銃対剣
☆☆☆王都郊外
王都郊外の練兵場に、二人の男が相対していた。
決闘だ。
遠巻きに騎士や貴族が見ている。
一人のデップリと太った男は、銃を持っている。M16である。
あのホークが売った銃は、中央貴族の子弟が持っていた。
対して、もう一人は、上半身が隠れるくらいの盾と剣である。
銃対剣、どうみても、勝つのは銃だろうとこの国の者も思った。
「ヒヒヒヒ、その薄い盾と、何だ。その鎧は?皮鎧か?」
・・・接近して、盾でなぎ払って、剣を振るう。
銃なので、見物人は、遠巻きにして、土塀に隠れての見物だ。それも、許可を受けた各々の関係者のみ。
そして、付添人は、剣の方には、フランが付いていた。あの猟師の娘だ。
穴を掘り。たこつぼ陣地に、身を潜めている。
「リリードさん。頑張れ!」
「おう、フラン先生・・」
俺は、リリード、騎士だ。今日、銃と決闘する羽目になった。
きっかけは、些細なことだった。
相手はリヒテン侯爵の第三子ゲロス、チャラチャラ遊んでいる馬鹿息子だ。
ある日、奴は、親父の金で「じゅう」を手に入れた。
『ヒヒヒヒ、僕は「じゅう」を手に入れたぞぉ!これで、騎士団長クラス・・いや、もっと、強いぞぉ。僕が王子殿下の護衛をした方が安全だぞぉ、リリード決闘する?銃だぞぉ?』
『何だと!』
売り言葉に買い言葉で、俺は決闘を受けた。
「じゅう」なんてよく知らない。ボウガンとアイスパレットのようなものだろうと思っていたが、
調べていくうちに、とんでもない威力だと分った。
あの国崩し、鏖のアリサが使っている魔道具ではないか?
どうしたものかと、悩んでいると、
『やあ、リリード』
『殿下にご挨拶申し上げます・・・』
『学園の中では堅苦しい礼儀は不要だよ。面白い講義があるから、一緒に行かないか?「銃弾の防ぎ方」だよ』
『行きます!行きます!』
☆特講教室
教室は、教官と、王子殿下と、その婚約者、辺境伯令嬢と俺の4人しかいなかった。
講師は、フラン、16歳、茶髪をポニーテールにして、目はアイスブルー、どう見ても、女騎士ではない。村娘だ。
普通なら、席を立つところであるが、
『先生に礼!』
『礼ですわ』
『・・・礼!』
殿下と婚約者が礼をし、熱心に聞くのだから、俺も聞くことにした。
『異世界の「じゅう」・・・アサルトライフルと呼ばれるものはとても強いよ!最大の性能は、連射機能だよ。最大1分間に700発!1秒間に10発以上は、鉄ツブテを飛ばすよ!』
『威力は、この世界の鎧は全て、貫通するよ!異世界の鋼なら、約5センチなら、貫通しないと言われているよ!』
『だけど、弾倉は20発入が主流だから!あっという間だよ!だから、セミオートが主流で、3発で止まる連発機能だよ!』
頭が痛くなってきた。
どうやら、こいつはとんでもない性能だ。
『王国兵器工廠で開発中の連続弩も、比べものにならないか・・・』
『まあ、では、それでは、異世界の騎士様の鎧はどうなっているのかしら』
ナイス、辺境伯令嬢殿!
『はい!異世界の鎧は!鉄兜に~~~~』
ゴソゴソ~
フランが、大きな袋をゴソゴソする。
『へへへ、実物を見た方が早い!ジャーン、これが、防弾アーマーと、防弾盾と、鉄帽だよ!』
何だ。皮鎧か?
『ほお、売ってくれないか?』
『でも、これ、耐用年数が5年だよ・・です!必要な時に揃えるのが良いと言っていたです!』
・・・『言っていた』先生の後ろに誰かいるのか?
