン作り、頑張りますわ~!」


最初にスピアを彫り出す。

2メートル25センチ程の標準的なスピアができた。

さっそく手に持ってみる。


ずっ…しり…


「…いや重たすぎますわ~!?!?!?

 令嬢の持つものではありませんでしてよ!!!」


持ち上げるのがやっとの謎武器が完成してしまった。


ピロン♪ Lv.1 スピア初心者


「もうちょっと…軽量化の必要がありますわね」


慎重に細く削っていく。

なんとか、とりあえず左右にゆっくり振れるぐらいの重さになった。

「ふーっ、次はジャベリンですわね。

 先にスピアを作ったことで知見を得られましたわ。

 ジャベリンは投げるものですから、短めに、細く作りましょう」


木を横にスライスし、カットして角材に加工する。

一本一本、握る部分を丸くし、先端を鉛筆削りで削ったように鋭く加工すればジャベリンの完成だ。

今度は90センチメートル程の長さに抑え、重さも無理なく持ち上げられるぐらいに作った。

「とりあえず5本ほど作ってみましたわ。

 さっそく投げてみましょう」


石と砂のゾーンにちょうどスライムと同じぐらいの大きさの石があったので、的にすることにした。

万が一にも投げた槍が刺さらないよう、ブリリアントの位置を確認し、何もない草地に的の石を置く。

「それでは、失礼させていただきます…」


ジャベリンを握った右手を掲げ、近くに置いた的に向かって投げおろす。

「…わっ!」


ザクッと音を立てて、地面に刺さった。


『刺さる』こと。

これが投石とは違う、投げ槍の殺傷能力である。

相手にぶつかるだけの石とは違い、槍は刺さることでより大きなダメージを肉体に与え、さらに出血をもたらす。

シャベリンが刺さった狩りの対象が逃げたとしても、そこからネチネチと長距離を追いかけ、疲労で弱ったところを狙えるので、狩りの成功率は高くなっただろう。


ピロン♪ Lv.1 ジャベリン初心者


「これ、イケますわー!!

 的に当たる様になりましたら、少し離れて。

 また的に当たる様になりましたら、少し離れて、を繰り返しましょう。

 いざ、特訓ですわ!」


――――――――――


みなさんはジャベリンの投てき練習をしている悪役令嬢の顔が、どれほど輝いているか知っているだろうか。

キラキラキラキラ…と音が聞こえてきそうなぐらい、ローズは充実した時間を過ごしていた。

ジャベリンは簡単に折れてしまうので、投げて、使えるモノは回収して、残りの木材を利用してジャベリンを量産し、また投げる。

製作と練習に夢中になっている間に日が傾き、彼女の全身は汗で輝いていた。

「ふぅ…今日はここまでといたしましょう」


折れて地面に打ち捨てられているジャベリンをそのままにし、水浴びするため川へ向かう。

汗を流水で流しつつ、川の水をグビグビ飲んだ。

川から上がると、またそ~っと魔物の森を遠くから観察しに行く。

ありがたいことに、スライムは沼地の周りで跳ねていた。

朝の間違いを繰り返さないよう、今度こそそろーっと後ろに下がり、拠点まで戻る。

カロリーを大量に消費しておなかが減ったので、追加で木の実をコリコリ食べた。

「ブリリアントさん、今晩は普通に眠ることにいたしましょう。

 あのスライムがこちらへ攻めてくることは無さそうですわ」

「キャウ」


ブリリアントはローズに擦り寄り、ローズもブリリアントを撫でた。

大の字になって、リラックスして眠る。


――――――――――


朝から叫び声が箱庭世界にこだまする。

「キャーッ!

 体中が痛いですわ~!!」


筋肉痛のローズはそれでもなんとかルーティンをこなし、よろよろとした動きで洞窟の壁に10日目の傷を刻む。

「植樹した木さん、もう最初に切り倒した木と同じぐらいの太さなのですわ」


切り株に巻き付けたままにしていたドレスのリボンをほどき、幹の太さを比べてみると、2本の木は全く同じ太さだった。

「なるほど、植えて7日目でこの太さになるのですわね」


木工職人のスキルを使い、箱庭世界で2本目の木を切り倒す。

今度は一方向から切りつけるのではなく、まず切り倒したい方と逆側の幹を5分の1ほど傷つけ、それから切り倒すようにした。

大きな幹がキレイにズシーーーンと倒れる。

枝についている木の実を、痛む右手ではなく左手で収穫して、数える。

「34個ありましたわ。

 最初に収穫したナッツさんも、このぐらいの個数だったと思うのですが…うろ覚えですわ!

 オホホッ!!」


後から植樹した木が2本もあるので、食料に困ることは無さそうだ。

「そうですわ、最初に収穫した木の実さんをすべて植えてしまいましょう!

 この世界での木材は生命線なのです。

 あともっと立派なお家を作って、テーブルやイスも作りたいのですわ…ベッドに…チェストに…」


頭の片隅で妄想しつつ、水やりの効率を考え全て池の周りに植える。

スコップで穴を掘り、木の実を入れ、土をかけ、水をやるという手順を丁寧に守った。


ピロン♪ Lv.2 → Lv.3 ガーデニング


伐採したばかりの木から追加のジャベリン大量に削り出し、もうこれ以上動けないというように横になる。

「昨日のように、お昼寝タイムをとりましょう…。

 ブリリアントさん…何かあったら起こしてくださいませ…ふぁあ…」

青空を眺め、両手を腹の上で組み、すやっと眠った。


――――――――――


休息から目覚めると筋肉痛もある程度回復しており、全身にパワーがみなぎっているのを感じた。

「…練習しましょう!!!」


モンスター討伐に燃える令嬢はジャベリンをがっしと握る。

昨日の練習で、近い場所なら狙えばほぼ確実に槍を当てられるようになっていた。

今日はいよいよ中距離からの練習だ。

「失礼させていただきます…」


ジャベリンを持った右手を後ろに引き絞り、左半身を前に向ける。

腰を回して一気にジャベリンを投げる。

「…わっ!!!!」


ジャベリンは投射角35°でローズの手から離れ、放物線をえがき、的の近くの地面に刺さる。

「惜しいですわ~!

 もっと殺気を込めませんと…」


物騒である。

こうして、特訓2日目もあっという間に過ぎていった。

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