G♯
「……お前、何とも思わないのか?」
「何がですか?」
気が付くと、僕はシェイドに対して問いかけていた。シェイドは笑みを浮かべる。
「仲間を殺して、人を殺して、悲しくならないのか!」
すると、シェイドはよりいっそう高らかに笑い始めた。
そして。
「……面白いですね、貴方も」
「何が!」
「その正義感ですよ」
「僕は間違っていない!」
「そうですかね? 間違っている人ほど、そうやって言うんですよ。他人の人生など、私にとっては玩具なんです」
「何だと!」
「飽きたんです」
……?
コイツは何を言っているんだ…?
「子供だってそうじゃないですか。最初は興味がある玩具も、飽きれば棄てますよ、それと同じです。私だって人間なんですから」
菜ノ花さんと優依歌ちゃんは、不安な表情を浮かべている。それとうってかわって、シェイドは微笑っている。
「どんなに悪い人間でも、どんなにむかつく人間でも、みんな両親が一生懸命に産んで、育ててくれたんだよ! 君だって、そうなんだよ!」
すると、シェイドの顔から笑みが消えた。
「くだらない」
「え?」
「……世の中には、両親が願ってもいないのに生まれ、暴力を受けたり、殺される者だっているんですよ。……私のように」
「え……」
「……私、生まれつき魔法が使えるんですよ。両親は私の力を不気味に思い、私を化け物扱いしました。暴力はもちろんのこと、幾度も殺されそうになりました。でも、それが自分の運命だと思って諦めていました」
「お前…」
「しかしそんなある日、ジュダが私の両親を殺しました。そして彼は言いました。
『お前を救うために殺した』
私は彼を信じた。もう苦しむ必要はない、初めて人を信じた」
……この世界は、魔法や不思議な力を持って生まれてくる子がたまにいるんです。優依歌もその中の一人です
優依歌は物心付いたときから予知能力を持っていました。両親はとても喜びました。しかし、私は優依歌の予言の力は嫌いでした
菜ノ花さんの言葉を思い出す。不思議な力を持った子供達。優依歌ちゃんは幸せで、シェイドは幸せではなかった。
夕夜も……?
――……夕夜……何しているの? 猫?
見て見て、蒼夜。可愛いでしょ、ボクが見つけたの。なんかご主人様に捨てられちゃったんだって……。 昨日は車にひかれそうになって大変だったんだって……。うちで飼えないかなぁ?
ちょっと難しいかもよ。夕夜、それ、この辺の近所の人から聞いたの?
えぇー? 違うよ、この子が教えてくれたの……――。