『そうだ。リリード、今度、決闘するだろう?練習してみては?』
『まあ、そうね。それがいいわ。先生、どうかしら』
・・・決闘することが漏れている。まあ、そうか。
『うん!じっしょうじっけん?をしたいから・・いいよ。鎧と盾と鉄兜は無償供与だけど!その代わり、敵のじゅうをもらいたいって』
・・・先生の言葉には、何か借り物の言葉を感じるが・・
先生と共に、銃弾を避ける訓練を始めた。
☆練兵場
まずは、装備をつけて、歩く。走る。
俺は騎士だ。これは何てことはない。
そして、戦闘予行が行われた。
『じゅう!だと・・・』
『違うよー、え~と、木刀みたいなものだって、ほら』
パシュ、パシュ、パシュ!
フランが持っているものは、電動ガンである。
弾は、ペイント弾だ。
やることは簡単だ。
『相手は~立ち撃ちだと思うよ。こうやって、倍率眼鏡をのぞくから視野が狭くなるから、斜め前に動きながら動くといいよ!まずは、敵を知る。ほら、持って!』
彼女は、俺に、模擬「じゅう」を持たせ、見本を見せた。
シュン!シュン!
『ほら、ほら』
なるほど、弓と同じだ。まっすぐに向かって来ると、簡単に狙える。
しかし、横に動くと、狙いづらい。
俺は盾で体全体を隠しながら進むことを練習し、
スキを教えてもらった。
『鉄ツブテを補給するときは、練度によるけど、数秒の間、スキが出来るよ!』
何度か練習し、ペイント弾が、盾と、鎧にしかつかないようになった。
・・・・・・・
☆
当日は、俺の圧勝だった。
「ヒィ、狙いずらい!盾が、盾が打ち抜けないぞぉ!」
バン!バン!バン!
「弾がないぞぉ、ヒィ、タイム!」
俺は、奴を斬り。
勝利した。
「勝者、リリード!」
「リリードさん。やったよ!・・キャア」
俺はフラン先生を捕まえた。
「何をする!付添人に剣を向けるとは・・」
「フウ、いるんだろう?鏖のアリサ殿!俺と勝負しろ!」
土塀の後ろから、ローブをまとった少女が出て来た。
彼女はフードを取る。
黒髪と黒目の容姿だ。冒険者、外道姫、ネームド、鏖のアリサだ。
「アハハハ、どうも、おかしいと思ったのだよ。この娘の命が欲しかったら、俺と決闘されたし」
「・・・目的は?」
「更なる名誉!鉄ツブテ使い。大戦の英雄を倒したとあれば、我が武名は更に、上がる!」
アリサは、テロリストと話し合いをしないと田山を見殺しにしようとしたが、何を思ったか。快諾した。
「そう・・・分った。今すぐに相手をしてあげる・・辺境伯様の名に誓って、逃げないから、その子を解放しなさい。私を倒したら、私の代わりに辺境伯様の後見を受けられるわ」
「有難し!」
アリサ対この国の騎士の決闘が行われることになった。
☆
「な、何だと、何故、寝っ転がっている!」
開始早々、アリサは、伏せ撃ちの体勢を取った。
盾で隠れにくい。防弾盾の下からのぞく足首を狙うつもりだが、
リリードは素早く対応した。
パン!パン!パン!
(三発、撃った。後、17発・・)
リリードは、動き。アリサに弾を使わせようとする。
弾倉を交換するときを狙おうとするのだ。
ババババン!
アリサは、連射をした。
リリードは、踏ん張り防弾盾で受けきる。
(間合い10メートル。弾倉を交換するときに、斬る!)
アリサは、弾倉を外した。
「今だ!」
リリードは、盾を捨て、ジャンプし、一気に間合いを詰め。剣を振りかぶり。一刀両断にしようとしたが、
アリサは弾倉がない状態で撃った。
バン!
銃声が響き。リリードの右手の肩の付け根付近の、防弾チョッキのスキマに直撃した。
剣を持った右手は地面に落ちる。
「何故!・・・」
「・・・・弾倉がなくても、薬室に、弾は一発入る・・・これは、フランに教えていないかった。誇ってもいい。貴方は、対銃の優秀な生徒」
「そうか、だから、連発でうって、残弾を分りにくいようにしたのだな。殺してくれ・・もう、この体では、立身出世が出来ない」
「そう・・・」
新たに、弾倉を差し替え。
カチャ!
弾コメをし、
ゆっくり撃った。
バン!
「南無阿弥陀仏」
異界の呪文を唱え。敬意を表した。