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10話 ミッション 石鍋を作る-2

ひとやすみして落ち着いたローズは何かに気付く。

「あらっ?

 昨日芽を出したばかりのナッツさんが、もうこんなに大きくなってらっしゃいますわ~!」


なんとローズの身長ほどに木が伸びていた。

「…いくら何でも、スピードが速すぎませんこと?

 植えて2日目ですわよ?」


さすがに気付く。

「でも、これって喜ばしい事ですわ。

 この調子でぐんぐんと成長してくださるのなら、次の木材はすぐに手に入り…まっ!

 わたくし、思いつきました!

 もっとナッツさんをお植えした方がよろしくって?」


木材と、木の実の安定供給のため、ローズはスコップ(もどき)を用意し、まだ口を付けていない木の実2個を土に植えた。

「ナッツさんにお水をあげなければいけませんわ。

 でも…世界が大きくなったせいで、ずいぶん池さんから遠くなってしまいましたの」


両手で水をすくって何往復もするのは、さすがに大変すぎる。

「石鍋…そうですわ!

 石でお鍋はまだ作れませんが、木で鍋を作るのは簡単そうです!」


さっそく木にくぼみを彫る。

ガッガッ、ガッガッと少しずつ削り、球を半分に切ったような穴があいた。

「いいかんじですわ。

 厚さを残しながら、同じように外側を彫りましょう」


すこし勿体もったいないが、ボウルを彫り出すように、周囲の木を取り除いていく。

ガッガッ、ガッガッ、ガッガッ、ガッガッ…


2時間ほど集中して作業を続ける。

ガコッ、と音がした。

ローズはボウル型の木鍋を、木の幹から取り外す。

「上出来ですわー!

 穴もあいておりませんことよ!」


ピロン♪ Lv.4 木材加工→ Lv.5 木材加工

クラスアップ Lv.1 木工職人


「あらっ嬉しい、木材加工がレベル5に…って、またレベル1に逆戻りですの!?

 どうして…?」


腕の中の木鍋を見る。

「最初は木を切り倒すのも一苦労でしたが、今ではこんなに細かく木を彫ったり削ったりできるようになりましたのに、またレベル1から?

 ステータスウィンドウさんは何もお分かりになってらっしゃらないのね!」


プイ!とウィンドウに背を向けた。

「ごめんあそばせ!」


当初の計画を思い出し、池まで移動して水をむ。

木鍋に入っているのは、両手ですくうのとは比べ物にならないほどの大量の水だ。

ローズは歩くたびトプトプと左右に揺れる水を、こぼしながらも、なんとか運んだ。

「お水さんって、こんなに運ぶのが大変でしたのね。

 そういえば、わたくしお水さんを運ぶのも初めてですわ…。

 なにも自分でやったことがなかったのですわね」

一歩一歩、慎重に歩く姿は幼児のようだ。


パシャッ、パシャッ、と、成長した木の根元、植えたばかりの木の実に水をかける。


ピロン♪ Lv.1 ガーデニング → Lv.2 ガーデニング


「いい感じですわ!

 さて、そろそろミッションの石鍋づくりを再開しませんと」


ブリリアントは少し離れたところで草をんでいた。

彼女はここでの唯一の友達を撫でながら、朝見ていた転生前の夢を思い出す。

「お父さまと一緒にキャンプへ行った思い出も、今は懐かしいですわ。

 あの頃は使用人もたくさんいましたのに…」


昔の環境を懐かしんでも、得られるものは少ない。

ローズはキャンプの記憶を辿たどることに集中した。

「お父さまは特別な調理器具を使わず、そこら辺の枝や、大きな葉や、石を使って、食べ物を焼いておりましたの…」


だんだんと思い出してきた。

「起こした火の回りに、枝に刺した魚を並べて、火であぶって焼いたり…。

 大きな葉で野菜やナッツ、フルーツ、お肉を包んで、それをたきで熱した石の上に置いて蒸し焼きにしたり…」


ヒントが近づいてくる。

「石そのものでは、どうやって調理してらっしゃったかしら?

 たしか、平べったい大きな石の表面を、水できれいに洗って…火をつけた薪の上に石を置くのですわ。

 熱された石に、薄く切ったお肉、お魚、お野菜を置くと、焼くことが出しましたの。

 ジュウッと音がして、煙を出しながら加熱されていくのを、わたくし不思議そうに眺めていましたわ…。

 大きな石は天然のフライパンだとお父さまはおっしゃられていました。

 少しくぼんでいればお鍋だとも…」


窪んだ石は天然の鍋。

「…鍋?

 …鍋の役割は茹でること?

 ちょっとでもお水を入れて、沸騰させることができれば、それは鍋として扱ってもよろしいのでは?」


ローズは自分がさっき作ったボウルを見た。

「ミッションクリアのために作る石鍋は、なにも鉄や銅で作られた鍋のように深くなくてもいいのですわ!」


浅いお椀、皿のような形が彼女の中でイメージされた。

「さっそく行動に移しましょう!」


ローズは石と砂の場所に戻った。

目についた石を触ってみる。

白っぽくて、手触りはザラザラだ。

「あらっ?

 この石、と~っても軽いですわ!」


大きさの割に、ローズが力を入れるとゴロッと簡単に転がってしまった。

「この石で鍋をつくれば、持ち運びもラクですわ~♪」


手をかざし、レベル2になった石材加工で掘ってみる。

すると…。

ガリッ、ガリッ、ガリッ、ガリッ、ガリッ…

「な、なんですのこの石!

 とってもカンタンに彫れてしまいますわ!!」


思い通りにサクサク加工できる。

ガリッ、ガリッ、ガリッ、ガリッ、ガリッ…

「オホホホホホッ!

 楽しい!

 楽しいですわっ!!」


ガリッ、ガリッ、ガリッ、ガリッ、ガリッ…

「ウフフフッ♪」


ガリッ、ガリッ、ガリッ、ガリッ、ガリッ…


ピロン♪ Lv.2 石材加工→ Lv.3 石材加工 


さっき作った木のボウルと同じく、2時間ほどで完成した。

ローズはルンルンで池まで走る。

「さっそくお水を入れてみましょう」


プカプカ浮いて沈めずらい。

体重を乗せて、えいやっ!と水の中に漬ける。

石の色が黒っぽく変わった。

ザバッと引き上げると、中には水が入っている。

「わたくし、お鍋を完成させましたわ!

 オーーッホッホッホ…ほ?」


水がじわじわと漏れているようで、鍋の水位がどんどん下がっていく。

「あ、あらあら、あらあらあらあら…」


ポタポタと絶え間なく石鍋の底から水が垂れる。

見つめていると、とうとうすべての水がなくなってしまった。

「あらら…よく見るとこの石、表面に穴がたくさん開いておりますの。

 ここから漏れているんですわ」


ピロン♪ Lv.1 観察眼 → Lv.2 観察眼

 

多孔質のいわゆる軽石、その中でも特に穴の開いた石で鍋を作ってしまったらしい。

ガクッとうなだれる。

しかしすぐに顔をあげ、鍋を見てギュっとこぶしを握る。

「悪役令嬢たるもの、一度や二度の失敗で諦めませんわっ!

 しかも勉強になりましたの。

 石といっても、様々な種類がありましてよ。

 普通の令嬢はそんなこと存じ上げないでしょうから、わたくし、皆様より賢くなってしまったというわけですわ!

 オホホホホッ!

 顔が良くて頭が良くて、非の打ち所がない、完璧な令嬢になってしまいましたの~!」


元気いっぱいの彼女の高笑いを聞いて、ブリリアントがキャゥと楽しそうに鳴いた。

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