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14話 ミッション 煮た肉を食べる 粘土を探す

「悪役令嬢たるもの、常に先を見据えた行動をとらねばなりません。

 …他のご令嬢に嫌がらせするための能力ですけれども…。 

 と、とにかく、先回り!

 これぞ悪役令嬢の美学ですわっ!」


ミッションに表示された『煮た肉を食べる』を見て、ローズはオオーーッホッホッホッホォ!!!と高笑いした。

予想の的中ほど嬉しいことはない。

あまりの喜びに、少しだけ踊ってしまった。

踊っている間に程よく冷めた肉を石鍋から取り出し、ほんの少しだけかじる。


ピロン♪ ミッションクリア 煮た肉を食べる


「…この茹でただけのお肉、茹でただけのお肉の味がいたしますわ」


お世辞にも、美味しいとは言えない。

公爵家が抱えるシェフ達の料理と比べると天地の差だ。

こんなことになるなら、気まぐれに料理を床に叩き落としたりなんかせず、もっと味わって食べておくべきだったと後悔する。

何もかもが遅い、が、贅沢が空気のように当たり前のものだと思っていた彼女が、箱庭世界に来る前に気付くことは不可能だっただろう。

「美味しいとか、美味しくないとかではなく…ありがたいですわ。

 お肉が食べられることが、ありがたいのですわ」


自分の指につままれた小さな肉団子のモチモチとした食感を、よく咀嚼そしゃくして食べる。

「ハッ!

 わたくし1人で食べてしまうところでしたの。

 ブリリアントさんにも半分わけて差し上げないと」


立ち上がり、ピンク色のトカゲを探す。

遠くにいとしい友達の姿があった。

「ブリリアントさ~ん!

 お肉を召し上がりませんこと~?」

 

小走りで近づく。

「…あらっ?」


違和感を感じダッシュで駆け寄ってみると、ぺしゃっとしたピンク色の毛皮が落ちていた。

そのすぐそばに、もう一体のファーリザードがいて、草をんでいる。

「…えっ?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!」


肉団子を放り出し、地面に落ちているそれを手に取る。

本体と同じぐらいの大きさだが、抜け殻のようだ。

「これは一体、なんですの?!」


記憶を辿たどる。

学校で受けた、生物の授業。

確か、トカゲやヘビなどは、大きくなる時に脱皮という方法をとるらしい。

「じゃあ、あなたは新生ブリリアントさん?

 これは脱皮した後の皮ですの?」

「キャウ」


ブリリアントはいつものように可愛らしく鳴いた。

脱皮した毛皮を触ってみると、フカフカで気持ちがいい。

ドロドロに汚れて脱ぎ捨てた後、シーツ代わりに地面に敷いているドレスを思い出した。

この毛皮をたくさん集めれば、よりフカフカの寝床を作ったり、ドレスの代わりの服を作れるかもしれない。

「ブリリアントさんが必要ないとおっしゃるのなら、わたくしが買い取らせていただきますわ!

 言い値で結構でしてよ、おいくら?」


無論、彼女は一文無しである。

転生前に身に着けていたはずの金属や宝石で出来た装飾品も消えてしまった。

「…オホホ!

 そうでしたわね、この世界には価値のある貴金属やお金が存在しないのですわ。

 というわけで…無料で頂いてもよろしくて?

 お返しはもちろん、そのうちいたしますわ!」


キャウと鳴いたのを了承の言葉と勝手に見なし、持っていく。

と言っても保管する場所もないので、とりあえず切り株の場所に置いた。

「家のようなものがほしいですわ。

 この毛皮や、ナッツをしまっておける場所が必要ですもの…」


モノの保管で悩む日が来ようとは、と腕を組んだ。

服やアクセサリーはもちろん、学校で使う学習道具ですら侍女に管理させていた彼女にとって、モノを取り扱うこと、それ自体が一つの困難だった。

「動物なら、採集、捕獲したものを、その場で食べて終わりなのですわ。

 でも、アリさんやハチさんや、リスさんや鳥さんは、木の実などの食べ物をちゃーんと貯蔵しておくらしいじゃありませんこと。

 それって…賢いですわ!」


人間はいつからか、明日の事を考えて行動できるようになった。

未来を予想する能力は、生きるために有利な資質だ。

死へのリスクも低下する。

よりよい生活を目指せる。

「雨、風、おひさまを防げる所といいましたら…」


ローズは木工職人のスキルを使用して薪を作った。

以前作った、水漏れして使えない石のボウルに木の実を入れ、薪と毛皮を持って洞窟へ向かう。

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