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11話 ミッション 石鍋を作る-3

箱庭世界 11話 ミッション 石鍋を作る-3


こうなればトライ アンド エラーしかない!という強い気持ちで、ローズは石鍋づくりに励んでいた。

「この石さんは表面がしっとりしていて、細かい穴もいておりませんわ」


カツッ、カツッ、カツッ、カツッ、カツッ、カツッ…

Lv.3になった石材加工で、浅いくぼみを彫っていく。

「慎重に進めましょう」


カツッ、カツッ、カツッ、カツッ、カツッ、カツッ…

くぼみができたら、厚みを残して周りの石と切り離せるように掘っていく。

カツッ、カツッ、カツッ、カツッ、カツッ、カツッ…

カツッ、カツッ、カツッ、カツッ、カツッ、カツッ…

カツッ、カツッ、カツッ、カツッ、カツッ、カツッ…

「ううっ、思ったよりも重労働ですわ…」


休憩を挟みつつ、作業を再開させる。

今の彼女を邪魔するものは何もない。

やる気が真っすぐ石へと向かう。

カツッ、カツッ、カツッ、カツッ、カツッ、カツッ…

カツッ、カツッ、カツッ、カツッ、カツッ、カツッ…

カツッ、カツッ、カツッ、カツッ、カツッ、カツッ…


ガコッ


「か、完成ですわ~!」


ローズは両手で石鍋を持ち上げる。

「!?!?っ!?

 お、おっっもい、重いのですわ~!」


小ぶりに作ったつもりだったが、見た目に反してなかなかのの重量だ。

両腕に力を入れて、よいしょっと持ち上げた。

ずっしりとした石鍋を、大事に腕でかかえて持つ。

間違っても落として割ることがないように、慎重に池まで歩く。


池の水が空気を察したかのように静まり返る。

「ドキドキの瞬間ですわ」


石鍋を、水にゆっくり沈め…。

「お、お待ちくださいまし~~~!!!

 もしウッカリここで手を滑らせてしまえば、こんな重いモノ、池さんの底へ一直線ですわ!」


危機回避能力が上がっていたローズは、池の脇に石鍋を置き、植樹の方へダッシュした。

ヒューン!

戻ってきた彼女の手には、木への水やりに使った木鍋がある。

「これを使ってお水を汲みましょう」


ちゃぷ…とぽとぽとぽ…。

木鍋ですくった水を、石鍋に移し替えていく。

「お水は漏れて…いま…せんわぁ!」


ピロン♪ ミッションクリア 石鍋を作る


「ホホホ…!

 オホホホホッ…!

 オオーーーーーッホッホッホッホッホォ!!!!」


高笑いだけでは足りなかったのか、ローズは自身の喜びを表現するために、ヒラヒラと舞い始めた。

どこからか駆けつけたブリリアントも、前足と後ろ足を互い違いにサッ、サッ、と上げ、喜びのダンスを披露する。


ピロン♪ Lv.1 ダンス


石鍋といえば、日本では長崎県のホゲット石鍋製作遺跡が有名だ。

原始時代には世界中で石が煮炊きのための調理器具として扱われていたほか、木、木の樹皮、竹筒、大きな木の実の殻、貝殻、大きな葉、土の地面を掘って水を入れた穴など、ありとあらゆる身の周りの素材が煮炊きの道具として活用されてきた。

土器の発明、伝来がなかった時代・場所でも、人類は頑張って煮炊きをしてきたのだ。

「ホホホ…ホ!

 もう今日のミッション進行はここまでとさせていただきましょう。

 わたくしには休息が必要ですわ♪」


自分へのご褒美で、本日2個目のナッツに手を付ける。

ポリポリとかじりながら、レベル9になった箱庭世界を探索した。

「最初は球であることがハッキリと感じられましたが、今では平らな地面と言えるぐらいにまで広がりましたわね…あらっ!」


小高い丘ができている。

新しく追加された場所に違いない。

丘を登ってみると、頂上に小さな池があった。

「こ、これは、最高に嬉しいですの!!!」


ローズはナッツを放り出し、ちゃぷ、と足の先端をその水に入れた。

「飲み水を汚すわけにはいきませんので、今までは水浴びもできませんでしたことよ!

 でもこれで、こっちの池さんを入浴用、あちらの池さんを飲料水用と分けられるのですわ…」


久々の水浴び。

ゆっくりと体を水にひたす。

「き、きもちいいですわ…!」


5日間風呂に入っていなくても死ぬわけではない。

ローズが転生前の世界でも、貧乏な暮らしをしている人間はひと月に1回も水浴びをしないことがあった。

特に冬期間は凍死の可能性があるので、年の半分の5~6か月は、そもそも水浴びをするという選択肢すらなかったのだ。


しかし彼女は高貴な身分だ。

使用人に湯を用意させ、最低でも日に1回、あるいは気まぐれに2回、3回と入浴していたので、この5日間は本当につらかったのだ。

「水に入るだけで、こんなに気持ちがいいだなんて…」


暮れていく空。

ローズはチャプッ、と頭まで水に浸かった。

自慢の縦ロールを作る魔法アイロンコテはこの世界にはない。

緩くなってしまった巻き髪を見て、いつかはそれを取り戻しますわ、と紫の空に誓った。

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