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22話 ミッション スライム討伐-2

誤字報告サンキューです!助かります(TuT)

ローズはふらつきながら、ブリリアントに朝の挨拶をして、いつものルーティンをこなした。

水を飲み、ブリリアントの皿に水を入れ、植樹に水をやり、木の実を食べ、洞窟の壁に9日目の傷を刻む。


自分の体調の悪さを認識している。

「…このまま戦ったら危険な気がしますわ」


決戦前にもう一度、遠くからスライムを観察してみることにした。


魔物の森に行くと、ぼよんぼよんと朝から元気にスライムが跳ねている。

「(幸運なことに、あの沼地から移動しておりませんことよ)」


ウィンドウを開き、マテリアル一覧に追加されたものを確認する。


マテリアル一覧

ナッツの木 切り株 ナッツ 枝 葉

淡水 海水 

草 ロープ草 ジャガイモ ゲーミンググラス

粘土 土 砂 砂利 小石 大石 洞窟

ファーリザード

オオバの木 ヨシアシ

ベリーの木 リンゴの木

スポット2枚貝 ストライプ巻貝

魔物の森の木 魔物の森の沼 魔物の森の草(パープル/イエロー)

スライム


「(どうやら、この場所は『魔物の森』というゾーンのようですわね)」


観察する限り、スライムの行動範囲は沼地周辺のみのようだった。

「(わたくし達が生活している草原側に移動して来ることは無さそうでしてよ。

  ちょっとだけ眠って、体調を整えてからミッションに臨むことにしましょう…)」


前日と同じように、モンスターを刺激しないようにそろーっと後ろに下がる…つもりだったが、寝不足と疲労のせいか、盛大に転んでしまった。


「キャーッ!」

「!!」


ローズの叫び声に気付いたスライムはぼよんぼよんとジャンプして、彼女に近づいてきた。

「しまった、ですわ!」


立ち上がり、よろよろと逃げようとするが、動揺してしまって上手く動けない。

「あわわわ…」


スライムからの体当たりを足元に食らう。


ぼよん!


「キャッ!」


再び転んでしまう。

スライムはローズを踏みつけようとジャンプしたが、ローズは態勢を横にしたまま、ごろごろっと転がって回避した。

「くっ…」


慌てて立ち上がるが、すかさずスライムが体当たりしてきた。

彼女は怒りと共に反撃をこころみる。

「このっ!

 ですわっ!」


げしっ!


靴で蹴るとスライムは一瞬(ひる)んだ。

ローズはブリリアントがいる場所とは反対方向へ駆けだした。

「ハァ、ハァ!」


ある程度ダッシュして振り返ると、スライムは追って来ていなかった。

睡眠不足では走るのもつらく、すぐに息が切れてしまう。

「ふぅ、ふぅ、ハァ…!

 い、意外とお強いじゃありませんこと、スライムさん。

 いいですわ、このローズ・マクダナルが退治する最初のモンスターとして不足無し、ですわっ!」


はぁはぁと息を荒げたまま、大きくなった箱庭世界を一周し、拠点にしている草原エリアまで戻ってきた。

昨日作った木と葉の家が見える。

近くで草をんでいたブリリアントに

「スライムという危険なモンスターがいますから、遠くへ行ってはいけませんわよ」


と注意をし、家の中へ入り、そして…ふらつくように倒れ、そのままぐっすり昼寝をした。


――――――――――


たっぷり充電できたローズは、昨日の夜自作したアックスとハンマーを両手に持ち、イメージトレーニングをする。

朝に戦ったので具体的な大きさ、強さは理解できた。

スライムのイメージ相手に、アックスとハンマーを振り回す。


ぶん、ぶん、ぶんっ!


かなり前かがみでヒザを折りながら動くため、やりづらい。

「うーん、もしかして、ハンドアックスとハンマーは、小さい相手に向かないのかもしれませんわ…」


もう一つ問題があった。

イメージトレーニングしてみると、何度か自分の足やすねにウッカリ武器を振り下ろしてしまいそうになったのだ。

「アックスとハンマーは、かなり扱いが難しい武器なのかもしれませんわね」


我々が暮らす世界でも、薪割まきわり中に振り下ろした斧で自分のすねを砕いたり、畑を耕すために振り下ろしたくわすきで足先を欠損する程傷つけてしまう事故が結構ある。

『振り下ろす』動作がある道具は、すべて自分の体を傷つける可能性があるのだ。

短剣などではより危険性が上がる。

「そして、接近しないと戦えない武器は不利ですわ。

 スライムさんったら、すぐに体当たりをかましてくるんですもの。

 足元に体当たりされてバランスを崩せば、朝のようにピンチになってしまいますわ」


腕組みをして、ローズは考える。

「この世界でも魔法が使えたら…。

 いえ、弱音を吐くなんて、わたしらしくない」


じっくり考える。

「残念ですが、他の武器を考えましょう。

 騎士たちが持っていた武器といえば、ボウ、弓…は難しいですわ、弦になりそうな素材もありませんし。 

 ソード、木剣なら作れますわ。

 一度作ったことがありますもの、ソードは相手との距離を取りながら攻撃できる、良い武器に思えますわ…相手との距離…ハッ、そうです!

 スピア…スピアを作りましょう!」


盾を作ろうとしない攻撃的な性格はさておき、スピアは名案だった。

人類が意図して作った武器の中でも最古参のスピア、やりは、無駄な枝葉を落とした木の枝の先端をとがらせるだけで作れる、簡単な武器だ。

しかも、相手との間合いを取ることに優れ、人間相手でも野生生物相手でもモンスター相手でも、そのリーチを十分に発揮すれば有利に戦う事ができる。

さらに…

「的に向かって…スピア…ああ、投げる槍はジャベリンと言いましたかしら?

 ジャベリンを投げる訓練をしている騎士を見たことがありますわ。

 そうです、遠くから投げて先制攻撃をしましょう。

 外したら、手で持つスピアに切り替えて戦えばよいのです。

 手に武器を持って立ち向かうより、まず遠くから武器を投げたほうが、安全じゃありませんこと?」


手で持つスピアと同じか、もっと古代に発明されただろうジャベリン。

こん棒よりも多くの命を奪ってきただろうその武器は殺傷能力に優れ、現在でもアフリカの狩猟採集民は投げ槍で野生動物を仕留めている。

二足歩行に進化して自由に使えるようになった肩、腕、手の能力を十分に発揮できる、最古にして最強の攻撃手段、それが『投てき』だ。

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