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みんな大好きサバイバル

『そもそもね、エルフだった前世を思い出したら、チートはもちろんだけどエルフだったときの能力や種族特性も引き継いだ状態でこの世界で人生を送ることになってたんだよ』


「ちょっと意味が分からないんですが」


『察しが悪いねえ。つまり、早いうちに前世を思い出していれば、人間・水渚吟子は肉体をそのままにエルフに生まれ変わっていたんだ』


 肉体をそのままに?

 それって人間のままっていうことちゃいますのん?


 わたしが疑問符でも貼り付けたような顔をしていたのだろう、神はひどく情けない表情で言った。


『だからね、前世のような半霊半物質……というよりほぼ霊体の肉体を手に入れて、思いのままに生きる事ができるようになっていたはずだったんだよ、水渚吟子さんは』


 バカにでも分かるように言うと、とでも言いたげだ。

 なんでこんなヤツ信仰してたのかな、前世のわたし。


 だがしかし、エルフの能力などを引き継げるというのは悪くない。

 現代の人間が中世レベルの文明の異世界に記憶を持って転生した場合、一概には言えないが、それだけでもうチートになる場合がある。

 この魔法の存在しない世界ならば、息を吸うように魔法を操るエルフの能力はそれだけで強力なチートに間違いないのだ。


『でも君は前世を思い出した瞬間に死んでしまった。しかしそこで半霊化した、前世同様の肉体が復活。するとあら不思議、ケガは回復して全て元通り、というわけなんだよ。あ、蘇生は一回だけサービスついてるからそれ使いました。つけとかないとみんなすぐ死んじゃうからさ』


「すっげえ余計なお世話だな」


 本音が口をつく。

 さっきからどうも、自分らしくなく思ったことがそのままダダ漏れになっていると思ったら、どうやらこの肉体の影響だったようだ。


 わたしの前世だったエルフは、霊的存在である精霊がその身をいくらか物質化させた種族だ。

 ありのままに自由な存在である精霊は、その行動や感情をあまり隠さない。

 笑って泣いて好きに生きる。

 怒りでさえ、引きずって世界に害を為すことさえなければただの感情表現だ。

 むしろそれを楽しんでいる節さえあった。


 無礼も身勝手も本人の生き方。


 そしてそんな種族には自由を愛する気ままで勝手な神がふさわしい。


『そういうわけで君の体は完全に回復している。1度死んだけどエルフ程度の寿命で生き返りました。エルフ程度の短さではありますが、それでなんとかノルマを達成してほしい。それを伝えたかったんだ』


 わたしは顔をしかめた。


「え、嫌です。それより早く前世のおうちに帰りたいです」


 大体エルフ程度ってお前。

 そりゃあ神々からしたらエルフ程度の寿命、吹けば飛ぶようなもんだろうが、エルフは普通に7〜800年は生きます。昨今の環境改善によりみんな1000年は軽く超えて毎日元気に青汁とか飲んでます。

 人間の中で数百年とかどんなエルフでも気が狂います、やめてください。


 いや違うな、気でも狂わなきゃやれないレベルの苦痛だ。


 だが我が神は無情にもこう返してきた。


『仕事が終わってないんで無理です。ノルマ達成まで残業してください』


 やはりブラック。


 わたしはやる気のなさを隠しもせずに訊いてみた。


「でも地球は闇の手に落ちましたよね? ここからのノルマ達成って具体的に、あとどんだけ頑張れば許してくれるんでしょうか」


 すると神は何を勘違いしたのか嬉しそうに何度もうなずく。

 だからやりたくないって言ってるだろうが!!

 最低限のラインを教えてくれって話だよ!


『残念ながら世界は闇に飲み込まれた。今、もうすでに別の世界と繋がっている。他の世界と比べると狂気レベルはマシなほうだけど、人類にとっては滅亡もありうる世界だ。君に、というか君たちに課せられたノルマはここから、人類を世界へ適応させて生存、滅亡から救うことにある』


 適応して生存させる。


 簡単に言ってくれるな、とわたしは嫌な気分になった。

 だって考えてもみてほしい。

 これまでとは全く違った人類滅亡もありうる絶望的な環境で、科学文明に慣れ切った人間が生きていけるだろうか?


「ちなみに、どんな世界と繋がったんです?」


『喜びなさい、我が信者よ』


 手のひらを向けて両手を広げ、神々しいとさえ言える笑みを浮かべて我が神は言った。


『みんな大好き、ゾンビサバイバル世界です』













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