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やばい……どうしよう!
その時だった。
「蒼夜さん!」
菜ノ花さんが僕の腕を引っ張って、ジュダよりさほど遠く離れた。
何か知らないけど、ジュダ様待ってる。ヒーローが必殺技を出すときに避けないで待っててくれる敵みたい。
「使ってください」
「これって…」
「武器です」
「……ネギじゃん!」
「大丈夫ですよ!」
「何が?!」
「人を傷つけることはありません」
「傷つけたくてもできないよ! むしろ僕の命が危ないよ!」
とりあえず折れた剣を凄い真顔の菜ノ花さんに渡し、ネギを受け取った。
「落ち着いてください」
「落ち着いていられるか! ネギだよ? ネギを包丁で切ったらどうなる?!」
「………」
菜ノ花さんは素敵な笑顔になった。
「何で無言になるの?! 何か言ってよ、心が壊れそうなんですけど!」
「蒼夜さんって……鋼のハートじゃなかったんですかっ?」
「違うよ、僕はガラスのハート!」
何かそんなこんなで菜ノ花さんとコント(?)をしているうちに、
「武器だかネギだか知らんが……」
ジュダは真後ろにいた。菜ノ花さんは僕の後ろに隠れる。
その時、シェイドは優依歌ちゃんを放した。崩れかけた優依歌ちゃんに菜ノ花さんは走っていき、しっかりと支える。
ジュダはそんなことには目もくれず、
「……まぁいい……遊びの時間はここまでだ……死ねぇっっ!! ……………っ?!」
一瞬何が起きたのか分からなかった。
菜ノ花さんは優依歌ちゃんを守るように抱きしめていて、僕は頑張ってジュダの攻撃を避けて、ジュダの小さな体を、シェイドの剣が貫いていた。
「億劫だ……」
「シェ……シェイド……貴様……裏切ったのか……? ……ぐっ!」
吐血。血、血。赤い血。
――救急車を呼べ!
少年が血を流して倒れているぞ!
サイレンの音、野次馬のざわめき。
許さないよ……蒼夜……ボクは君を……絶対許さない……。
紅く染まった目、夕暮れの空。
…………夕夜……!
「裏切った? はは……まさか。私、元々貴方にお仕えしようなんて、思ったことありませんが?」
「……っかは……! ……」
「私を信じた、貴方が愚かだったんですよ」
「シェイド……昔のことを忘れたのか……?」
「昔? あぁ、忘れるわけがありませんよ」
「ではなぜ……おまえをここまで養ってやったのに……」
養った…?
シェイドはもしかして、ジュダに拾われたのか?
シェイドはクククッと笑うと、口を開いた。
「あの日、私は貴方を信じました。しかし、貴方の本性を知ってから、今日まで貴方を殺すことしか考えていませんでしたよ」
「何……だと……」
「今までありがとうございました。そして……もう逢うことはないでしょう!!」
「ぐっ!! …………」
「やっと叶いました……無様な姿ですね!」
シェイドはジュダの細い体にもう一度剣を突き刺し、そして、ジュダは闇の中へと消えていった。