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12話 ミッション 火を起こす 肉を石鍋で煮る

夕暮れの中。

小高い丘の上で、ローズはステータスオープンですわ!していた。


Lv.9 箱庭世界

スキル Lv.1 木工職人    Lv.3 高笑い

    Lv.1 土木工事    Lv.2 ガーデニング

    Lv.1 暗闇耐性    Lv.3 石材加工

    Lv.2 観察眼     Lv.1 火起こし

    Lv.1 ダンス


ミッション 火を起こす 肉を石鍋で煮る

ボーナス 靴


「『ボーナス 靴』ですって!?

 まぁ嬉しい!

 今、一番欲しいものが靴なのですわ~!!」


ウキウキで黄色く光るボーナスの項目をタッチする。

すると、ぼわっと目の前に何かがあらわれた。

「…え?」


その見た目に、思わず一歩いっぽあとずさる。

いかにもごわごわしていそうな茶色やクリーム色の毛皮が合わさった、めちゃくちゃな外見。

「これはゴミ????

 ゴミですの????」


手に取ってよく観察してみると、革と革が太い糸のようなもので、ぶっきらぼうにわれている。

形だけ見ると、足首辺りまでしっかりと保護してくれそうな靴…のようにも見えた。

「わ、わたくし、ヒールのついたテカテカと光る靴しか履きませんことよ!」


実際、ローズは自分の足で歩きだした頃から、フェルトでできた上質な靴を履き、3歳を過ぎてからは可愛らしいピカピカの靴しか履いたことがなかった。

「ゴミにしか見えませんわ…嘘だとおっしゃってください…こんな、こんな原始的な、革をテキトーに縫い合わせただけのものが…靴だなんて!!!!」


原始的な、と自分で口にして、はたと気付く。

ほぼ裸で過ごし、眠るのは草原、雨風をしのぐのは明かりのない洞穴、食べ物は木の実、飲み水は地面にあるものを手ですくって飲んでいる…。

「ホホ…オホホホホ!

 確かに、今のわたくしの文明尺度に相応しい靴かもしれませんわね!」


急に恥ずかしくなって高笑いしてしまった。

おっほん、と気を取り直し、おそおそる足を入れてみる。

「…まっ!

 ピッタリですわ、それに思ったより…ええ、思ったより…」


歩き回り、履き心地を確認する。

「思ったより、悪くないですわね!

 今は足の安全を確保することが最優先ですし、デザインもよく見ると野性味にあふれていて、なかなかにワイルドですわ♪」


オホホホホホッ、と高笑いを決め、小高い丘を降りた。

木くずが散らばる場所も、欠けた石が散らばる砂の上も、これで足裏を気にすることなく歩ける。


切り倒した木のそばまで来ると、手ごろな枝を一本選び、火起こしのスキルを使ってみた。

すぐに火が付き松明のように明るく燃えると予想していたが、見つめた場所が赤くチリチリと光るだけで、思ったように火がつかない。

「暗くない夜を過ごせると思ったのですが…残念ですわ~!」


上手くいくことがあれば、上手くいかないこともある。

ローズは池で水を飲んでいたブリリアントに、お休みの時間ですわよ、と声をかける。

すっかりシーツと化したドレスの上に寝転んだ。

4本足でとことこ歩いてきたブリリアントが、ローズの隣にくっついた。


まどろみの中。

なぜ、木の枝に火が付かなかったのだろうと考える。

そして、以前の自分は『なぜ?』と考えたことがあまりなかったな、と考える。

そのまま眠りに落ちた。


――――――――――


朝日を浴びて、ローズは池から水を飲む…その前に、コップを作ろうと試行錯誤していた。

木から円柱をえぐる。

その円柱の中を、一回り小さくえぐる。

すると…

「できましたわっ!

 令嬢たるもの、手から水を飲んでいただなんて恥ずかしい限り。

 これからは、お上品にコップから飲むことといたします。

 …水を手から飲んでいたところを誰にも見られていませんわよね?」


キョロキョロと辺りを見回し、本当に人がいないか再確認する。

そしてもう一つ、何かを削り出しはじめた。

「まず、大きさを決めるために外から削っても、大丈夫。

 中に入る量を決めるために内から削っても、大丈夫。

 同じように作れると分かりましたわ♪」


皿のように浅いうつわが完成した。

「ブリリアントさん、ついてきてくださいまし。

 一緒にお水を飲みましょう♪」

「キャゥ!」


ローズは皿を地面に置き、コップを使って池から皿へ水を移した。

「昨日、薄暗い中、池の水を飲んでいるブリリアントさんを見て、万が一池に落ちてしまったら大変と思ったのですわ」

「キャゥ」

「このお皿から飲むようにすれば、その心配もありませんわね」


皿から水を飲むブリリアントを見て満足し、自分もコップで水を飲む。

やはり手から飲むより何倍も飲みやすい。

木の実もコリコリ食べて、準備万端だ。


――――――――――


「ナッツさんを植えて3日目ですが…あら、まぁ…!」


木の高さはローズの身長の2倍に成長し、みきの太さもがっしりとしてきた。

まだ木の実はなっていないが、それにしても異常な成長スピードだ。

木のボウルを使い、植えて1日目の新芽と、3日目の木に水をあげた。


そしてミッション『火を起こす』に再チャレンジだ。

あらためて、昨日火が付かなかった枝に、スキル『Lv.1 火起こし』を使ってみる。

茶色い木の皮の一部が赤くなる。

が…

「うーん、火が付きませんわ。

 お父さまとキャンプしたときは、いろんな枝を火にぽんぽん放り込んで、それを燃やしていましたのに…。

 今はスキルレベルが低すぎて、上手く火をつけられないのでしょうか?

 困りましたわ…」


木の種類にもよるが、たいていの木は樹皮が固く火が付きにくい。

細い枝でもきちんと薄い樹皮に覆われているため、マッチ程度の小さな火ではなかなか燃えないのだ。


困って枝から目を離すと、自分が木材加工と木工職人のスキルを使ったときに出た、大量の木くずが目に入った。

「…これになら、火がつくかもしれませんわ♪」


落としたにもさわってみるが、こちらはまだ水分を感じる。

「やってみましょう!」


何も考えず、木くずの山のそばにより、しゃがんでレベル1の火起こしを使う。

するとすぐに白い煙が上がり、赤く熱された周囲に黒い輪が広がってくる。

「いけますわ~!

 木くずだと火が付きやすいのですわね!」


ボッ

ピロン♪ ミッションクリア 火を起こす


「素晴らしい!

 この箱庭世界に生まれた、初めての火ですわ~!」


木くずは面白いように燃える。

「あとは、ここに石鍋を持ってきて、水は木のボウルかコップでんで…」


ボウボウ…


「あらっ?

 ちょ、ちょっ、ちょっと、ちょっと待ってくださいまし…」


ボウボウボウボウ…

木くずから木くずへ燃え広がり、大きな火になっている。

周囲に適当に置かれた枝や、丸太本体に乗っている木くずも燃え出した。

「えっ?

 あらっ…そ、そんな、これって…」


ボウボウボウボウボウボウボウボウ…

火事である。

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