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C♯

「妹……?」

「これは夢なんかじゃないんです、現実です!」

 その女の子は僕のほっぺをとても強く引っ張った、うん、痛いです、かなり。

「夢じゃない? そんな、こんなことって……」

「本当です、信じてください!」

「いきなり言われても……」

「お願いします! 早く助けないと……妹は……優依歌は……」

 その女の子は、ぺたっと床に座り込んでしまった。

「ちょっと待って、落ち着いてよ……座って?」

 とりあえず椅子に座らせる。

 その子はありがとうございますと言って椅子に座った。

「……ごめんなさい……」

「話がよく分からないよ。……妹さんが、どうしたの? 君は一体……」

「私、菜ノ花(なのか)っていいます」

 桜色の髪を揺らし、その長い手足はモデルの様だった。

「僕は、蒼夜。えっと……菜ノ花さん? 何があったの?」

 僕も自己紹介をすると、菜ノ花さんは頭はゆっくり下げた。


「妹が……殺されそうなんです……」


「えっ?」

 突然のことに、あまり驚けなかった。

「私の妹は、優依歌っていいます。2年前に両親が死んで、優依歌は、唯一の家族です」

「……それで、どうしたの?」

「私は……異世界から来ました」

「異世界? ってえええっ?? ……ええっと、地球の人じゃないって……事……?」

「はい。その世界は、魔王ジュダによって支配されています」

「ジュダ?」

「ジュダイン・ダークライト・ハーデスカス、私たちの世界の王です。ジュダは、自分に逆らった者は女子供関係なく次々と抹殺していく、恐ろしい男です」

「何て、酷い奴なんだ……」

「そして……奴らに妹が、捕まってしまったのです……!」

「えぇっ!」

 僕は驚いて後ろに後ずさった。菜ノ花さんは僕と同い年くらいだから……妹さんは僕より年下くらいかな……捕まったって……それじゃあ……。


「でも……まだ、おそらくは殺されないと思います」


「え、どうして? 次々と……人を殺している奴なんだろ? その……妹さんも刃向かったりしたの?」

 菜ノ花は、顔を上げて言った。

「妹は……力を持っているんです」

「力……?」






「……予知能力です」






「……予知能力って、未来のことが分かる?」

「……はい」

「信じられない……」

 予知能力、異世界、そこから来た女の子、魔王……何がどうなっているんだ……?

「……。ジュダは、この世界よりも大きな世界をあっという間に支配してしまう恐ろしい力の持ち主です」 

「僕らの世界より、大きな世界を……」

「はい、そして……」

「?」

「ジュダは私たちの世界だけではなく……全ての世界を我がモノにしようとしています」

「全ての世界……ってことは、地球も?!」

「おそらく……」

「そんな……!」

「ジュダは、野望が叶うまで妹の力を利用します」

「そうか。予知能力さえあれば、計画は簡単だ」

「でも、野望が叶ったとき、妹は用無しになります。そうすれば、きっと……」

「……殺される」

「そうなる前に、ジュダを倒さなければなりません……!」

 菜ノ花は、少し震えていた。

「そうだね、僕たちにも関係あることだもんね……」

「そこで本題です」

「え、今のは本題じゃなかったの?!」

「はい」

「で、その本題って何なの……?」

「ですから……助けてください!」

 菜ノ花さんは僕の手を握って、さっきより大声で言った。

「え、話を聞くだけじゃ……」

「いいえ、戦うんです!」

「戦う?! どうやって?!」

 菜ノ花は自分が入っていた箱の中に手を入れ、何かを取り出してきた。

「これをどうぞ」

「……なにそれ」

「なんか……どこかの……剣、みたいなものですかね」

 菜ノ花さんは首をかしげる。可愛いけど何か持ってるモノかなり物騒だよ。

「うん、何かこんな感じの剣ってゲームに出てくるね……」

「げーむ……?」

「こっちの世界にあるおもちゃだよ。本物みたい、かっこいいなぁ」

「気に入ってくださいましたか?」

「んんー……まぁ」

「それでは、ジュダと戦ってくださるんですね?!」

「え、それはちょっと……」

「ありがとうございます!」

「菜ノ花さん、人の話を聞こう」

「それでは早速参りましょう!」

「人の話を聞いてぇぇぇっっ!!!!」



 そして、僕の目の前は真っ暗になった。




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