ある軍事チート冒険者の討伐
無煙火薬の原料となるニトログリセリンやニトロセルロースは、植物を化学変化させて作れるもので、資源の管理さえ出来れば、尽きることはないと云われている。
火薬は無尽蔵と言ってよく。まるで、これからの人類の歴史を暗示しているようだ。
地球から見て、異世界、女神が統べる王国の片田舎に、銃を使う者たちが訪れていた。
☆☆☆マン男爵領、冒険者ギルド
女男爵メルダは、領主依頼を受けたいと懇願する冒険者パーティを説得をしていた。
・・・はい、そのクエストは、領主依頼です。盗賊団の討伐です。元傭兵団長ホークを首領とした盗賊団です。
彼奴らは、キャラバンを襲います。
恥ずかしながら、我が領は貧しく。商人が来なければ、物を売れず。必要な物資も入って来ません。
死活問題です。
彼奴らは・・
法外な略奪免除税を要求しています。
我が領には、人魔大戦で、戦死したお父様とお兄様が、何かあったときのために、資金を残して下さいましたが、
これは、何かあったときとはどうしても思えません。
貴方方の気持ちは大変嬉しいのですが、
明日、ネームドの冒険者が来ると寄親の辺境伯様から、連絡が来ました。
「明日まで、お待ち頂いて、同行され、討伐を見学なさっては如何でしょうか?」
対する冒険者バーティは、黒髪、黒目の5人の男たちである。日本人である。
彼らはおっさんから、20代の青年まで、
来ている服も、最新のデジタル迷彩から、警察の特殊部隊のジャケット、第二次世界大戦時の旧日本軍の軍装など、様々だ。
リーダーの田山が笑止と言いたげに、女男爵メルダに答える。
「お姫様、クエストは早い者勝ちだぜ。俺らは、軍事チート、『狂戦士5人衆』だ。任せな」
「ソウッス、連続クエスト達成の俺たちに任せるッス」
俺は田山、日本では会社員だった。週末にサバゲ教室を主宰していた。
サバゲ途中に、霧が出て、異世界に転移したようだ。
こちらの世界では、銃を召喚出来る。まだ、各々サバゲで使っていた銃限定だがな。レベルが上がれば、ミニミとか召喚できるかも。
キメラとか一角グリズリーを討伐した実績があるが、対人戦闘はまだだ。
そろそろ経験をした方が良いと思って、こんな田舎にまで、対人戦闘のクエストを探して来たのだ。
敵は、盗賊団、ちょっと、物足りない。
対人戦闘はいつもゲームでやっている。
人間なんて余裕。
覚悟を決めれば、人を殺すなんて、どうってことない。
人魔大戦の時代に、転移していたら、将軍にでもなれているのにな。
「分りました・・では、危なくなったらすぐに帰還して下さい」
「おい、東梅さん、山形さん、鈴木さん、坂部君、東山君、行こうぜ」
「「「おう」」」
「「はい」」
俺たちは無敵、銃は、この世界の魔法よりも早く遠くから攻撃出来るぜ。
俺たちは、馬車に乗せられて、盗賊出没地帯まで来た。
「後は宜しくお願いします。ここは、危険ですので・・・その」
「ああ、素人は危険だ。下がって、戦勝を聞きな。プロである俺らが盗賊をやっつけてやるよ」
「はい・・・」
☆☆☆
盗賊出没地帯と予想される地は、森林と草原が混じった丘陵地帯だ。
ガチャ、ガチャ
「森の中?ゆるやかな傾斜がある。山未満、丘だな。この獣道を進めばいいんだな。準備良かったら行くぞ」
「あの、作戦は良いのですか?」
「作戦って、この国の武器みたか?相手はジャック・チャーチルじゃないんだ。見つけたら、撃って進めばいい」
※ジャック・チャーチル
第二次世界大戦時に弓矢で敵兵を屠ったとされるイギリス軍の将校
「綺麗なお姫様だったよな」
「このクエストが終わったら、貴族お抱えになるんじゃねえ?」
「でも、男爵家でしょう?もう少し、上の階級がいいな」
「ハハハハハハハ、言えてる」
「笑い事じゃない。俺らは最低、伯爵以上のオファーしか受けない!それ以外は断るぞ」
「でも、敵は何人だっけ?聞いた?」
「いや、でも100人、いや、1000人でも余裕っス」
談笑を交えながら、
ガサ、ガサ、ガサと草をかき分け。1時間ほど獣道を進んだが、敵は見えない。
「おい、日が暮れる前に帰りたいぜ」
「野営道具は?」
「いえ。持って来ていません。僕は二食持って来ています」
「俺は一食、夕飯は街で食おうぜ」
俺らはサラリーマンと大学生のチームだった。フィールドには車で行っていたからな。
野営までするマニアじゃないが、このクエストでは必要ないだろう。
俺は、M4,東梅さんは、M16、山形さんはMP5K、で、鈴木さんはAKで、板東君はM4、東山君は、38式歩兵銃。
皆、ロマンあるよな。
全て、実銃だぜ。
一番、若手の東山が、心配そう田山に話しかけた。
