6話 【追放した側視点】悪魔のよう
ザクロを追放した翌日。ヨシヤ達のパーティはギルドで今日も豪快に騒いでいた。
「ザクロが消えてスッキリしたなー。ふーすっきり」
ギャハハと笑うヨシヤ。
「だよねー。あんな薄汚いのさっさと追放しとけば良かったんだよー」
パールの言葉に続くセージ。
「お2人とも汚物の話題は辞めましょうよ。ご飯が不味くなってしまいます。食材に失礼ですよ」
「おっとそうだったな。わりぃわりぃ」
そうして食事に手を伸ばすヨシヤ。
手掴みで鳥を掴んだその時
「うぎゃっ!」
手を引っこめるヨシヤ。
「どうしました?」
その様子に声をかけるセージ。
「いや、その今、あれ?」
自分の腕を見つめるヨシヤ。
「今腕が一瞬動かなくなった気がしてな」
「気のせいでしょう。ヨシヤは最近疲れているようですからね」
「ははは。そうか。あの生ゴミくそざこ野郎の事で頭を悩ませていたからな」
ガハハと笑って鳥を食い始めるヨシヤ。
ザクロがいないせいで体の動きが鈍くなってきているのだが気付くわけもない。
そもそも自分たちが死体だとは露ほども思っていないからのだから。
「それで、ザクロの枠は決めてあるのですか?」
セージの問いかけに頷く
「あぁ。バッチリ決めてあるぜ。そろそろ来るはずなんだがな」
そう言うと扉が開く音が聞こえた。
そこに入ってきたのは金髪の髪を伸ばした女。
その女は真っ直ぐにヨシヤに近付くと口を開く。
「Sランク冒険者のグローザ。弓兵だ、よろしく」
短くそう簡潔に自己紹介するグローザ。
「よく来たな。ガハハ。どれどれ、俺の上に座れよ。正妻にしてやるぞ」
「ちょっとー。正妻は私でしょー?」
ヨシヤ達の下品な会話
「はぁ……」
溜息を吐いてその場に立ち続けるグローザ。
「とまぁせっかく来たんだ。新人の力試しも兼ねていっちょ行きますか」
立ち上がるヨシヤ。
そのまま彼らはクエストに出かけることになったのだ。
◇
「うっしゃ。夜戦だ!行くぞお前ら!」
ヨシヤの仕切りでクエストが始まる。
スパァン!
グローザの放った弓は討伐対象であるゴブリンの急所を射抜く。
彼女は自分のノルマが終わったのを確認してからヨシヤ達の動きを見守る。
「たしか、ネクロマンサーを追放した枠に勧誘されたんだったわよね?」
ネクロマンサー、よく言われてるように死体を操って戦う趣味の悪いジョブ。
だから殆どのパーティは仲間に入れるのを敬遠する。
よって適性がネクロマンサーだと分かれば冒険者を諦める者が殆どだ。
そういう事情で現状ネクロマンサーというジョブは事実上存在しないと言っても過言じゃない。
「何故そんなネクロマンサーがパーティに?」
更にはそんな人間がSランクパーティにいる?
そんなこと天地がひっくり返っても有り得ない。
それからこの人達なんでこんなに弱いんだろう?いくらふざけててもこんなに時間がかからないクエストなのに。
そもそも動きがSランクの冒険者の動きじゃない。無駄が多すぎる。
何でこれでSランクなの?せいぜい甘く見てDランク程度しかないのに。
前に見たことがあるけどその時はもっといい動きしてたはずなのに。
「ちっ……んだよ。さっきからハエがブンブン飛んでよー」
彼女が考えている中遠くからヨシヤの声が聞こえた。
「ハエ?」
確かに見てみるとヨシヤ達の周りだけ飛んでいたが自分には飛んでいない。
グローザの目は特別だった。
解読スキルと呼ばれ様々なもののステータスを読み取る力がその目にあるから。
「……何これ……なんで動いてるの?」
彼女の目にはとんでもない物が映る。
ドサッ……グローザは尻もちを着いた。
その場に立っていられなくなった。
ありえない。ありえない。何なのこれは。
まだウルフが空を飛んだという馬鹿みたいな話の方が信じられるレベル。
それほどその目に映ったのはありえないものだった。
「どういうこと?」
そんな彼女に気付いたのかパールが駆け寄ってきた。
「もううざいよー。さっきからハエが飛んでて。ちゃんと体綺麗にしてるのに」
その後もヨシヤが近寄ってくる。
「ちっ、やっとどっかいったかよクソハエうぜぇんだよ」
そう口にした二人を見てグローザは言葉が漏れた。
「この人達……死んでる……」
「あぁ?どの人達だよ」
聞いてくるヨシヤを指さすグローザ。
「あ、あなたたちよ……ハエが集まってるのはあなた達が死体だから」
「おいおい、冗談キツイぜ」
爆笑するヨシヤ。
「俺たちが死んでる?どこをどう見たらそう見えるんだよ。立って話して自分の意思がある。それの何処が死んでるんだよ?」
それよりさぁそう言って近寄ってくるヨシヤ。
「それともここで俺が人間なことを確認するかよ?」
そう言って服を脱ぎながら襲いかかってこようとするヨシヤから飛び退くグローザ。
突然の事に驚いてその際心臓の辺りに矢を刺してしまった。
「す、すまない。大丈夫か?」
グローザの問いかけに
「いてぇよぉ」
矢を抜いて答えるヨシヤ。
反応はそれだけだった。
それを見てセージが口を開く。
「よ、ヨシヤ?何故あなた立っていられるのですか?」
「何でって俺が頑丈だからだろうよガハハ」
「今刺された場所確実に死ぬくらいの急所ですよ?」
「あ?嘘だろ?」
グローザは傷口の奥に確かに見てしまった。
「し、心臓が止まってる……うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
彼女は武器を置いて逃げ出してしまう。
「ま、待てよ!グローザ!まだ話が!終わってねぇ!」
「く、来るな!化け物!気持ち悪い!」
「き、気持ち悪い?!俺がか?!」
その言葉で足を止めるヨシヤ。
その隙にグローザは逃げながら確信する。
「間違いない。あのパーティの真のリーダーはネクロマンサーだったんだ……初めにネクロマンサーがいて……死体でパーティを作ったんだ……」
そんな冒険者パーティ見たことも聞いたこともないけど。
ランクの高いネクロマンサーだと使い魔に魔力を注ぎ強化することもできると聞く。
あのパーティにいたネクロマンサーは本来Dランク程度の死体を最高クラスのSランクまで引き上げる規格外の化け物。
時期を考えるとそれしか答えがない。
「規格外過ぎる……あのパーティにいたネクロマンサーは化け物だ……人間が届く場所に居ない……人間に許された領域ではない」
だから
【悪魔】だ。
グローザはそう呟いた。
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