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7話 終われない理由

「夢じゃないのか」


アヤメが起きてきた。

そして俺の前で胸に手を当てる。


「小さくてごめん」

「誰に謝ってるんだよ」

「ザクロ」


何も言ってないじゃん俺。


「あのそんな急に謝られても困る」

「ごめん。その色々言っちゃって」


でも、と続けるアヤメ。


「一晩寝て考えたよ。ザクロの力になるって」

「そうか。ありがとな。で早速だが、今からギルドに向かうぞ」

「うん」


俺はベアとアヤメを連れてギルドにやってきた。

聖女はもう戦いたくないと言うし別のことを任せている。


「だ、大丈夫かな?私裏切り者ってバレないかな」


今更そう聞いてくるアヤメ。


「バレないよ。名前知ってても誰も顔知らないから」

「そっか」


胸を撫で下ろすアヤメ。

俺は2人にそろそろ目的を話すことにする。


「俺には幼馴染の女の子が1人いてさ。でもその子重い病気になっちゃったんだ」

「そ、そうなんですか?でもザクロなら直せそうですけど」

「俺はあくまで死体遊びしかできない。生者には何も出来ない」


死んでくれたら治せるかもしれないけど治らなかった時のリスクが高すぎる。

そもそも死んでくれなんて言えないし。


「もう5年くらい寝たきりでさ。その子のために俺はダンジョンを攻略したいと思ってる」


すごい個人的な理由だ。


「ダンジョン【聖なる塔】その最上階にある【聖なる鐘】っていうアイテムならどんな病気だって治せるみたいでさ。それを取りに行きたいと思ってる」


2人はあっさりと了承してくれた。

俺は思った。


本当に人ができてるんだなって。

ヨシヤとは違う。


「ありがとう。助かるよ」


俺はカウンターに向かう。


「今から聖なる塔へ挑みたいと思う」


特に依頼の絡まないダンジョン攻略は先ずギルドに挑戦するという意志を伝える必要がある。


「せ、聖なる塔へ、ですか?」

「あぁ」


しょ、少々お待ちください。

そう言って奥の事務室に引っ込んでいく受付嬢。

待っていると男が数人近寄ってきた。


「お前聖なる塔へ行くのか?」

「あぁ」


そう答えるとはーはっはっはと笑われる。


「お前みたいなガキが攻略できるダンジョンじゃねぇんだよぉ?分かる?」


俺を見下ろしながらそう言ってくるのは30手前くらいの男だった。


「やめてあげてくださいよ。ムノーさんそんなこと言っちゃ泣いちゃいますって」


ムノーと呼ばれた男は更に続ける。


「嬢ちゃん達もそんな男と一緒にいたら命いくらあっても足りないぜ?俺らのパーティにきなよ」


と勧誘されるベア達。

黙る様子もないし口を開く。


「ちょっと黙ってくれない?おっさん達」


うるさいんだよこいつらさっきから


「あ?お前生意気だな」


そう言って殴ろうとしてくるムノーを先に殴りつけるとその場で一回転して床に頭を突き刺して逆立ち状態になった。


「ぶぼっ!」


ビクビク体を動かすムノー。


「む、ムノーさん?!」

「だ、大丈夫ですかい?!」


取り巻きが俺たちを見ないようにムノーを掘り起こそうとしている。


「す、すごいですね!ザクロ!こんなこと出来ちゃうなんて!」


俺の手を取ってくるベアだが


「ベアの力だぞ?俺にこんな力あるわけない」


そう言ってやるとカーーーっと顔を赤くするベア。

自分の筋力を恥ずかしがっているのかもしれないが体自体はかなり細い。


何処にそんな力があるんだと思いたくなるくらい。

その時受付嬢が戻ってきた。


「攻略申請通りましたよ」


俺に攻略許可証を渡してきた。

難易度の高いダンジョンの攻略にはこの許可証が必要になる。


「すんなり通るとは思っていなかったな」

「私も分かりませんがギルマスが許可したのですよ」


彼女がそう口を開いた時。


「ご客人。そこからは私が対応しましょう」


カウンター奥の部屋から女の人が出てきた。


「私はここのギルドマスター。サーシャと申します」


そう口にした彼女は俺達を事務室の奥。ギルドマスターの部屋に呼び出した。


「まず、単刀直入にそこのベアトリスという人は勇者ベアトリスですよね?」


確認を取ってくるギルドマスター。


「な、何故分かったんですか?ま、まさか聖剣が?!」


はっ!という顔をして体のあちこちを触る彼女。


「答え合わせありがとうございます」


ギルドマスターが笑う。


「聖剣が抜かれているという話を聞いてまさか、と思ったんですよ」


鎌をかけましたと説明されるベアトリスだが


「え?鎌なんてどこにあるんですか?」


斜め上の返事をしていた。

こいつ話が通じないと思われたのか知らないが強引に話を進めるサーシャ。


「という訳で勇者ベアトリス。何故その人がここにいるかは分かりませんが、本物かどうか見極めさせてもらうという意味も込めて許可しました」


では、ご武運を。

そう言ってギルドマスターは俺達を見送る。



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