「あの、そろそろ前傾姿勢を取って、隊形を組みませんか?」
「まだ、早いぜ。フィールドじゃない」
「でも・・」
東山の心配を打ち消すために、田山は、勇気づける。
「自信を持て、東山君、俺たちは、実戦を経験したんだ。訓練ばっかりの自衛隊よりも上だ」
「ソウッス、むしろ、日本に帰っても俺たちしか戦えないッス!」
「そうだ。東山君の三八は、銃剣つけられるだろう?皆で白兵戦をやろう。俺は合気道を使う。おのおの最低一人は、白兵戦で倒せ。軍隊格闘技の試験も兼ねるぞ」
「さすが、サバゲ教官、でも、一発撃てば、皆、逃げ出しますよ」
「「アハハハハハハハハ」」
「違いない。田山さん。それ、成り立たないですよ」
「そうか、手応えのある敵だったら良いのにな。でも、備えあれば憂い無しだ。皆、止まれ。対剣戦闘を教えてやる」
田山が言うと、皆、足を止めた。
その瞬間、シュンと矢が飛んできた。
グサッ
「え?え?矢が、首に、貫通している・・コーホー、ウグ、ググッーー」
東山の首に、矢が貫通し、矢は途中で止まって、串刺しのような状態になっている。
コーホーと息が外に漏れる音が響いた。
一瞬、静まり。すぐにパニック状態になる。
「おい、ポーション!」
「持って来ていないッス!いつも、圧勝ッス!」
「どーすんだよ!抜いていいか?」
「テメエ、クソが!ボサッとしていないで、矢が飛んできた方に撃てよ!」
バン!バン!・・・・・
☆☆☆森林の中、数十メートル先
弓を射った者は、木に隠れ、銃弾をかわしていた。
・・・ヒヒヒヒ、軍事チートだと思ったが、回復術士もいない。全員戦闘員の歪なパーティだ。
こりゃ。お頭が言っていた。「化け物」じゃないな。
え~と、負傷者に、一人がかかりっきりで、一人が、気を使いながら、鉄ツブテを放っている・・0.5人
これで、負傷者を入れて、2.5人の戦力ダウン。
半数の戦力が削れたぜ!
・・・・・
田山たちは、既に、包囲されていた。
本人たちは気が付かない。
「田山さん。帰ろう!東山君を治療しよう!」
「馬鹿!敵が姿を見せたら、瞬殺なんだ!今更、オメオメと帰れるかよ!口じゃない手を動かせ!」
その時、前方200メートルの草むらから、壮年の男、二人が、姿を現した。
首領のホークと、ローブをまとい、魔法杖を持っている男、魔道師だと一目で分る。
【お~~い。俺がホークだ。姿を見せたぜ!】
「ちくしょう。ニヤニヤしやがって、撃て!あいつを殺して、帰るぞ!魔法はあそこからは届かない。ここから撃て!」
バン!バン!バン!
ズドーン!
ババババババババン!
各銃器がそれぞれの音を奏でながら、弾を撃つが、
それと、同時に魔道師が、魔法を展開する。
「ウォーターボール!」
魔道師と、ホークの前面に、バスケットボールぐらいの大きさの水球が無数に浮かぶ。
「ヒュー、軍事チートさんはすごいね」
「これが、「じゅう」、さすがに迫力あります。盾を出しときましょうか?」
「うんにゃ、当たるときは当たる」
弾が、水球に当たると、途端に勢いがなくなり。
ホークの足下で落下するものがほとんどだ。
「何故だ!!何故、倒れない!」
とリーダーの田山が叫ぶが、
水の密度は、空気の800倍、水中では、弾丸の勢いは急激に落ちるとされている。
「そしてな。お前らは既に包囲されているのよ~ん。注意は俺たちにしか向いていない。頃合いだな」
ホークが、手旗を挙げると、
森の茂みから、弓矢が、田山たちに向かって、真横や斜め後ろから、飛んでくる。
十字砲火に等しい効果だ。
シュン!シュン!
グサッ
「ヒィ、弾は?マガジンの中にもうない」
「今から、弾を詰めたら・・・」
皆、弾倉を一個か二個しか持っていない。それで足りていた。
「「「「ウワーーーー」」」」
「狂戦士5人衆」のリーダー田山以外は戦死した結果になった。
・・・・・
☆次の日、冒険者ギルド応接室
「・・・以上が、向こうから来た矢文で分った状況です。
グスン、グスン、また、請求金額が上がりましたわ。タヤマ様の命を合わせて、大金貨300枚(3億円)」
「そう・・」
「それで、ネームドの貴方様に頼みたいですわ。失礼ですけども、黒目、黒髪の貴方様に、貴方も異世界から来られたのですか?」
「違う・・」
冒険者ギルドに来たネームドは、15歳の少女、黒髪、黒目、銃を持っている。木と鉄で出来ている64式7.62ミリ小銃である。
服は、茶色、黒、緑のまだら模様。頭には、鉄棒を被っている。
また、軍事チートであるが、
・・・大人5人の軍事チートでもダメだったのに、
執事はいぶかしげに思う。
最後までお読みいただき有難うございました。




