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4. 二つの系のエントロピー


 前回は孤立系のエントロピーのお話しをしました。ここでは、それを二つの部分に分けます。


(1) 計算

 二つの系のエントロピーは、1. エントロピーの式(2a)〜(2c)で、既に計算しました。


S(E)=kB・log[Ω1(E1)×Ω2(E2)]

=kB・log[Ω1(E1)]+ kB・log[ Ω2(E2)]

=S1(E1)+S2(E2) ただし、 E= E1+ E2 (1)


でした。二つの系が合わさった系は孤立系です。孤立系のエントロピーは最大になるのでした。孤立系のエントロピーSを最大になるように、系1と2へのエネルギーの配分E1と E2を決める必要があります。孤立系なのでE=E1+E2なので、どちらかを決めれば良いです。ここでは、E1を変数に選びます。すなわち、


ΔS=[dS1(E1)/dE1+dS2(E2)/dE1]・ΔE1=0 (2)

です。全体のエネルギーは一定なので、系1と2のエネルギーの増減は、同量で符号が異なるので、


dE1=-dE2


です。よって、以下となります。


[dS1(E1)/dE1-dS2(E2)/dE2]・ΔE1≧0 (3)


熱平衡では、[]内がゼロとなり、以下となります。


dS1(E1)/dE1-dS2(E2)/dE2=0

∴ dS1(E1)/dE1= dS2(E2)/dE2 (4)


です。この式で、熱平衡におけるエネルギーの分配が決まります。分配が決まるということは、系1と2の間のエネルギーの移動がなくなります。温度Tを1/T=dS/dEと定義すると、系1と2の温度が等しいと、エントロピーが最大になり、熱平衡となります。このように定義した温度Tが、私たちが身近に使う温度と等しいことは後の項目で説明します。


(2)温度とエネルギーの移動

 (4)より、ΔE1≧0であれば、ΔS≧0より、


dS1(E1)/dE1≧dS2(E2)/dE2 for ΔE1≧0 (5)


です。ΔE1≦0であれば、


dS1(E1)/dE1≦dS2(E2)/dE2 for ΔE1≦0 (6)


になります。

 1/T=dS/dEを認めると、ΔE1≧0では、系1のエネルギーが増えます。つまり、系2から1にエネルギーが移動します。このとき、1/T1=dS1/dE1、1/T2=dS2/dE2で系1、2の温度T1、T2を決めます。すると、dS1(E1)/dE1≧ dS2(E2)/dE2は、1/T1≧T2なので、T1≦T2です。つまり、温度の高い系2から温度の低い系2にエネルギーが移動します。これは、経験と一致します。同様に、ΔE1≦0の場合は、T1≧T2になります。


本日の要点

・ΔS=[dS1(E1)/dE1-dS2(E2)/dE2]・ΔE1≧0

・二つの系の熱平衡は、以下をみたす。

  dS1(E1)/dE1= dS2(E2)/dE2

・温度Tを1/T=dS/dEと定義すると、二つの系の温度が

 等しい場合に熱平衡になる。

・エネルギーは、温度の高い系から低い系に移動する。


次回は、5. 開いた系の熱力学、について説明します。




統計力学は、大量の原子や分子を統計的に扱います。熱平衡状態や自然の向かう方向は確率的に決まります。前回の後書きで、物理学の基本法則は時間を反転しても成り立つことにふれました。しかし、統計力学では確率の高い方向に自然は変化します。統計力学は、時間変化を直接計算する力学ではありませんが、時間変化の方向を示します。ある意味、統計力学は、時間反転対称ではなく、時間反転を制限します。統計力学と会い並ぶ熱力学もそういうことになります。

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