20話 ミッション …は置いといて、家を作る-5
ブリリアントを両手でぎゅっと抱きしめ、気持ちを落ち着かせたローズは、あらためて倒れた『家』を見た。
すぐ近くに、この箱庭世界に来て2日目に掘った『穴』がある。
「あの日は、雨と風が強かったのですわ。
ミッションに従って穴を掘り、そこに入って、木の枝で何とか雨風をしのぎましたの…」
「キャウ」
彼女が掘った『穴』は、もっとも原始的な避難場所、シェルターである。
地面か雪の中に掘られた穴で、一時的に雨風雪、低温から身を守り、体力の消耗を防ぐための工夫だ。
「穴…地面に穴…。
ハッ!」
悪役令嬢ローズ・マクダナルは、ブリリアントをそっと地面に降ろし、再びスコップを握った。
「穴を掘って、木の柱を埋めれば、風に耐えられる頑丈なお家になりませんこと?」
Lv.2 土木工事のスキルを使い、サクサクと穴を3(みっ)つ掘る。
そこに3本の柱の立て、穴を埋めて、靴でぎゅっぎゅっと踏み固めた。
さらに外側から、壁の役割を果たしている大きな葉の、地面に接している部分に土をかける。
出入口だけ残して、重しのように土をぐるっとかけた。
ピロン♪ Lv.2 土木工事 → Lv.3 土木工事
「完成しましたわ!
これで風に負けないお家になりましたことよ!
オホホ!!!」
柱が地面に埋まり、これはもうテントとは呼べないだろう。
そう、これはもはや建物。
いわゆる『平地建物』と呼べる、りっぱな家だろう。
「ああ、中に入ると日陰になっていて、涼しいですわ~!」
疲れていたローズは、そのままウトウトと眠ってしまった。
数日ぶりに家と認識できるものに囲まれながら、ぐっすりと安心して眠った。
――――――――――
「あらっ、わたくし、いつの間にか眠っておりましたの…」
数時間寝て、気分がスッキリとしている。
頭も回るので、今なら粘土を探せそうだと思いステータスをオープンさせた。
Lv.10 箱庭世界
スキル Lv.2 木工職人 Lv.3 高笑い
Lv.3 土木工事 Lv.2 ガーデニング
Lv.2 暗闇耐性 Lv.4 石材加工
Lv.3 観察眼 Lv.2 火起こし
Lv.1 ダンス
「この『観察眼』というスキルは役立ちそうですわ。
このスキルを発動させたまま、もう一度箱庭世界をぐるっと回ってみましょう」
ローズは粘土を探して歩いた。
その途中でベリーの低木が生えているゾーンに来たので、数粒ベリーをもいで食べた。
すぐ近くに生えているリンゴの木もついでに見る。
昨日より一回り大きくなった果実を見て安心した。
「た、食べ物の事ばかりではいけませんわ!
粘土、粘土…あらっ?」
川が赤く光り『粘土』と書かれた文字が浮かんでいる。
「思った通り、役に立ちますわね、観察眼のスキル♪」
ウキウキで川に近づくと、どうやら水中に粘土があるようだった。
手を伸ばし、川底をひっかいてみると、柔らかい灰色の土が採れた。
土といっても粒子がきめ細かく、粘り気があり、まさにねんどという感じだ。
ピロン♪ ミッションクリア 粘土を探す
「ホホホ…!
オホホホホッ…!
オオーーーーーッホッホッホッホッホォ!!!!」
粘土で汚れた手でも、しっかりと小指を立てて顔の横に添え、悪役令嬢高笑いを披露するローズ。
地面が揺れ、世界が広がった。
「どんなミッションでもどんと来いですわ~!
今のわたくしに敵はありませんことよ!!」
ミッション スライム討伐
敵が来てしまった。




